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第四章 慟哭とその逆となめこ汁

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「祈る事が、償い」

 相手が幸せになるまで、相手の幸せを祈り続ける。

「カン坊、ありがとう」

 自分にとって都合の良い解釈なのは分かってる。でも、無力なアタシには実際それしか出来ない。

「徳治さん、ごめん。それで許して」

 アタシは席から立った。

「大丈夫そうな顔になったね、おタキさん」

「おハツさんにも、ありがとうと伝えて頂戴。ご馳走様でした」

 ほんと、最高のご馳走だった。

 アタシは代金を払い、店から出た。店の見栄えなんか関係の無い、最高の飯屋だった。

 アタシは歩き出す。一歩、一歩。

 そして向かう。二年前に焦土と化した江戸の中心部へ。

 日本橋。その近くにある寺の墓地。そこに六さんの家族が眠っているお墓がある。

 行こう。最早、臆病なんて気のせいだ。





 小さな寺の、小さな墓地の、小さなお墓だった。このお墓の下に徳治さんが眠っていると考えると尚更小さい。

 六さんかどうかは分からないが、誰かが定期的に来ているようだ。墓石は綺麗に磨かれ、周囲に雑草も無い。

 アタシは線香だけ持って来た。徳治さんの親族からしたら、徳治さんの死の原因となった女が来たなんて面白くないだろう思って、誰が来たか特定出来ないように。どの道、徳治さんの好きだった花も菓子も知らない。線香しか供える物がないや。

 線香を横に寝かせて置いて、手を合わせた。

 祈る。

 徳治さんの事。

 ここで祈るのは違うかもだけど、彦さんの家族の事も。

 江戸中に眠る、無念を抱えて亡くなった人達の事も。

 また、あの火事を生き延びた故に、心に傷を負った者達の事も。

「どうか……」

 許してください。

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