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第五章 桜とさくらの根深汁
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「皆さん、ありがとうございます。よろしく頼みますね。あ、次介さん。例のアレは……」
「ご心配なく。もう準備出来てるぜ」
「感謝します。ほんと、晴れて良かったわ」
実は、次介さんにはある花火を頼んでいた。江戸の町では許可なく花火を上げるのは御法度だが、どんな規則にも抜け穴はあるもので……。
アタシが台所に向かうと、座敷には父、母、姉が待ち構えていた。
父は言う。
「おユキの見合い相手がお客となると接待しない訳にはいかない」
父も母も正装だった。姉も紫地の桃山小袖に燈籠鬢、という気合いの入った格好だった。
「そんな良い服で客あしらいするの? うちは何屋よ?」
今日は一般の客だって来るのだ。初めて来た客が何か勘違いしたらどうするのよ。
「だからって小汚い格好で金吾さんを迎える訳にもいかないよ」
と、母の反論。
「でもねぇ、主役は金吾さんじゃなく、あの人の下で働く新八さんなのよ」
「知ってるよ。だけど金吾さんが来るのも事実でしょ」
「姉さんの髷、いつの間に変えたのよ。誰がやったの?」
「髪結屋に決まってるじゃない。ちょうど空いている人がいてね」
「ああもう、分かったわよ。料理の下ごしらえは出来てるし、姉さんは金吾さんだけ相手すればいいから」
アタシが台所に引っ込むと、姉も付いて来た。髪型が乱れないよう、ゆっくりと。
「手伝うわ」
姉はそう言ったが、アタシは断った。
「ご心配なく。もう準備出来てるぜ」
「感謝します。ほんと、晴れて良かったわ」
実は、次介さんにはある花火を頼んでいた。江戸の町では許可なく花火を上げるのは御法度だが、どんな規則にも抜け穴はあるもので……。
アタシが台所に向かうと、座敷には父、母、姉が待ち構えていた。
父は言う。
「おユキの見合い相手がお客となると接待しない訳にはいかない」
父も母も正装だった。姉も紫地の桃山小袖に燈籠鬢、という気合いの入った格好だった。
「そんな良い服で客あしらいするの? うちは何屋よ?」
今日は一般の客だって来るのだ。初めて来た客が何か勘違いしたらどうするのよ。
「だからって小汚い格好で金吾さんを迎える訳にもいかないよ」
と、母の反論。
「でもねぇ、主役は金吾さんじゃなく、あの人の下で働く新八さんなのよ」
「知ってるよ。だけど金吾さんが来るのも事実でしょ」
「姉さんの髷、いつの間に変えたのよ。誰がやったの?」
「髪結屋に決まってるじゃない。ちょうど空いている人がいてね」
「ああもう、分かったわよ。料理の下ごしらえは出来てるし、姉さんは金吾さんだけ相手すればいいから」
アタシが台所に引っ込むと、姉も付いて来た。髪型が乱れないよう、ゆっくりと。
「手伝うわ」
姉はそう言ったが、アタシは断った。
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