69 / 77
イノセンシア国立学園高等部
デフォルト化
しおりを挟む
校門からイヴァンの馬車で植物園へ向かう途中、向かいの席に腰かけたイヴァンは何も話さなかった。時折、こちらをちらちらと窺うものの、言葉が出てこないのか口をつぐんだままだ。
「……何か?」
「いや……。君の行動力に少しばかり驚いていた」
「緊急事態ですから」
特別に私が行動的なのではない、と思う。この人の中で、『普通』の貴族令嬢とは、何もせずに座っている綺麗なお人形のようなものなのだろうか。
「それほどまでに急を要するとは、一体何があった?」
緊急と聞いて、騎士の瞳に熱が灯る。自分がやらねばとでも思ったのか。別に、誘ったのは行きがかり上なんだけどね。
「植物園に行って、……引導を渡してこないといけないので」
「引導、か。それは穏やかではないな」
誰に、と訊かれる前に話を続ける。
「先ほど、ホアキン様と廊下でお会いした時、私は何者かに尾行されていました。イヴァン様が捕縛なさった者達を調べれば分かるかもしれませんが、おそらく雇い主の名を言う前に命を奪われるでしょう」
「奪われる?あの者達を捕らえた我々が拷問するとでも?」
一瞬、黒い看守服に身を包んだイヴァン様が鞭を持って笑う姿が脳裏に浮かび、似合いすぎるコスプレ姿に唇の端が上がりそうになる。妄想している場合ではない。
「いいえ。彼らが金で雇われたならまだ救いはありますが、もしかしたら凶悪な魔法にかけられているのではないかと思うのです」
「魔法か……グランディア王国で研究が進んでいると聞いたことがあるが、我が国には神力がある。魔導士に癒してもらえばいいのではないか」
「人を操る魔法は、癒しだけでは解けないかと」
ゲームの中で、メラニアは自分がヒロインであるのをいいことに、『人たらし』の術、つまり『魅了』の魔法を知らず知らずのうちに使っているのだろう。そうでなければ複数の攻略対象キャラが一人の少女に絶対服従するなんてありえない。私が会ったメラニアは、自分がヒロインだと分かって行動している。つまり、意図的に魅了の魔法を使っていると考えられる。経済的な後ろ盾が十分ではない中で、私を襲うゴロツキを雇う余裕はないだろう。あの男たちは多少なりと『魅了』の魔法にかけられていると思っていい。魔法のチート能力があればこの世界は思うがままだ。ゲームでは重要な要素だった能力値を上げなくても、攻略対象を魔法で魅了すればいい。逆ハーレムエンドは可能だ。最初に足掛かりとして、クラウディオが選ばれたのだとしたら……。
「魔法が解けたとしても、強い魔力にさらされた者には様々な悪影響が出ると本で読みました。最悪、命を落とすこともあるとか」
「魔法について、随分と知識を身に着けているようだな」
また私を疑っているのか、この人。
「確かに、あの者達が真実を語った瞬間、息絶える可能性もある。何らかの暗示にかかっているとすれば、頑なに口を割らないことも考えられる。……魔法は、どこで学んだ?」
図書室に入り浸ってても読書以外にすることがないから、この世界のことを調べたのよ。もっと前からしっかり勉強しておけばよかったと思った。メラニアが何をしようとしているか、乙女ゲームの知識だけで太刀打ちしようとしたのが誤りだった。校内の噂や、廊下に張られた試験の成績を見ても、多分、ヒロインのメラニアには、学力も運動もこれといったチート能力は授けられていない気がする。ゲームの舞台となる学校へ入るために、何らかの方法で自分を周囲に認めさせるには、『魅了』するのが手っ取り早い。本で読んだところでは、魔法研究が盛んなグランディア王国では、『魅了』の魔法は光魔法の一つとされていて、『神力』として光魔法のみを使うこの国でも習得は可能らしい。どうやってマスターしたかは知らないけどね。
「学校の図書室の本です。敵を知らなければ、対策も立てられませんもの」
「ああ。その通りだ」
ん?
ほんの少し温かみを持った声に顔を上げれば、イヴァンは怜悧な美貌を崩し、破壊力抜群の微笑を浮かべていた。カルロータ様が見たらきゃあきゃあと喜びそうだ。
「……何ですか?」
「勤勉なところが実に好ましいと思っただけだ」
「好ま……コホン」
微妙な空気な流れたところで、馬車が植物園の前に着いた。
◆◆◆
人目を気にしている余裕はない。
あのぼんやりクラウディオが、メラニアの手駒にされる前に見つけ出さなければ。
私はスカートを持ち上げて植物園の順路を走った。すれ違うのは恋人同士らしき男女ばかり。何度かぶつかりそうになり、軽く文句を言われた。
自分が危ないって分かってるの?
