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第11話 ABCって言うのがあってね
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工藤と彩花が去っていった。あいつら流石にもうどこも寄り道はしないだろう。
「「・・・」」
二人になってからも、あの警察官に見つからないようにじっとした。
数分経った後、俺達は周囲を見渡して、本当に誰もいないことを確認した。
「「ふぅ~~~~~~」」
極度の緊張状態から開放されて、大きく息をついた。ようやくちゃんと息が吸える。息してなかったわけではないんだけど、呼吸でバレないように息を殺していた。なんかここだけ聞くとスパイみたいだな。
「俺、絶対バレたって思った!」
「私も!もう絶対絶命だったよ!」
二人して興奮してしまった。
「ねぇ昇くん?あそこは逃げても良かったんだよ?私だけだったら、通りすがりみたいな感じでいけたかもしれないし」
それはない。あいつのキレ具合を見ると、それだけじゃ済まなかった可能性が高そうだったから、あの場面は、あんなにも緊張感があったんだと思う。俺は、あそこでさっちゃんが見つかったら、俺が出ていくしかないと思った。
「そっちこそ、俺があいつの注意を引いてるときに逃げれば良かったんじゃない?それに最初に言ってただろ?バレそうになったら逃げろって」
「むぅ~」
あの場面では、萎縮しちゃって逃げられないよね。
「まぁ、でもさっちゃんが無事で本当に良かった~」
「・・・昇くんの方もね」
「とりあえずお疲れ様~」
「もう~本当に疲れたよ・・・もうあんなことはコリゴリ。生きた心地がしなかったよ」
「そうだな。緊張で、汗がずっと止まらなかった」
額の汗を腕で拭った。
「俺達はスパイには向かないってことで」
「うん。足元に落ちてる空き缶にも気づかないくらいだし笑」
改めて足元を観察すると、結構空き缶が落ちていた。これじゃあ、俺が踏んでたかもしれないな。
「確かに・・・」
「ふふっ」
さっちゃんは、口に手を当てて笑っている。
「ははは」
俺とさっちゃんは笑いがこらえきれず、お互いの顔を見ながら笑いあった。
今のテンションなら何でも笑っちゃう自信がある。ひとしきり笑ったあと、改めてさっちゃんを家まで送ることにした。
「そういえば、さっきの工藤翔吾って知っているか?俺は全然聞いたことない名前だったけど」
「私は、その名前を聞いて思い出したんだけど、サッカー部のキャプテンの名前が工藤って言った気がするよ」
「サッカー部か。確かにサッカーやってるイケメンって感じだな」
「うん、学校で一番モテるってクラスの女子が話してるのを聞いたことあるよ」
「学校で一番?確かにモテそうではあったけど。けど最後のあれを見ちゃうと、あいつはやばいって感じたな」
「うん・・・あの豹変ぷりは怖いね」
「ちょっと、気になったんだけど、そんなにモテモテなら普通に彼女がいるんじゃないか?」
「う~~ん。どうなんだろう。モテモテと彼女がいるはイコールかな?」
「俺的にはイコールだったんだけどな。逆にあいつは1人の彼女じゃ満足できないみたいなタイプなのかな」
ギャルゲーとかでいうハーレムエンド?を目指してるのかな?
