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学院編 14
480 悪役令嬢は知らずに喧嘩を売る
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寝ぼけたクリスの転移魔法は、着地点が適当だった。
「え?」
「な!?危な……」
三人は空中に放り出された。
ボスン。
真下にはビルクール領主館の客用寝室のベッドがあった。落ちる瞬間にジュリアとクリスを庇おうとしたアレックスだったが、クリスは子供の姿に戻って自力で空中浮遊しており、ジュリアに抱きついただけで終わった。その上、下になって落ちたのはジュリアだった。
「……痛っ……」
「うわ、大丈夫か!?……庇おうと思ったんだけど、うまくできなくて……悪かった」
背中に回された腕で、頭を打つのは免れたが、アレックスの体重をまともに受けた形になり、鍛えているジュリアでもつらいものはあった。
「本当にゴメンな。ジュリアのこと、潰すつもりはなかったんだ」
「……うん、分かってる。……分かってるから、その……」
――顔が近いのよ!!!
ジュリアは平静を装ったが、この状況を誰かに見られたら釈明できない。転移魔法で落ちてきたという事実を知らなければ、アレックスがジュリアを押し倒し、顔の傍で囁いている図にしか見えない。クリスは熟睡したまま、天井の近くに浮かんでいる。
「どこか痛いところはないか?」
真剣な瞳にはジュリアを思いやる気持ちが表れていて、色っぽさは欠片もないのに、何故か鼓動が速くなる。抱きしめていた腕を解き、ジュリアの後頭部を撫でる。結い上げていない銀髪がアレックスの指の間を通り、大きな掌が首から頬へと辿っていくと、ジュリアはくすぐったさに目を細めた。
「う、うん……痛くないよ?」
痛いところはないかと聞かれれば、全然痛くないわけではないけれど、そう言っておかないとアレックスが納得してくれないだろう。
「よかった……」
安堵の吐息が耳をくすぐる。ジュリアの好きな優しい声だ。身体に感じる温もりと重みに、何となくこのままでもいいような気さえしてくる。
――ダメだ。流されちゃダメ!
「あの……さ」
「うん?」
「痛くないよ。落ちたところがベッドだから」
「そうか。よかった。落ちたところがベッドで良か……ぅあ!」
ガバッ!
アレックスは一瞬で起き上がり、ベッドの上から転げ落ちた。落ちた衝撃をものともせず、腹筋を使って即座に身体を起こしてその場に座ると、
「お、俺、何やってんだ……」
と頭を抱えて項垂れた。
「か、仮にも……ジュリアは、結婚前の令嬢なんだ。こんなとこ、誰かに見られたら……」
彼の言葉にはっとして、ジュリアは部屋の入口に目を向けた。
「……あ」
老人ばかりの領主館の使用人が四人も立っているではないか。ジュリアはそのうち、暖炉の火かき棒を持った従僕と目が合った。
「……お、お嬢様……その男は?」
「侯爵家のお嬢様の寝室に忍び込むとは、何て大胆な!即刻退治して差し上げます!」
腰の曲がった侍女がモップを振り上げた。
「待って!違うから!アレックスは婚約者だ……よね?それと、クリスがいるところで変なことしてないからね!」
ベッドから下りて、アレックスと使用人の間に腕を広げて立ちはだかる。
「クリス様?」
「クリス様はどこに?」
ジュリアが天井を指すと、使用人達は『あっちむいてホイ』のように顔を向け、
「……!!」
一様に口をぽかんと開けたのだった。
◆◆◆
「お前、案外無鉄砲なんだな」
ルーファスが溜息をついた。
「そう。褒め言葉と受け取っておくわ」
二人が飛び込んだ魔法陣は、確かにアスタシフォンの王都に繋がっていた。問題は、その設置場所にあった。
「参ったな……」
敵の邸の中ではなく、もちろん王宮の中でもない。外からは賑やかな音楽と、人々の話し声が聞こえる。
「私と、どうやってここを出るつもり?」
「今考えてんだろ!」
「ここ、若い女が出て行くには難しい場所でしょ。……グランディアでは行ったことないけど」
室内は赤を基調とした派手な装飾がされている。部屋の中央には大きなベッドがあり、シーツの上に天井のシャンデリアが細かい光を散らしている。光の粒も色とりどりだ。
「……隣から、……声がするから。娼館よね?」
流石のエミリーでも、表情を変えずにはいられなかった。魔法騎士達は、歓楽街の娼館――男がぞろぞろと入って行っても怪しまれない場所に転移魔法陣を描いていた。一室を借り上げているのか、音楽に紛れて両隣の部屋からは悩ましい声がしている。
「俺だって、来たのは初めてだ。こういう店には裏口がないのか?」
「あると思う」
「そこから出ようぜ」
「見張りがいるわよ。面倒だから、正面突破する?」
「俺はそのままでも出られるんだから、お前が変装すればいいよな」
「そうね。魔法で……」
二人が相談を始めて間もなく、隣の部屋から女の悲鳴が聞こえた。
「!?」
「尋常じゃねえ声だ」
何度もやめてと言っているのが聞こえ、エミリーはいてもたってもいられず、部屋を飛び出して隣の部屋のドアを開けようとした。ドアには鍵がかかっている。
「……っ!」
――鍵が、土魔法で変えられている?
