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第五章 桜とさくらの根深汁
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田島屋は金吾さんの古着問屋だけど、山川屋は……
「トモミとおチヨの呉服屋ね」
「そういう事だ。どうやらトモミが口を滑らせたようだ」
「あの子ったら」
揉め事を避けるために秘密にしたかったのに。山川屋の旦那様も既に知っているのかしら。
「おタキさん、安心してくれ。トモミ嬢は金吾殿だけに、困っていたら船宿さくらが助けてくれた、と伝えただけのようだ」
彦さんが横目で夜桜を見上げながら教えてくれた。
「簡潔に、母の味噌汁の味を再現してくれたと。きっとその様子が嬉しそうだったから、金吾殿もおタキさんに頼もうと思ったんだ」
人の心を救う料理、を。
満たすのは腹だけではない食事、を。
「期待されるのは嬉しいけど、何を作ったら良いか分からないわ。新八さんの好みは何?」
それはちゃんと彦さんが聞いてきてくれた。
「好みというか、江戸らしい物が食べたいそうだ。もう、江戸に来る事は無いだろうから」
「そう。江戸らしい物と言ったら、寿司、蕎麦、天ぷらかな」
「有名なのは、その辺りだな」
「どれも出店の方が美味しかったりするわね。わざわざアタシに頼むのだから、普通のじゃ駄目だと思う」
「それに一応、旅立ちを応援する意味合いがある。江戸が恋しくなるのは逆効果では?」
「うーん、どうしたら良いのかしら。三日後までに考えて、試作して、提供しなきゃ」
時間が無い。迷ってる暇もない。
依頼主は、姉の将来の相手になる大切な人だ。断る事は出来ない。
新八という人も放っておけない。あの火事に巻き込まれたのなら、尚更。
「とにかく、何とかするわ」
そうとしか言えない。
「トモミとおチヨの呉服屋ね」
「そういう事だ。どうやらトモミが口を滑らせたようだ」
「あの子ったら」
揉め事を避けるために秘密にしたかったのに。山川屋の旦那様も既に知っているのかしら。
「おタキさん、安心してくれ。トモミ嬢は金吾殿だけに、困っていたら船宿さくらが助けてくれた、と伝えただけのようだ」
彦さんが横目で夜桜を見上げながら教えてくれた。
「簡潔に、母の味噌汁の味を再現してくれたと。きっとその様子が嬉しそうだったから、金吾殿もおタキさんに頼もうと思ったんだ」
人の心を救う料理、を。
満たすのは腹だけではない食事、を。
「期待されるのは嬉しいけど、何を作ったら良いか分からないわ。新八さんの好みは何?」
それはちゃんと彦さんが聞いてきてくれた。
「好みというか、江戸らしい物が食べたいそうだ。もう、江戸に来る事は無いだろうから」
「そう。江戸らしい物と言ったら、寿司、蕎麦、天ぷらかな」
「有名なのは、その辺りだな」
「どれも出店の方が美味しかったりするわね。わざわざアタシに頼むのだから、普通のじゃ駄目だと思う」
「それに一応、旅立ちを応援する意味合いがある。江戸が恋しくなるのは逆効果では?」
「うーん、どうしたら良いのかしら。三日後までに考えて、試作して、提供しなきゃ」
時間が無い。迷ってる暇もない。
依頼主は、姉の将来の相手になる大切な人だ。断る事は出来ない。
新八という人も放っておけない。あの火事に巻き込まれたのなら、尚更。
「とにかく、何とかするわ」
そうとしか言えない。
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