そんなゲームみたいな事を考えてる訳ないよな。
「まぁ、憶測で話しててもしかたないな。明日は休みだから、なにも考えないでゆっくりしたい~~」
「そうだね。今日はなんかぐっすり寝れる気がするよ」
そんなこんなで話をしていると、さっちゃんの家が見えてきた。
「送ってくれてありがとうね」
「いえいえ。こっちこそ、今日はごめんな。色々気遣いさせちゃったよな」
「ううん。大丈夫。昇くんがそこまでショック受けてなさそうで私は安心したよ」
「それは大丈夫そう」
ガチャン
音がしたほうを見てみると、さっちゃんママが家から出てきた。
「あらあら、さっちゃん、帰ってきてたのね!それに久しぶりの昇くんがいるじゃない。こんな遅くになるまで・・・二人で盛り上がってたのね!!君たちはまだ学生なんだからだめよ。さっちゃんもだめだからね」
この人は俺達が何してたと思ってるんだ・・・。
俺も久しぶりにさっちゃんママを見たが、子供を産んだとは思えないほど、若々しい。さっちゃんと姉妹と間違えられるって聞いたことがある。顔もさっちゃんに似て可愛い感じだ。
俺がさっちゃんママに可愛いっていうのも失礼だが。
「あのね。ABCって言うのがあってね。ちゃんと順番にね。いきなりはだめだからね」
それうちの親に聞いたことあるぞ。
言っておくけど、さっちゃんとはそういう関係じゃないぞ。
「お母さん、何の話をしてるの?昇くんとは色々話してただけだよ?」
「分かってるわ。さっちゃん。ヨシヨシ」
「もぉ~~」
ちょっと、関わると時間が掛かりそうだから、帰ろうかな。
「じゃあ、俺は帰りますね。さっちゃんもバイバイ~」
「え、もう帰っちゃうの。家に泊まっていっても良いのよ?こんなに遅いんだし。家に帰れるか心配だわ」
いや、そこまで遠くないですから!!しかももう高校生ですから!!
「心配ありがとうございます。ただ大丈夫ですよ」
「あんまり見ないうちに昇くんも立派な男性に成長したのね(うるうる)」
そんなに涙ぐむことですか!?
「ありがとうございます。それじゃあ、本当に大丈夫ですので、それでは」
「ちょっと・・・」
俺は、走って自分の家に帰ることにした。
後ろからさっちゃんママの声が聞こえた気がしたが、無視をしてひたすら走った。
久しぶりに走るのも良いな。明日は起きたら、ランニングでもしようかな。
====================
ここまで読んで頂きありがとうございます。
次話、明日の12時頃、更新します。
良かったら「お気に入り登録」「感想」を頂ければ、書くモチベーションが上がりますので、宜しくお願いします。
コメントも頂けると嬉しいです。できるだけ返信しようかと思ってます。
ただし、あまり強い言葉ですと、コメントを消すかもですのでご了承ください。
「「・・・」」
二人になってからも、あの警察官に見つからないようにじっとした。
数分経った後、俺達は周囲を見渡して、本当に誰もいないことを確認した。
「「ふぅ~~~~~~」」
極度の緊張状態から開放されて、大きく息をついた。ようやくちゃんと息が吸える。息してなかったわけではないんだけど、呼吸でバレないように息を殺していた。なんかここだけ聞くとスパイみたいだな。
「俺、絶対バレたって思った!」
「私も!もう絶対絶命だったよ!」
二人して興奮してしまった。
「ねぇ昇くん?あそこは逃げても良かったんだよ?私だけだったら、通りすがりみたいな感じでいけたかもしれないし」
それはない。あいつのキレ具合を見ると、それだけじゃ済まなかった可能性が高そうだったから、あの場面は、あんなにも緊張感があったんだと思う。俺は、あそこでさっちゃんが見つかったら、俺が出ていくしかないと思った。
「そっちこそ、俺があいつの注意を引いてるときに逃げれば良かったんじゃない?それに最初に言ってただろ?バレそうになったら逃げろって」
「むぅ~」
あの場面では、萎縮しちゃって逃げられないよね。
「まぁ、でもさっちゃんが無事で本当に良かった~」
「・・・昇くんの方もね」
「とりあえずお疲れ様~」