無効化の闇魔法を使っても開かない。手に魔力を集め、火魔法と風魔法の魔法球を発生させた。
「エミリー!?」
「はっ!」
ドオン!
ドアの鍵を中心に小規模な爆発が起き、風圧で開いた。
「おい!何して……」
「助けるに決まってるでしょ!」
室内に飛び込んだエミリーは、痣と傷でボロボロになっている若い娼婦に駆け寄った。
「……あ、ああ……」
「……ここを出る。行く」
苦手なアスタシフォン語でもいくつか分かる単語がある。彼女に肩を貸して立ち上がろうとした時、正面から男の怒鳴り声がした。
「おい、お前。この部屋が俺の貸切だって知っていて入ってきたのか?」
「……?」
視線を向ければ、そこには尊大な態度の若い男が立っていた。身に付けている宝石と、脱ぎ散らかした服を見れば、外国人のエミリーにも裕福な家の者だと分かる。ただ、アスタシフォンの貴族の顔は分からない。ついでに、言っていることも断片的にしか分からない。
「反抗的な眼だな。嫌いじゃねえ。……そいつの代わりに、お前が相手してくれるのか?」
「はっ?」
言葉が分からず、とりあえず無視すると決め、エミリーは娼婦を立たせて歩き出した。
「おい!お前!俺を無視したな!」
――はあ。何言ってんのか知らないけど、面倒くさい。
振り返って指を上げ、喚き立てる男から魔法で声を奪い、捕縛魔法で身体の自由を奪う。
「まずいぞ、エミリー」
娼婦を仲間に引き渡すと、物陰から様子を窺っていたルーファスがエミリーの手を引いて隠れさせた。
「何が?」
「あいつだよ。さっきの男。デュドネだよ」
「……誰?」
「妾のシャンタルが産んだ第二王子」
「げ。あんなのが王子?王子が娼館通いって……」
グランディアでは聞いたことがない。もっとも、マリナ一筋のセドリックが、娼館に通うなど想像できないが。
「王宮にいれば、侍女をああいう目に遭わせるから、周りは見て見ぬふりしてるんだよ」
「……最悪。檻に入れておけばいいのに」
「あんなのでも陛下の御子だからな。……とにかく、ここにいたら逆上したあいつに殺される。爆発で一階も混乱しているみたいだ。この隙に逃げるぞ!」
言い終わらないうちに、ルーファスはエミリーを引っ張って走り出した。また走るのかとエミリーはうんざりながら、ローブのフードで顔を隠した。
「え?」
「な!?危な……」
三人は空中に放り出された。
ボスン。
真下にはビルクール領主館の客用寝室のベッドがあった。落ちる瞬間にジュリアとクリスを庇おうとしたアレックスだったが、クリスは子供の姿に戻って自力で空中浮遊しており、ジュリアに抱きついただけで終わった。その上、下になって落ちたのはジュリアだった。
「……痛っ……」
「うわ、大丈夫か!?……庇おうと思ったんだけど、うまくできなくて……悪かった」
背中に回された腕で、頭を打つのは免れたが、アレックスの体重をまともに受けた形になり、鍛えているジュリアでもつらいものはあった。
「本当にゴメンな。ジュリアのこと、潰すつもりはなかったんだ」
「……うん、分かってる。……分かってるから、その……」
――顔が近いのよ!!!
ジュリアは平静を装ったが、この状況を誰かに見られたら釈明できない。転移魔法で落ちてきたという事実を知らなければ、アレックスがジュリアを押し倒し、顔の傍で囁いている図にしか見えない。クリスは熟睡したまま、天井の近くに浮かんでいる。
「どこか痛いところはないか?」
真剣な瞳にはジュリアを思いやる気持ちが表れていて、色っぽさは欠片もないのに、何故か鼓動が速くなる。抱きしめていた腕を解き、ジュリアの後頭部を撫でる。結い上げていない銀髪がアレックスの指の間を通り、大きな掌が首から頬へと辿っていくと、ジュリアはくすぐったさに目を細めた。
「う、うん……痛くないよ?」
痛いところはないかと聞かれれば、全然痛くないわけではないけれど、そう言っておかないとアレックスが納得してくれないだろう。
「よかった……」
安堵の吐息が耳をくすぐる。ジュリアの好きな優しい声だ。身体に感じる温もりと重みに、何となくこのままでもいいような気さえしてくる。
――ダメだ。流されちゃダメ!
「あの……さ」
「うん?」
「痛くないよ。落ちたところがベッドだから」
「そうか。よかった。落ちたところがベッドで良か……ぅあ!」
ガバッ!