何度も注意しろって言ったのに!
「――っ、あのボケ!」
苛立って呟いた言葉に、少し遅れて私を追いかけてきたイヴァンが驚いた。令嬢らしくないから驚くのも無理はない。だけど、こんな時に令嬢らしくしてなんかいられない。
少し奥へ進むと、蔦の絡まる木の向こうに人影が見えた。葉の間から透けて見えるのは、珍しいピンクゴールドの髪だ。
――いた!!
角を曲がってメラニアのいる場所へと回り込む。
「ちょっと!何やっ……」
何やってるのよ、と言おうとして、言葉がつかえた。
ベンチの上に寝そべったクラウディオは、自分を押し倒すようにしているメラニアの頬を撫で、うっとりと彼女を見つめている。
――遅かった!?
優しい指先をそっと掴んで、メラニアはフッと笑いかけた後、視線をクラウディオから私に移した。
「あら?」
二人の世界を作っていて気づかなかったとでもいうつもり?
「行きましょう、クラウディオ様。あのお二人にこのベンチを譲って差し上げないと」
はあ?
二人って、と思ってふと見れば、隣には涼しい顔のイヴァンが立っている。息の上がった私とは大違いだ。
「ああ。そうだな。行こうか、メラニア」
クラウディオは私に視線一つ寄越さずに、起き上がってメラニアのピンクの髪を撫でた。
「……!」
青い瞳は暗く、生命の輝きが感じられない。
「クラウディオに何をしたの?」
声が震えた。
訳が分からない。私、動揺してる?
「モブの……部外者のあなたが知らなくてもいいことよ。ねえ、クラウディオ様?」
そこでやっと、クラウディオは私を見た。
視線が合った瞬間、音を立てた心臓が凍り付いた気がした。
「……ああ。そのリボンの色は中等部生か。悪いが、俺達は急いでいるんだ。失礼する」
俺?
今、俺って言った?
私を見ても顔色一つ変えなかった。お前は誰だって顔だった。
ゲームの中のクラウディオそのままに、無表情で冷たい言葉を投げつけてきた。
「嘘……」
去って行く二人の背中を見つめ、私は少しも動くことができなかった。
◆◆◆
イヴァンは私を家まで送り届けてくれた。
……と思う。
もう、何が何やら分からないうちに、気づけば朝になっていた。
制服のまま寝てしまったらしい。どれだけショックだったんだ、私。
何やってるんだろう……。
メラニアにあっさりとクラウディオを奪われ、捨てられたみじめな婚約者として好奇の噂に耐え、どこかのじいさんの再婚相手になるのかしら。
「……そんなの嫌!」
嫌だ。
全力で回避してきたのに、何なの!?
あの馬鹿、クラウディオの奴が、不用意にメラニアに近づくから……!
私には冷たい視線を寄越したくせに、メラニアを見る瞳はとんでもなく優しかった。
許せない。許せない許せない許せない!
