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序章
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「ん‥‥」
何だかふかふかで心地いいなと思いながら目を開けると、知らない天井がそこにはあった。
何処だろうと体を捩ると、柔らかい感触にここはベットの上だと気づく。
柔らかいベットに清潔なシーツなんて久しぶりだなぁと思い10年ぶりの感触にシーツに触れる。
「起きられましたか?」
「!」
不意に背後で声を掛けられ焦って振り返る。
そこには漆黒の色のその前髪を垂らしお辞儀をする畏まった男性がいた。
「お初にお目にかかります、リディア様、これからあなたの専属執事として仕えることになりましたイザーク・ローズと申します、どうぞイザークとお呼びください」
そう言って頭を上げた男は紅い眼をし、美しく整い過ぎた端正な顔つきはさながら悪魔の容貌をしていた。
(おおおっぅt紅眼キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! ヤバい、美し過ぎるっっっ)
「これからは何なりと私にお申し付けください」
まっすぐに見つめてくる紅い瞳。
その紅い眼の美しさに眩暈を覚えつつも、リディアはマジマジとイザークを見る。
これだけの超イケメンだ。
攻略男子4号に違いないと思い、思い出そうとじっとイザークを見つめる。
(んー?見たことあるよーな?うーん)
何せこの乙女ゲーム後、既に違うゲームを何本もプレイしていたため、忘れている部分も多い。
しかもつまらなくて作業ゲームと化した奴だ。
必死に思いを巡らして、やっと脳裏に一つ浮かぶ。
(あ、そういや、魔族に似た容姿なため人々に嫌がられた奴いたっけ…確か凄い黒魔術の使い手で…)
紅い眼を見る。
(紅い眼と言えば、悪魔とか虐められるのが定番パターンよね、じゃ、間違いないかな)
あの乙女ゲームは内容がクソと言ったのは、読む前からこうなると全て予測が出来てしまう程によくあるお決まりパターンが多かった。
そう思うと多分あっているだろうと結論付ける。
「起きられますか?」
余りにもジッと見つめていたためか、微かに首を傾げ見られる。
慌てて頷くと、
「それでは、すぐにお茶の準備を致します」
既に傍らに準備していたティーセットのカップにコポコポと音を立て注がれていく。
部屋にお茶の心地良い香りが漂う。
「いい香り…」
「!」
思わず呟いた一言に手を止め驚いた表情でリディアを見る。
「?」
「申し訳ござません、もう少々お待ちください」
傾げ見たリディアからまた入れかけたカップに目線を戻す。
「どうぞ」
手渡されたカップを手に取り、まずはゆっくりと香りを楽しむ。
改めて本当にいい香だと思った。
(この感じ、10年ぶりね…)
両親が居た頃は、起きたらこうしてお茶を入れてくれる歳のいった執事がリディアにも居た。
懐かしいと感じながら、一口飲んでみる。
「美味しい…」
今まで飲んだお茶の中でも一番美味しいと感じた。
10年ぶりだからかもしれないが。
「!」
そんなリディアの一言に息を飲み瞠目するイザーク。
「どうかしました?」
「いえ…」
少し目線を下げたイザークは次に頭を上げた時には嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべていた。
「お代わりもあります、遠慮せず仰ってください」
「ありがとう」
お茶が体に染み込む。
久しぶりの柔らかいふかふかな清潔なベットに美味しい目覚めのお茶。
思わず身体が和む中、ハッと我に返る。
(いけない!ついうっかり久しぶりのこの感じに和んでしまったわ)
慌てて辺りをキョロキョロする。
見慣れない部屋。
それにもう一度イザークを見る。
(専属執事って言ったわよね?)
改めてまた部屋を見渡す。
(そう言えば、リオもいないわ)
あの姉さまべったりなリオの姿も見当たらない。
そこでやっと色々と思い出す。
(ジークの図書室で全ての本の知識を得ようとしたはず…)
そこからの記憶が一切ない。
「あの、ここは一体…」
リディアの聞きたい事を察してか、頭を軽く頷かせると、
「ここは城内の一角にある聖女試験に設けられた施設にございます…」
(え…?聖女…試験?)
