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第三章 あの人の居場所とすまし汁

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「おい、おタキ」

 その時、父が外から声をかけて来た。

 行ってみると、大きなたけのこを抱えていた。アタシの手首から肘ぐらいの大きさだ。

「ええっ。どうしたの、それ」

「さっき仕事終わりの花火職人達がくれたんだ。ほら、お前、山川屋との……」

「ああ。あの件ね」

 今日の昼、早速花火職人達が食べに来てくれた。次介も含め、沢山の男達が。

 その中の一人が気まぐれで筍をくれたらしい。

「これ、調理出来るか?」

 父に聞かれ、戸惑った。

「筍は収穫直後にすぐ茹でなきゃ……もっと早く言ってほしかったです」

「すまん。米ぬかなら大量にあるが」

「まぁ、明日出せば良いか。やりましょう」

「助かるよ。俺も筍飯が食べたいし」

「まさか、お父ちゃんが採って来てくれと頼んだのですか? 食いしん坊」

「これからは採ったらすぐ渡す。それなら文句無いだろ」

 渋々、筍を受け取った。ずっしりと重い。

 父が二階へ行くのを見届けて、アタシは筍を台所に運んだ。姉が目を丸くする。

「あらあら、高さのある鍋あったかしら」

 がさごそと姉が深鍋を探してくれた。アタシはさっさと包丁で筍の根本と穂先を切り落とした。

「おタキ、慣れた手つきね」

「筍なら何回か調理した事ある。と言ったも、ほんと何回かだけ、だけど」

 アタシがテキパキと筍に縦の切り目を入れるのを見て姉が感嘆した。

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