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第五章 桜とさくらの根深汁
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残されたアタシと姉は、ゆっくり目を合わせた。
「姉さん、白飯と味噌汁はもうあるから良いとして、おかずはどうする? あの黒豆を出して良い?」
呆然としていた姉がハッと我を取り戻した。
「あれも良いけど急いで何か出すわ。今、作っている途中のものがあるのよ」
台所に回って見てみると、姉の手元には包丁とまな板が。まだ光っている血と、魚の生臭さが鼻に付いた。
「魚料理を作っていたの?」
「ええ。鰤と大根の煮物よ」
「鰤を捌いたの?」
「切り身をいくつか買ったの。あなたが外に出ている間に棒手振りが来て、ね」
「ちゃんと新鮮なもの?」
「当たり前でしょ。目の前に河岸があるのだし」
大根も鰤も既に鍋へ入れられている。あとは煮立つのを待つだけだ。
アタシは白飯と味噌汁を椀によそって、黒豆を小皿に出した。それらを盆に乗せる。
「じゃ、アタシはこれ、金吾さんに出してくるね」
「お願い」
アタシはまた花見席へ向かった。
「お待たせしました」
金吾さんは他の客から腰掛けの端を譲られていた。金吾さんに盆を渡す。
黒豆を一粒取って口に入れた金吾さんが、満面の笑顔になった。
「美味い!」
その大袈裟な喜び方にアタシは吃驚した。
「姉さん、白飯と味噌汁はもうあるから良いとして、おかずはどうする? あの黒豆を出して良い?」
呆然としていた姉がハッと我を取り戻した。
「あれも良いけど急いで何か出すわ。今、作っている途中のものがあるのよ」
台所に回って見てみると、姉の手元には包丁とまな板が。まだ光っている血と、魚の生臭さが鼻に付いた。
「魚料理を作っていたの?」
「ええ。鰤と大根の煮物よ」
「鰤を捌いたの?」
「切り身をいくつか買ったの。あなたが外に出ている間に棒手振りが来て、ね」
「ちゃんと新鮮なもの?」
「当たり前でしょ。目の前に河岸があるのだし」
大根も鰤も既に鍋へ入れられている。あとは煮立つのを待つだけだ。
アタシは白飯と味噌汁を椀によそって、黒豆を小皿に出した。それらを盆に乗せる。
「じゃ、アタシはこれ、金吾さんに出してくるね」
「お願い」
アタシはまた花見席へ向かった。
「お待たせしました」
金吾さんは他の客から腰掛けの端を譲られていた。金吾さんに盆を渡す。
黒豆を一粒取って口に入れた金吾さんが、満面の笑顔になった。
「美味い!」
その大袈裟な喜び方にアタシは吃驚した。
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