「もう~本当に疲れたよ・・・もうあんなことはコリゴリ。生きた心地がしなかったよ」
「そうだな。緊張で、汗がずっと止まらなかった」
額の汗を腕で拭った。
「俺達はスパイには向かないってことで」
「うん。足元に落ちてる空き缶にも気づかないくらいだし笑」
改めて足元を観察すると、結構空き缶が落ちていた。これじゃあ、俺が踏んでたかもしれないな。
「確かに・・・」
「ふふっ」
さっちゃんは、口に手を当てて笑っている。
「ははは」
俺とさっちゃんは笑いがこらえきれず、お互いの顔を見ながら笑いあった。
今のテンションなら何でも笑っちゃう自信がある。ひとしきり笑ったあと、改めてさっちゃんを家まで送ることにした。
「そういえば、さっきの工藤翔吾って知っているか?俺は全然聞いたことない名前だったけど」
「私は、その名前を聞いて思い出したんだけど、サッカー部のキャプテンの名前が工藤って言った気がするよ」
「サッカー部か。確かにサッカーやってるイケメンって感じだな」
「うん、学校で一番モテるってクラスの女子が話してるのを聞いたことあるよ」
「学校で一番?確かにモテそうではあったけど。けど最後のあれを見ちゃうと、あいつはやばいって感じたな」
「うん・・・あの豹変ぷりは怖いね」
「ちょっと、気になったんだけど、そんなにモテモテなら普通に彼女がいるんじゃないか?」
「う~~ん。どうなんだろう。モテモテと彼女がいるはイコールかな?」
「俺的にはイコールだったんだけどな。逆にあいつは1人の彼女じゃ満足できないみたいなタイプなのかな」
ギャルゲーとかでいうハーレムエンド?を目指してるのかな?
そんなゲームみたいな事を考えてる訳ないよな。
「まぁ、憶測で話しててもしかたないな。明日は休みだから、なにも考えないでゆっくりしたい~~」
「そうだね。今日はなんかぐっすり寝れる気がするよ」
そんなこんなで話をしていると、さっちゃんの家が見えてきた。
「送ってくれてありがとうね」
「いえいえ。こっちこそ、今日はごめんな。色々気遣いさせちゃったよな」
「ううん。大丈夫。昇くんがそこまでショック受けてなさそうで私は安心したよ」
「それは大丈夫そう」
ガチャン
音がしたほうを見てみると、さっちゃんママが家から出てきた。
「あらあら、さっちゃん、帰ってきてたのね!それに久しぶりの昇くんがいるじゃない。こんな遅くになるまで・・・二人で盛り上がってたのね!!君たちはまだ学生なんだからだめよ。さっちゃんもだめだからね」
この人は俺達が何してたと思ってるんだ・・・。
俺も久しぶりにさっちゃんママを見たが、子供を産んだとは思えないほど、若々しい。さっちゃんと姉妹と間違えられるって聞いたことがある。顔もさっちゃんに似て可愛い感じだ。
俺がさっちゃんママに可愛いっていうのも失礼だが。
「あのね。ABCって言うのがあってね。ちゃんと順番にね。いきなりはだめだからね」
それうちの親に聞いたことあるぞ。
言っておくけど、さっちゃんとはそういう関係じゃないぞ。
「お母さん、何の話をしてるの?昇くんとは色々話してただけだよ?」
「分かってるわ。さっちゃん。ヨシヨシ」
「もぉ~~」
ちょっと、関わると時間が掛かりそうだから、帰ろうかな。
「じゃあ、俺は帰りますね。さっちゃんもバイバイ~」
「え、もう帰っちゃうの。家に泊まっていっても良いのよ?こんなに遅いんだし。家に帰れるか心配だわ」
いや、そこまで遠くないですから!!しかももう高校生ですから!!
「心配ありがとうございます。ただ大丈夫ですよ」
「あんまり見ないうちに昇くんも立派な男性に成長したのね(うるうる)」
そんなに涙ぐむことですか!?
「ありがとうございます。それじゃあ、本当に大丈夫ですので、それでは」
「ちょっと・・・」
俺は、走って自分の家に帰ることにした。
後ろからさっちゃんママの声が聞こえた気がしたが、無視をしてひたすら走った。
久しぶりに走るのも良いな。明日は起きたら、ランニングでもしようかな。
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