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さぁ、はじめようか
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「っと、その前に、ここを移動しよう」
「え?」
ディーノがポケットから取り出した骨董品のような品物を見て焦る。
「どうしたの?」
「ここは異空間でな、時間が普通には流れていないんだ」
「は?」
「もうすぐ、夜が来ちまう、その前に安全な場所と水を確保しないと」
「ちょっと!」
手を引かれ歩き出す。
暫く歩くとやっと足を止めた。
「ぜーぜー、ここでいいの?」
「ああ、ここなら近くに川があるし、乾いた小枝も沢山あるから火も炊ける…っておいっ大丈夫か?!」
リディアの身体がぐらっと傾くとその場へ倒れ込む。
焦ってリディアの頭を抱きかかえると、
グ―――ッ
と、情けないお腹の音か鳴り響いた。
「はははっっっ」
大笑いをするディーノをじと目で睨む。
「仕方ないでしょ?昼殆ど食べ損ねてから今まで逃げ回り歩き回りで今なんだから…はぁ…」
文句を言うもお腹が空き過ぎて眩暈がする。
「まぁ、ちょっと待て、火を焚いたら食い物だしてやるから」
「食べ物持っているの?!」
「ああ、だから少し待ってろ」
そういうとディーノが手際よく焚き火を作る。
「手際が良いわね」
「ああ、慣れているからな…と、間に合ったな」
「!」
さっきまで真昼間だった辺りが急に真っ暗になり驚く。
「言ったろ?時間が普通には流れてないって」
ディーノが笑って言う。
(本当に異空間なんだ‥ここ)
真っ暗になり星が浮かぶ夜空を見上げる。
「ほら、喰え」
そんなディーノが取り出した乾燥させた実。
「これは…」
「おや、知ってるのか?」
「ええ、前に一度…でもこれって…ウラヌでしか取れない希少稀な実では…」
「ほぉ、よく知ってるな」
ロレシオに貰ったあの実だと驚く。
希少稀な実がまたお目にかかるなんて、こんなこともあるんだなとその実をマジマジ見る。
「でもこれ食べたらお酒欲しくなりそう…」
「はっはっ、食べたことまであるのか、そりゃすげぇな」
「ええ、たまたま貰って一つだけ食べたことが」
「それなら、これはどうだ?」
「燻製肉?」
取り出した燻製にされた肉に首を傾げる。
「これもウラヌにしかいない獣の燻製肉だ、こっちの方が食べ応えもある」
「ホント?!」
「それにこれも」
袋から取り出された瓶。
「ウラヌで取れる果実で作った酒だ」
「!!!」
リディアの瞳が輝く。
「って…」
そこでハッと冷静に戻る。
「ウラヌって人が通れない険しい山よね?そんな貴重なモノ、商人だからとこんなに手に入る物なの?」
「ふふ、嬢ちゃんやっぱあんた感がいいな」
ディーノがニヤリと笑う。
「あの古代遺跡の扉を閉じた聖女様だから、特別に教えてやる」
「?」
不意に真顔になるディーノに首を傾げる。
「俺は、そのウラヌの幻の部族だ」
「?!」
脳裏に思い出すロレシオと盛り上がった部族いるいる談。
それが本当にいたとは…。
リディアが驚き眼を見開く。
「部族の事も知っているようだな?」
「少しだけ‥、神様が認めた者が住まう場所…だっけか?」
「まぁ、ある意味あっているな」
「?」
「ウラヌには本当に神様が居るんだ」
「へ?」
「共存している」
「は?!」
更に目を瞬かせる。
「共存って…」
「俺達部族はその神の加護を得ながら、神を守り共存している」
「‥‥」
「部族の場所は神の力で隠されているから、部族以外は近づけない」
「‥‥ちょっと待って…てことは、あなたが探している神様って…」
ディーノが頭を頷かせる。
「我らウラヌの神、カミル様だ」
(ウラヌの神?!)