「リディア様の首元にある徴にジークヴァルト様がお気づきになり、この試験に参加するようにと眠っている間にこちらにお運ばれになられたそうです」
ハッとして自分の首元を見る。
しっかりと首元が見えるネグリジェに着替えさせられていた。
(おぅふっ、NOぉぉぉおおおおおおおおっっぅっっ!!)
頭を抱え天井を仰ぎ見、心の中でムンクの絵画の様な表情で悲痛の叫び声を上げる。
「リディア様?」
(どうして?!なぜ?WHY??)
「確か、図書室で力を使って…そこからどうしたっけ…」
「ええ、魔力を使い切り倒れたと聞いております」
「へ?」
(魔力を使い切ったですとー―――?!)
衝撃の事実にガクッと肩を下とす。
(うかつでしたわ、まだ魔法初級の私はMPが少ないという事を見落としてしまってたわ)
「そのため魔力が戻るまで数日かかるという事で、安全でゆっくり寝る事の出来るこのお部屋へ移動したと聞いております」
「…私、何日眠っていたの?」
意気消沈のまま尋ねる。
「今日で5日になります」
「!」
5日間も寝ていた事に衝撃を受ける。
(OH!ノオオオぉおおおおおおお!!!)
更なる衝撃の事実に頭を抱えベットでゴロンゴロンと転がる。
そしてまたまたハッとする。
(待って待って待って…、これってもしかして‥‥もう―――‥)
――――――『逃げる』を使えない?
逃げるのにチート能力を使ったために、うっかり倒れて徴がバレてしまったお間抜けなリディアがここにいた。
これで選択肢「逃げる」が無くなった。
(いぃ――――やぁあああああ―――――!!!)
またもベットの上で悶絶するリディアがそこに居た。
何だかふかふかで心地いいなと思いながら目を開けると、知らない天井がそこにはあった。
何処だろうと体を捩ると、柔らかい感触にここはベットの上だと気づく。
柔らかいベットに清潔なシーツなんて久しぶりだなぁと思い10年ぶりの感触にシーツに触れる。
「起きられましたか?」
「!」
不意に背後で声を掛けられ焦って振り返る。
そこには漆黒の色のその前髪を垂らしお辞儀をする畏まった男性がいた。
「お初にお目にかかります、リディア様、これからあなたの専属執事として仕えることになりましたイザーク・ローズと申します、どうぞイザークとお呼びください」
そう言って頭を上げた男は紅い眼をし、美しく整い過ぎた端正な顔つきはさながら悪魔の容貌をしていた。
(おおおっぅt紅眼キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!! ヤバい、美し過ぎるっっっ)
「これからは何なりと私にお申し付けください」
まっすぐに見つめてくる紅い瞳。
その紅い眼の美しさに眩暈を覚えつつも、リディアはマジマジとイザークを見る。
これだけの超イケメンだ。
攻略男子4号に違いないと思い、思い出そうとじっとイザークを見つめる。
(んー?見たことあるよーな?うーん)
何せこの乙女ゲーム後、既に違うゲームを何本もプレイしていたため、忘れている部分も多い。
しかもつまらなくて作業ゲームと化した奴だ。
必死に思いを巡らして、やっと脳裏に一つ浮かぶ。
(あ、そういや、魔族に似た容姿なため人々に嫌がられた奴いたっけ…確か凄い黒魔術の使い手で…)
紅い眼を見る。
(紅い眼と言えば、悪魔とか虐められるのが定番パターンよね、じゃ、間違いないかな)
あの乙女ゲームは内容がクソと言ったのは、読む前からこうなると全て予測が出来てしまう程によくあるお決まりパターンが多かった。
そう思うと多分あっているだろうと結論付ける。
「起きられますか?」
余りにもジッと見つめていたためか、微かに首を傾げ見られる。
慌てて頷くと、
