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第五章 桜とさくらの根深汁
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アタシはそれを感じ取った。だから涙は流れなかった。
代わりに笑顔で、新八を立たせる。
「新八さん、食事はこれで終わりですが、実はもうひとつ余興があるんですよ」
アタシは舟着場を指差した。
「あそこ、見えます?」
「……舟着場ですね」
「左の方、猪牙舟があるでしょう? あそこに居るのは、うちの船頭である六郎次郎と彦一郎です」
「ああ、そりゃ船宿なんですから船頭はいますよね」
「今日は特別に、花筏を舟で追う遊び『春送り』をやりますよ」
「えっ、さくらは舟遊びは提供しないんじゃ……」
他の客から不公平を訴える声は上がらなかった。むしろ、
「楽しんでこい! 江戸で最後の桜だぞ」
三郎がそう勧め、他の男達も頷いた。
「あっ、もちろん金吾さんも……!」
アタシの誘いを、金吾さんは断った。
「私はいいです。おユキさんと話したいし」
そう言われ、皆に見送られるようにアタシと新八は舟着場に向かった。そこでは六さんと彦さんが堂々と立っていた。
六さんが名乗る。
「手前、船宿さくらの第一船頭、六郎次郎と申します。この度は、ご利用誠に感謝申し上げます」
六さんが新八を自分の舟に乗せた。
代わりに笑顔で、新八を立たせる。
「新八さん、食事はこれで終わりですが、実はもうひとつ余興があるんですよ」
アタシは舟着場を指差した。
「あそこ、見えます?」
「……舟着場ですね」
「左の方、猪牙舟があるでしょう? あそこに居るのは、うちの船頭である六郎次郎と彦一郎です」
「ああ、そりゃ船宿なんですから船頭はいますよね」
「今日は特別に、花筏を舟で追う遊び『春送り』をやりますよ」
「えっ、さくらは舟遊びは提供しないんじゃ……」
他の客から不公平を訴える声は上がらなかった。むしろ、
「楽しんでこい! 江戸で最後の桜だぞ」
三郎がそう勧め、他の男達も頷いた。
「あっ、もちろん金吾さんも……!」
アタシの誘いを、金吾さんは断った。
「私はいいです。おユキさんと話したいし」
そう言われ、皆に見送られるようにアタシと新八は舟着場に向かった。そこでは六さんと彦さんが堂々と立っていた。
六さんが名乗る。
「手前、船宿さくらの第一船頭、六郎次郎と申します。この度は、ご利用誠に感謝申し上げます」
六さんが新八を自分の舟に乗せた。
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