アレックスは一瞬で起き上がり、ベッドの上から転げ落ちた。落ちた衝撃をものともせず、腹筋を使って即座に身体を起こしてその場に座ると、
「お、俺、何やってんだ……」
と頭を抱えて項垂れた。
「か、仮にも……ジュリアは、結婚前の令嬢なんだ。こんなとこ、誰かに見られたら……」
彼の言葉にはっとして、ジュリアは部屋の入口に目を向けた。
「……あ」
老人ばかりの領主館の使用人が四人も立っているではないか。ジュリアはそのうち、暖炉の火かき棒を持った従僕と目が合った。
「……お、お嬢様……その男は?」
「侯爵家のお嬢様の寝室に忍び込むとは、何て大胆な!即刻退治して差し上げます!」
腰の曲がった侍女がモップを振り上げた。
「待って!違うから!アレックスは婚約者だ……よね?それと、クリスがいるところで変なことしてないからね!」
ベッドから下りて、アレックスと使用人の間に腕を広げて立ちはだかる。
「クリス様?」
「クリス様はどこに?」
ジュリアが天井を指すと、使用人達は『あっちむいてホイ』のように顔を向け、
「……!!」
一様に口をぽかんと開けたのだった。
◆◆◆
「お前、案外無鉄砲なんだな」
ルーファスが溜息をついた。
「そう。褒め言葉と受け取っておくわ」
二人が飛び込んだ魔法陣は、確かにアスタシフォンの王都に繋がっていた。問題は、その設置場所にあった。
「参ったな……」
敵の邸の中ではなく、もちろん王宮の中でもない。外からは賑やかな音楽と、人々の話し声が聞こえる。
「私と、どうやってここを出るつもり?」
「今考えてんだろ!」
「ここ、若い女が出て行くには難しい場所でしょ。……グランディアでは行ったことないけど」
室内は赤を基調とした派手な装飾がされている。部屋の中央には大きなベッドがあり、シーツの上に天井のシャンデリアが細かい光を散らしている。光の粒も色とりどりだ。
「……隣から、……声がするから。娼館よね?」
流石のエミリーでも、表情を変えずにはいられなかった。魔法騎士達は、歓楽街の娼館――男がぞろぞろと入って行っても怪しまれない場所に転移魔法陣を描いていた。一室を借り上げているのか、音楽に紛れて両隣の部屋からは悩ましい声がしている。
「俺だって、来たのは初めてだ。こういう店には裏口がないのか?」
「あると思う」
「そこから出ようぜ」
「見張りがいるわよ。面倒だから、正面突破する?」
「俺はそのままでも出られるんだから、お前が変装すればいいよな」
「そうね。魔法で……」
二人が相談を始めて間もなく、隣の部屋から女の悲鳴が聞こえた。
「!?」
「尋常じゃねえ声だ」
何度もやめてと言っているのが聞こえ、エミリーはいてもたってもいられず、部屋を飛び出して隣の部屋のドアを開けようとした。ドアには鍵がかかっている。
「……っ!」
――鍵が、土魔法で変えられている?
無効化の闇魔法を使っても開かない。手に魔力を集め、火魔法と風魔法の魔法球を発生させた。
「エミリー!?」
「はっ!」
ドオン!
ドアの鍵を中心に小規模な爆発が起き、風圧で開いた。
「おい!何して……」
「助けるに決まってるでしょ!」
室内に飛び込んだエミリーは、痣と傷でボロボロになっている若い娼婦に駆け寄った。
「……あ、ああ……」
「……ここを出る。行く」
苦手なアスタシフォン語でもいくつか分かる単語がある。彼女に肩を貸して立ち上がろうとした時、正面から男の怒鳴り声がした。
「おい、お前。この部屋が俺の貸切だって知っていて入ってきたのか?」
「……?」
視線を向ければ、そこには尊大な態度の若い男が立っていた。身に付けている宝石と、脱ぎ散らかした服を見れば、外国人のエミリーにも裕福な家の者だと分かる。ただ、アスタシフォンの貴族の顔は分からない。ついでに、言っていることも断片的にしか分からない。
「反抗的な眼だな。嫌いじゃねえ。……そいつの代わりに、お前が相手してくれるのか?」
「はっ?」
言葉が分からず、とりあえず無視すると決め、エミリーは娼婦を立たせて歩き出した。
「おい!お前!俺を無視したな!」
――はあ。何言ってんのか知らないけど、面倒くさい。
振り返って指を上げ、喚き立てる男から魔法で声を奪い、捕縛魔法で身体の自由を奪う。
「まずいぞ、エミリー」
娼婦を仲間に引き渡すと、物陰から様子を窺っていたルーファスがエミリーの手を引いて隠れさせた。
「何が?」
「あいつだよ。さっきの男。デュドネだよ」
「……誰?」
「妾のシャンタルが産んだ第二王子」
「げ。あんなのが王子?王子が娼館通いって……」
グランディアでは聞いたことがない。もっとも、マリナ一筋のセドリックが、娼館に通うなど想像できないが。
「王宮にいれば、侍女をああいう目に遭わせるから、周りは見て見ぬふりしてるんだよ」
「……最悪。檻に入れておけばいいのに」
「あんなのでも陛下の御子だからな。……とにかく、ここにいたら逆上したあいつに殺される。爆発で一階も混乱しているみたいだ。この隙に逃げるぞ!」
言い終わらないうちに、ルーファスはエミリーを引っ張って走り出した。また走るのかとエミリーはうんざりながら、ローブのフードで顔を隠した。
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