「それでは、すぐにお茶の準備を致します」
既に傍らに準備していたティーセットのカップにコポコポと音を立て注がれていく。
部屋にお茶の心地良い香りが漂う。
「いい香り…」
「!」
思わず呟いた一言に手を止め驚いた表情でリディアを見る。
「?」
「申し訳ござません、もう少々お待ちください」
傾げ見たリディアからまた入れかけたカップに目線を戻す。
「どうぞ」
手渡されたカップを手に取り、まずはゆっくりと香りを楽しむ。
改めて本当にいい香だと思った。
(この感じ、10年ぶりね…)
両親が居た頃は、起きたらこうしてお茶を入れてくれる歳のいった執事がリディアにも居た。
懐かしいと感じながら、一口飲んでみる。
「美味しい…」
今まで飲んだお茶の中でも一番美味しいと感じた。
10年ぶりだからかもしれないが。
「!」
そんなリディアの一言に息を飲み瞠目するイザーク。
「どうかしました?」
「いえ…」
少し目線を下げたイザークは次に頭を上げた時には嬉しそうな柔らかい笑みを浮かべていた。
「お代わりもあります、遠慮せず仰ってください」
「ありがとう」
お茶が体に染み込む。
久しぶりの柔らかいふかふかな清潔なベットに美味しい目覚めのお茶。
思わず身体が和む中、ハッと我に返る。
(いけない!ついうっかり久しぶりのこの感じに和んでしまったわ)
慌てて辺りをキョロキョロする。
見慣れない部屋。
それにもう一度イザークを見る。
(専属執事って言ったわよね?)
改めてまた部屋を見渡す。
(そう言えば、リオもいないわ)
あの姉さまべったりなリオの姿も見当たらない。
そこでやっと色々と思い出す。
(ジークの図書室で全ての本の知識を得ようとしたはず…)
そこからの記憶が一切ない。
「あの、ここは一体…」
リディアの聞きたい事を察してか、頭を軽く頷かせると、
「ここは城内の一角にある聖女試験に設けられた施設にございます…」
(え…?聖女…試験?)
「リディア様の首元にある徴にジークヴァルト様がお気づきになり、この試験に参加するようにと眠っている間にこちらにお運ばれになられたそうです」
ハッとして自分の首元を見る。
しっかりと首元が見えるネグリジェに着替えさせられていた。
(おぅふっ、NOぉぉぉおおおおおおおおっっぅっっ!!)
頭を抱え天井を仰ぎ見、心の中でムンクの絵画の様な表情で悲痛の叫び声を上げる。
「リディア様?」
(どうして?!なぜ?WHY??)
「確か、図書室で力を使って…そこからどうしたっけ…」
「ええ、魔力を使い切り倒れたと聞いております」
「へ?」
(魔力を使い切ったですとー―――?!)
衝撃の事実にガクッと肩を下とす。
(うかつでしたわ、まだ魔法初級の私はMPが少ないという事を見落としてしまってたわ)
「そのため魔力が戻るまで数日かかるという事で、安全でゆっくり寝る事の出来るこのお部屋へ移動したと聞いております」
「…私、何日眠っていたの?」
意気消沈のまま尋ねる。
「今日で5日になります」
「!」
5日間も寝ていた事に衝撃を受ける。
(OH!ノオオオぉおおおおおおお!!!)
更なる衝撃の事実に頭を抱えベットでゴロンゴロンと転がる。
そしてまたまたハッとする。
(待って待って待って…、これってもしかして‥‥もう―――‥)
――――――『逃げる』を使えない?
逃げるのにチート能力を使ったために、うっかり倒れて徴がバレてしまったお間抜けなリディアがここにいた。
これで選択肢「逃げる」が無くなった。
(いぃ――――やぁあああああ―――――!!!)
またもベットの上で悶絶するリディアがそこに居た。
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