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第四章 慟哭とその逆となめこ汁
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主食は決まった。
「梅干しと甘酢漬けを乗せた、お茶漬け」
味噌汁はどうしようか。
「お母ちゃん、青物は何があるの?」
「痛んだらいけないから、あまり買ってないんだよ。とりあえず安く買えた物ならあるけど」
「……根菜が多いね。あっ、これは?」
「豆苗だよ」
「良いわね。根菜だけじゃ色合いが地味だから」
「これ、売ってた人が『苦味は少なくて、豆のような味がする』と言っていたわ」
なるほど。そうなると味噌は、塩味に少し偏らせた方が良いかも。
「お母ちゃん、後は任せて」
アタシは調理に取り掛かった。
豆苗の根本を切る。安く買っただけあって小さい物ばかりだったので、これ以上切らず完了とする。
ごぼうの皮を剥いて、ささがきにする。豆苗が小さい分、ごぼうはやや大きめに切るよう意識する。後はそれを酢水に入れた。
出汁は昆布から取った。具が青物ばかりだから、少し上品な旨みを出したくて。
あとは、煮立ったら豆苗と水気を切ったごぼうを入れる。その後に味噌。
味噌は江戸味噌。少しだけ白味噌も入れる。
「なんか良い匂いしてきた!」
「腹減ったなー」
台所からじゃ見えないが、客が騒ぎ出した。
「おタキさん、どうしたんだろうね」
アタシが居ないと思って噂話までしだした。
「最近、元気無いというか」
「様子が変というか」
「いやいや、昨日は笑顔だったぜ」
「お客の前だからだろ」
「何かあったのらだろうか」
「男に泣かされたとか? あるいは男を泣かせたんじゃね?」
わいわいと盛り上がる男達。勝手に話を作るな!
「梅干しと甘酢漬けを乗せた、お茶漬け」
味噌汁はどうしようか。
「お母ちゃん、青物は何があるの?」
「痛んだらいけないから、あまり買ってないんだよ。とりあえず安く買えた物ならあるけど」
「……根菜が多いね。あっ、これは?」
「豆苗だよ」
「良いわね。根菜だけじゃ色合いが地味だから」
「これ、売ってた人が『苦味は少なくて、豆のような味がする』と言っていたわ」
なるほど。そうなると味噌は、塩味に少し偏らせた方が良いかも。
「お母ちゃん、後は任せて」
アタシは調理に取り掛かった。
豆苗の根本を切る。安く買っただけあって小さい物ばかりだったので、これ以上切らず完了とする。
ごぼうの皮を剥いて、ささがきにする。豆苗が小さい分、ごぼうはやや大きめに切るよう意識する。後はそれを酢水に入れた。
出汁は昆布から取った。具が青物ばかりだから、少し上品な旨みを出したくて。
あとは、煮立ったら豆苗と水気を切ったごぼうを入れる。その後に味噌。
味噌は江戸味噌。少しだけ白味噌も入れる。
「なんか良い匂いしてきた!」
「腹減ったなー」
台所からじゃ見えないが、客が騒ぎ出した。
「おタキさん、どうしたんだろうね」
アタシが居ないと思って噂話までしだした。
「最近、元気無いというか」
「様子が変というか」
「いやいや、昨日は笑顔だったぜ」
「お客の前だからだろ」
「何かあったのらだろうか」
「男に泣かされたとか? あるいは男を泣かせたんじゃね?」
わいわいと盛り上がる男達。勝手に話を作るな!
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