突拍子もない話に少々付いていけない感はあるが、急に昼が夜になったのだ。
こんな異空間があるとすれば、神が居てもおかしくない世界なのかもしれないと思い直す。
「どうして…その神を探しているの?」
「あれは2年前…、カミル様が友達の神の所に遊びに行くと言ってウラヌの森を後にした」
うんうんと頷き聞く。
「いつもなら遊びに行っても長くても3~4か月すれば戻ってくるのに、1年経っても戻って来て下さらない、それで何かあったのではないかと捜索にあちこち巡り、ここに居るのではないかと情報が入りこの異空間に潜り込んだんだ」
「でも見つからないの?」
「ああ…、もうこの空間に入って2週間になる、探しに入ったもののあの魔物が現れて追われ続け探すどころでなくなったというのもあるけどな」
「なるほど…」
「だから」
ディーノが頭を下げる。
「お願いだ!協力してくれ!カミル様は初代聖女様と親交があったと話されていた!その話の中であの扉の事を聞いたんだ」
「!」
「聖女様はカミル様はじめ神の存在や妖精や違う存在を見たり察知することができると聞いている!あの扉を閉められたという事はまさに本物の聖女様かもしれない嬢ちゃんなら、この広い異世界空間でも見つける事ができるかもしれねぇ!だから頼む!」
真剣に頭を下げるディーノに苦笑いを零す。
「いや、だからもう交渉成立したよね?」
「! ありがとう、嬢ちゃん!」
「うわっっ」
ギュッと抱きしめられて焦るリディア。
グ―――ッッ
また情けない音が鳴り響く。
「おっといけねぇ、さぁ、喰え!この異空間でも食べ物の在りかは幾つか見つけてあるから何とかなる!だから遠慮せず食べてくれ」
「ありがとう」
やっと食事にありつけるとリディアは拝むように手を合わせる。
バッと広げた布の上に乗せられたウラヌの珍味に手を伸ばす。
「うぅぅ、美味しい…」
逃げまくり歩き回り、やっとありつけた食事がこれなら救われると涙がちょちょキレる。
「ははっ美味いだろ?ウラヌの山は宝の宝庫だからな」
「本当にウラヌが好きなのね」
「ああ、俺達の山だからな」
懐かしそうに遠くを見つめるディーノ。
きっと神様を捜し歩き長い間ウラヌにも帰っていないのだろう。
「カミル様は俺達の大事な守り神、生まれた時から一緒なんだ…優しくて呑気な神様でな、変な奴らに捕まっていなければいいんだが…」
「‥‥」
パクパクと希少稀な珍味を口にしながら、心配そうに俯くディーノを見る。
(ディーノにとっては家族のようなモノなのか…)
自分の家族を思い出し、ふるっと顔を横に振る。
「あ、そうだ!もし神様が見つけることが出来たらお礼にいつでも何かいるものがあれば俺を頼ってくれ」
「え?」
「我ら部族はウラヌ山脈を越えられる、実は知られざるルートがあるんだ」
「へぇ」
「秘密だぞ?だから、欲しいものがあれば他国でも何でも手に入れてやる、ウラヌに面しているテペヨ、ミクトラン、ナハル国のモノならあっという間に手に入る、他の国の物でも必要とあらば何でも入手してきてやるから、何かあればいつでも言ってくれ」
「ありがとう」
「もちろん、カミル様を見つけたらの話だ」
「うん、解ってる」
それから色んな話に花が咲き、楽しい夕餉を済ませると横になった。
少し酔った頭で満天の星空を見上げる。
それが前のジークヴァルトに連れていかれた夜の街の帰り道の星空と重なる。
(ここで見ているとあれが遠い昔のような気さえしてくるわね…)
あれからそれ程経っていないのに、異空間に居ると遠い過去の記憶のように思える。
(イザーク大丈夫かしら…)
穴に落ちる直前のリディアを置いて去っていく背を思い返す。
