【完結】船宿さくらの来客簿

第四章 慟哭とその逆となめこ汁

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「お、おタキさん？」

「どうしたの」

「泣いてる……？」

「何があったのさ！　俺らに話してみ？」

　慌てる客一同。アタシは手を振って誤魔化した。

「風邪では無いのですけど、鼻が詰まってて声が変なの。だから客あしらいが上手く出来ないと思って、今日は料理屋を閉めていたのです」

　なんとか信じてもらえた。

「なーんだ。彦一郎も心配してたぜ」

　三郎がそう言った。アタシは思わず詰め寄ってしまった。

「彦さん、何て言ってました？」

　困り顔の三郎。しどろもどろに口を開いた。

「いや、そんな大した事は、ほら……あいつ無口だから」

「それでも、具体的に何と言ったのですか」

「うーん、何て言ってたっけかなぁ。弥次郎。お前、覚えてるか？」

「覚えてるけど、言えない」

　何故？　とアタシは目で尋ねた。

「いや、彦さんって、あんな真っ直ぐにものを言うんだな……って、吃驚しました。俺にはとても言えない……」

　一体、何を言ったのよ彦さん。