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第三章 あの人の居場所とすまし汁

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「これが全てだ」

 六さんはアタシの顔から目を背けた。

「おタキさん、あなたを責める気は無い。ただ、印籠の件は悔やみきれん。もし、その印籠が身元を示す物だと、徳治の意図が伝わっていたら……わしの従兄は今でも苦しんでおらん。いつまでもあり得ない夢を見る事もなかった。無駄な希望ほど、人を絶望させるものはない」

 六さんは従兄が哀れで堪らないのだろう。

 アタシが印籠を取ったせいで、こんな事になってしまったのだ。

「アタシがこの印籠を返せば……」

「駄目だ。今更、信じないだろう。時が経ちすぎた。自分達を諦めさせるために偽物を作ったのだ、と言い切るに決まってる」

「アタシ、アタシ……とんでもない事を……」

 印籠が急に重く感じた。アタシは取り返しのつかない罪を犯してしまっていたのだ。

 彦さんの方に振り向き、アタシは問う。

「彦さんが真相を黙っていたのは、アタシのため?」

 彦さんは頷いた。

「本当の事を言っても、おタキさんが悲しみ悩むだけだと分かっていた」

「そうだったの……」

「出来れば一生隠しておきたかった」

「それは無理だったのよ。現実からは逃げられない」

 徳治さんはアタシを助けなければ死なずに済んだ。

 アタシが殺したも同然だ。

「あの、六さん。徳治さんは、絶命してから見つけたのですか?」

 六さんは首を振った。

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