(ジークが上手くやってくれるといいけれど…)
今すぐにでも戻りたいところだが、どうあがいたって無理だ。
(とにもかくにも、神様を探さないとね…)
そうしないと帰れないのだ。
今は体力温存するために寝ようと、瞼を閉じた。
「え?」
ディーノがポケットから取り出した骨董品のような品物を見て焦る。
「どうしたの?」
「ここは異空間でな、時間が普通には流れていないんだ」
「は?」
「もうすぐ、夜が来ちまう、その前に安全な場所と水を確保しないと」
「ちょっと!」
手を引かれ歩き出す。
暫く歩くとやっと足を止めた。
「ぜーぜー、ここでいいの?」
「ああ、ここなら近くに川があるし、乾いた小枝も沢山あるから火も炊ける…っておいっ大丈夫か?!」
リディアの身体がぐらっと傾くとその場へ倒れ込む。
焦ってリディアの頭を抱きかかえると、
グ―――ッ
と、情けないお腹の音か鳴り響いた。
「はははっっっ」
大笑いをするディーノをじと目で睨む。
「仕方ないでしょ?昼殆ど食べ損ねてから今まで逃げ回り歩き回りで今なんだから…はぁ…」
文句を言うもお腹が空き過ぎて眩暈がする。
「まぁ、ちょっと待て、火を焚いたら食い物だしてやるから」
「食べ物持っているの?!」
「ああ、だから少し待ってろ」
そういうとディーノが手際よく焚き火を作る。
「手際が良いわね」
「ああ、慣れているからな…と、間に合ったな」
「!」
さっきまで真昼間だった辺りが急に真っ暗になり驚く。
「言ったろ?時間が普通には流れてないって」
ディーノが笑って言う。
(本当に異空間なんだ‥ここ)
真っ暗になり星が浮かぶ夜空を見上げる。
「ほら、喰え」
そんなディーノが取り出した乾燥させた実。
「これは…」
「おや、知ってるのか?」
「ええ、前に一度…でもこれって…ウラヌでしか取れない希少稀な実では…」
「ほぉ、よく知ってるな」
ロレシオに貰ったあの実だと驚く。
希少稀な実がまたお目にかかるなんて、こんなこともあるんだなとその実をマジマジ見る。
「でもこれ食べたらお酒欲しくなりそう…」
「はっはっ、食べたことまであるのか、そりゃすげぇな」
「ええ、たまたま貰って一つだけ食べたことが」
「それなら、これはどうだ?」
「燻製肉?」
取り出した燻製にされた肉に首を傾げる。
「これもウラヌにしかいない獣の燻製肉だ、こっちの方が食べ応えもある」
「ホント?!」
「それにこれも」
袋から取り出された瓶。
「ウラヌで取れる果実で作った酒だ」
「!!!」
リディアの瞳が輝く。
「って…」
そこでハッと冷静に戻る。
「ウラヌって人が通れない険しい山よね?そんな貴重なモノ、商人だからとこんなに手に入る物なの?」
「ふふ、嬢ちゃんやっぱあんた感がいいな」
ディーノがニヤリと笑う。
「あの古代遺跡の扉を閉じた聖女様だから、特別に教えてやる」
「?」
不意に真顔になるディーノに首を傾げる。
「俺は、そのウラヌの幻の部族だ」
「?!」
脳裏に思い出すロレシオと盛り上がった部族いるいる談。
それが本当にいたとは…。
リディアが驚き眼を見開く。
「部族の事も知っているようだな?」
「少しだけ‥、神様が認めた者が住まう場所…だっけか?」
「まぁ、ある意味あっているな」
「?」
「ウラヌには本当に神様が居るんだ」
「へ?」
「共存している」
「は?!」
更に目を瞬かせる。
「共存って…」
「俺達部族はその神の加護を得ながら、神を守り共存している」
「‥‥」
「部族の場所は神の力で隠されているから、部族以外は近づけない」
「‥‥ちょっと待って…てことは、あなたが探している神様って…」
ディーノが頭を頷かせる。
「我らウラヌの神、カミル様だ」
(ウラヌの神?!)