イライラして枕を殴りつけていると、侍女が様子を見に入ってきた。
「起きていらっしゃったのですね、お嬢様」
「おはよう。今起きたところよ。……あら、手紙?」
「はい。昨日届いておりましたが、お嬢様は早くにお休みになられたので」
渡しそびれた、と。
受け取った手紙は、何の飾りもない白い封筒だった。見慣れた文字と封蝋に目が行く。
「……クラウディオね」
「はい。お嬢様がお休みになられた後、モンタネール公爵様が旦那様を訪ねておいでになり、何かご相談されていたようです。それで、お嬢様が起きていらっしゃるようなら、書斎へお連れするようにと。お話があるそうです」
家族が集まる居間が大好きなお父様が、わざわざ書斎に呼び出すなんて、一体何だろう。
……何となく脳裏をかすめる予感に頭を振り、私は廊下へ出た。
「……何か?」
「いや……。君の行動力に少しばかり驚いていた」
「緊急事態ですから」
特別に私が行動的なのではない、と思う。この人の中で、『普通』の貴族令嬢とは、何もせずに座っている綺麗なお人形のようなものなのだろうか。
「それほどまでに急を要するとは、一体何があった?」
緊急と聞いて、騎士の瞳に熱が灯る。自分がやらねばとでも思ったのか。別に、誘ったのは行きがかり上なんだけどね。
「植物園に行って、……引導を渡してこないといけないので」
「引導、か。それは穏やかではないな」
誰に、と訊かれる前に話を続ける。
「先ほど、ホアキン様と廊下でお会いした時、私は何者かに尾行されていました。イヴァン様が捕縛なさった者達を調べれば分かるかもしれませんが、おそらく雇い主の名を言う前に命を奪われるでしょう」
「奪われる?あの者達を捕らえた我々が拷問するとでも?」
一瞬、黒い看守服に身を包んだイヴァン様が鞭を持って笑う姿が脳裏に浮かび、似合いすぎるコスプレ姿に唇の端が上がりそうになる。妄想している場合ではない。
「いいえ。彼らが金で雇われたならまだ救いはありますが、もしかしたら凶悪な魔法にかけられているのではないかと思うのです」
「魔法か……グランディア王国で研究が進んでいると聞いたことがあるが、我が国には神力がある。魔導士に癒してもらえばいいのではないか」
「人を操る魔法は、癒しだけでは解けないかと」
ゲームの中で、メラニアは自分がヒロインであるのをいいことに、『人たらし』の術、つまり『魅了』の魔法を知らず知らずのうちに使っているのだろう。そうでなければ複数の攻略対象キャラが一人の少女に絶対服従するなんてありえない。私が会ったメラニアは、自分がヒロインだと分かって行動している。つまり、意図的に魅了の魔法を使っていると考えられる。経済的な後ろ盾が十分ではない中で、私を襲うゴロツキを雇う余裕はないだろう。あの男たちは多少なりと『魅了』の魔法にかけられていると思っていい。魔法のチート能力があればこの世界は思うがままだ。ゲームでは重要な要素だった能力値を上げなくても、攻略対象を魔法で魅了すればいい。逆ハーレムエンドは可能だ。最初に足掛かりとして、クラウディオが選ばれたのだとしたら……。
「魔法が解けたとしても、強い魔力にさらされた者には様々な悪影響が出ると本で読みました。最悪、命を落とすこともあるとか」
「魔法について、随分と知識を身に着けているようだな」
また私を疑っているのか、この人。
「確かに、あの者達が真実を語った瞬間、息絶える可能性もある。何らかの暗示にかかっているとすれば、頑なに口を割らないことも考えられる。……魔法は、どこで学んだ?」
図書室に入り浸ってても読書以外にすることがないから、この世界のことを調べたのよ。もっと前からしっかり勉強しておけばよかったと思った。メラニアが何をしようとしているか、乙女ゲームの知識だけで太刀打ちしようとしたのが誤りだった。校内の噂や、廊下に張られた試験の成績を見ても、多分、ヒロインのメラニアには、学力も運動もこれといったチート能力は授けられていない気がする。ゲームの舞台となる学校へ入るために、何らかの方法で自分を周囲に認めさせるには、『魅了』するのが手っ取り早い。本で読んだところでは、魔法研究が盛んなグランディア王国では、『魅了』の魔法は光魔法の一つとされていて、『神力』として光魔法のみを使うこの国でも習得は可能らしい。どうやってマスターしたかは知らないけどね。
「学校の図書室の本です。敵を知らなければ、対策も立てられませんもの」
「ああ。その通りだ」
ん?
ほんの少し温かみを持った声に顔を上げれば、イヴァンは怜悧な美貌を崩し、破壊力抜群の微笑を浮かべていた。カルロータ様が見たらきゃあきゃあと喜びそうだ。
「……何ですか?」
「勤勉なところが実に好ましいと思っただけだ」
「好ま……コホン」
微妙な空気な流れたところで、馬車が植物園の前に着いた。
◆◆◆
人目を気にしている余裕はない。
あのぼんやりクラウディオが、メラニアの手駒にされる前に見つけ出さなければ。
私はスカートを持ち上げて植物園の順路を走った。すれ違うのは恋人同士らしき男女ばかり。何度かぶつかりそうになり、軽く文句を言われた。
自分が危ないって分かってるの?
何度も注意しろって言ったのに!
「――っ、あのボケ!」
苛立って呟いた言葉に、少し遅れて私を追いかけてきたイヴァンが驚いた。令嬢らしくないから驚くのも無理はない。だけど、こんな時に令嬢らしくしてなんかいられない。
少し奥へ進むと、蔦の絡まる木の向こうに人影が見えた。葉の間から透けて見えるのは、珍しいピンクゴールドの髪だ。
――いた!!
