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第四章 慟哭とその逆となめこ汁

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「彦さんはまだ戻らないの?」

「わ、分からないよ。さっき出たばかりだかし、もうちょい時間がかかるのでは」

 アタシは客に茶や心太ところてんを出したりして時間を潰した。心太は母の好物で、家族で食べる用だったけど、他に出す物が無いので使う事にした。つゆはアタシが酢醤油で作った。

「おタキさん、彦一郎に会ったら何を言うか、先に決めておきなよ」

 次介が茶のお代わりついでに言った。

「決めるって、何をですか」

「んもぅ、おタキさんはいつまで隠す気さ。俺ら、みーんな気付いてるぜ」

「えっ」

「数ある船宿の内、俺らがここを贔屓にする理由は、誠実な対応と……美味い料理と……そして! おタキさんと彦一郎の成り行きを、うわっ」

 次介の額をバチンッと孫介が叩いた。

「虫がいた」

 次介の真っ赤になった額を皆で笑って、時間は過ぎていった。










 夕方前。さくらから客が居なくなると、やはり寂しい。

 アタシと姉は洗い物をしながら、のんびりと雑談していた。どうでもいい話ばかり。道端に蒲公英が咲き始めた事、寺に鳩が集まっている事、夜に流れ星を見た事。

 姉は、前の婚約者との思い出も話した。

「あの人、いつも笑顔だった」

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