突拍子もない話に少々付いていけない感はあるが、急に昼が夜になったのだ。
こんな異空間があるとすれば、神が居てもおかしくない世界なのかもしれないと思い直す。
「どうして…その神を探しているの?」
「あれは2年前…、カミル様が友達の神の所に遊びに行くと言ってウラヌの森を後にした」
うんうんと頷き聞く。
「いつもなら遊びに行っても長くても3~4か月すれば戻ってくるのに、1年経っても戻って来て下さらない、それで何かあったのではないかと捜索にあちこち巡り、ここに居るのではないかと情報が入りこの異空間に潜り込んだんだ」
「でも見つからないの?」
「ああ…、もうこの空間に入って2週間になる、探しに入ったもののあの魔物が現れて追われ続け探すどころでなくなったというのもあるけどな」
「なるほど…」
「だから」
ディーノが頭を下げる。
「お願いだ!協力してくれ!カミル様は初代聖女様と親交があったと話されていた!その話の中であの扉の事を聞いたんだ」
「!」
「聖女様はカミル様はじめ神の存在や妖精や違う存在を見たり察知することができると聞いている!あの扉を閉められたという事はまさに本物の聖女様かもしれない嬢ちゃんなら、この広い異世界空間でも見つける事ができるかもしれねぇ!だから頼む!」
真剣に頭を下げるディーノに苦笑いを零す。
「いや、だからもう交渉成立したよね?」
「! ありがとう、嬢ちゃん!」
「うわっっ」
ギュッと抱きしめられて焦るリディア。
グ―――ッッ
また情けない音が鳴り響く。
「おっといけねぇ、さぁ、喰え!この異空間でも食べ物の在りかは幾つか見つけてあるから何とかなる!だから遠慮せず食べてくれ」
「ありがとう」
やっと食事にありつけるとリディアは拝むように手を合わせる。
バッと広げた布の上に乗せられたウラヌの珍味に手を伸ばす。
「うぅぅ、美味しい…」
逃げまくり歩き回り、やっとありつけた食事がこれなら救われると涙がちょちょキレる。
「ははっ美味いだろ?ウラヌの山は宝の宝庫だからな」
「本当にウラヌが好きなのね」
「ああ、俺達の山だからな」
懐かしそうに遠くを見つめるディーノ。
きっと神様を捜し歩き長い間ウラヌにも帰っていないのだろう。
「カミル様は俺達の大事な守り神、生まれた時から一緒なんだ…優しくて呑気な神様でな、変な奴らに捕まっていなければいいんだが…」
「‥‥」
パクパクと希少稀な珍味を口にしながら、心配そうに俯くディーノを見る。
(ディーノにとっては家族のようなモノなのか…)
自分の家族を思い出し、ふるっと顔を横に振る。
「あ、そうだ!もし神様が見つけることが出来たらお礼にいつでも何かいるものがあれば俺を頼ってくれ」
「え?」
「我ら部族はウラヌ山脈を越えられる、実は知られざるルートがあるんだ」
「へぇ」
「秘密だぞ?だから、欲しいものがあれば他国でも何でも手に入れてやる、ウラヌに面しているテペヨ、ミクトラン、ナハル国のモノならあっという間に手に入る、他の国の物でも必要とあらば何でも入手してきてやるから、何かあればいつでも言ってくれ」
「ありがとう」
「もちろん、カミル様を見つけたらの話だ」
「うん、解ってる」
それから色んな話に花が咲き、楽しい夕餉を済ませると横になった。
少し酔った頭で満天の星空を見上げる。
それが前のジークヴァルトに連れていかれた夜の街の帰り道の星空と重なる。
(ここで見ているとあれが遠い昔のような気さえしてくるわね…)
あれからそれ程経っていないのに、異空間に居ると遠い過去の記憶のように思える。
(イザーク大丈夫かしら…)
穴に落ちる直前のリディアを置いて去っていく背を思い返す。
(ジークが上手くやってくれるといいけれど…)
今すぐにでも戻りたいところだが、どうあがいたって無理だ。
(とにもかくにも、神様を探さないとね…)
そうしないと帰れないのだ。
今は体力温存するために寝ようと、瞼を閉じた。
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