角を曲がってメラニアのいる場所へと回り込む。
「ちょっと!何やっ……」
何やってるのよ、と言おうとして、言葉がつかえた。
ベンチの上に寝そべったクラウディオは、自分を押し倒すようにしているメラニアの頬を撫で、うっとりと彼女を見つめている。
――遅かった!?
優しい指先をそっと掴んで、メラニアはフッと笑いかけた後、視線をクラウディオから私に移した。
「あら?」
二人の世界を作っていて気づかなかったとでもいうつもり?
「行きましょう、クラウディオ様。あのお二人にこのベンチを譲って差し上げないと」
はあ?
二人って、と思ってふと見れば、隣には涼しい顔のイヴァンが立っている。息の上がった私とは大違いだ。
「ああ。そうだな。行こうか、メラニア」
クラウディオは私に視線一つ寄越さずに、起き上がってメラニアのピンクの髪を撫でた。
「……!」
青い瞳は暗く、生命の輝きが感じられない。
「クラウディオに何をしたの?」
声が震えた。
訳が分からない。私、動揺してる?
「モブの……部外者のあなたが知らなくてもいいことよ。ねえ、クラウディオ様?」
そこでやっと、クラウディオは私を見た。
視線が合った瞬間、音を立てた心臓が凍り付いた気がした。
「……ああ。そのリボンの色は中等部生か。悪いが、俺達は急いでいるんだ。失礼する」
俺?
今、俺って言った?
私を見ても顔色一つ変えなかった。お前は誰だって顔だった。
ゲームの中のクラウディオそのままに、無表情で冷たい言葉を投げつけてきた。
「嘘……」
去って行く二人の背中を見つめ、私は少しも動くことができなかった。
◆◆◆
イヴァンは私を家まで送り届けてくれた。
……と思う。
もう、何が何やら分からないうちに、気づけば朝になっていた。
制服のまま寝てしまったらしい。どれだけショックだったんだ、私。
何やってるんだろう……。
メラニアにあっさりとクラウディオを奪われ、捨てられたみじめな婚約者として好奇の噂に耐え、どこかのじいさんの再婚相手になるのかしら。
「……そんなの嫌!」
嫌だ。
全力で回避してきたのに、何なの!?
あの馬鹿、クラウディオの奴が、不用意にメラニアに近づくから……!
私には冷たい視線を寄越したくせに、メラニアを見る瞳はとんでもなく優しかった。
許せない。許せない許せない許せない!
イライラして枕を殴りつけていると、侍女が様子を見に入ってきた。
「起きていらっしゃったのですね、お嬢様」
「おはよう。今起きたところよ。……あら、手紙?」
「はい。昨日届いておりましたが、お嬢様は早くにお休みになられたので」
渡しそびれた、と。
受け取った手紙は、何の飾りもない白い封筒だった。見慣れた文字と封蝋に目が行く。
「……クラウディオね」
「はい。お嬢様がお休みになられた後、モンタネール公爵様が旦那様を訪ねておいでになり、何かご相談されていたようです。それで、お嬢様が起きていらっしゃるようなら、書斎へお連れするようにと。お話があるそうです」
家族が集まる居間が大好きなお父様が、わざわざ書斎に呼び出すなんて、一体何だろう。
……何となく脳裏をかすめる予感に頭を振り、私は廊下へ出た。
0
お気に入りに追加
835
あなたにおすすめの小説
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜
なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」
静寂をかき消す、衛兵の報告。
瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。
コリウス王国の国王––レオン・コリウス。
彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。
「構わん」……と。
周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。
これは……彼が望んだ結末であるからだ。
しかし彼は知らない。
この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。
王妃セレリナ。
彼女に消えて欲しかったのは……
いったい誰か?
◇◇◇
序盤はシリアスです。
楽しんでいただけるとうれしいです。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
侯爵令嬢の置き土産
ひろたひかる
恋愛
侯爵令嬢マリエは婚約者であるドナルドから婚約を解消すると告げられた。マリエは動揺しつつも了承し、「私は忘れません」と言い置いて去っていった。***婚約破棄ネタですが、悪役令嬢とか転生、乙女ゲーとかの要素は皆無です。***今のところ本編を一話、別視点で一話の二話の投稿を予定しています。さくっと終わります。
「小説家になろう」でも同一の内容で投稿しております。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる