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第三章 あの人の居場所とすまし汁
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「さあ、こっちだ」
本殿で二礼二拍手一礼のお参りをする。
「さくらがもっと繁盛しますように」
「これからも健康に過ごせますように」
各々、願い事をした。
アタシは内心、恩人であり想い人であるあの人との再会を願った。
ついでに、彦さんとの仲直りも。
姉のは、声が小さくて、真横にいたアタシにしか聞こえなかった。
「後悔しませんように」
その絞り出すような声を聞いたら、アタシの方が喉に込み上げて来るものがあって困った。姉の躊躇いが、痛いほど伝わって来る。
父と母は呑気に会話している。
「さて、この後どうしよう」
「水茶屋に行きましょうよ。喉が渇いたわ」
「そうだな」
「丁度、鳥居を出た所に水茶屋があるよ。あそこが良いわ」
「よし」
こちらの意見など聞かず、どんどん決めていく。
アタシと姉はこっそり目を合わせた。そこに相手の男がいるのだな、と。
「行くぞ」
父に声をかけられ、アタシ達は付いて行った。
水茶屋は、道路を挟んで鳥居の真ん前にあった。壁の無い、屋根と椅子と調理器具の乗った台だけの、ほぼ露店だった。椅子は十席しかない。しかし質素な感じではなく、座布団や暖簾は洒落ていて、店の名が書かれた旗も威厳があった。
若い夫婦が経営していて、慣れた手つきだ。
「いらっしゃい」
「空いてる席へどうぞ」
「あっ、奥の方が落ち着きますよ」
「まだ誰もいませんし」
この夫婦も仕掛側だな、と察した。
奥の隅に両親、その横にアタシ、姉は道路側に座った。姉の横は、勿論空席になるように。
本殿で二礼二拍手一礼のお参りをする。
「さくらがもっと繁盛しますように」
「これからも健康に過ごせますように」
各々、願い事をした。
アタシは内心、恩人であり想い人であるあの人との再会を願った。
ついでに、彦さんとの仲直りも。
姉のは、声が小さくて、真横にいたアタシにしか聞こえなかった。
「後悔しませんように」
その絞り出すような声を聞いたら、アタシの方が喉に込み上げて来るものがあって困った。姉の躊躇いが、痛いほど伝わって来る。
父と母は呑気に会話している。
「さて、この後どうしよう」
「水茶屋に行きましょうよ。喉が渇いたわ」
「そうだな」
「丁度、鳥居を出た所に水茶屋があるよ。あそこが良いわ」
「よし」
こちらの意見など聞かず、どんどん決めていく。
アタシと姉はこっそり目を合わせた。そこに相手の男がいるのだな、と。
「行くぞ」
父に声をかけられ、アタシ達は付いて行った。
水茶屋は、道路を挟んで鳥居の真ん前にあった。壁の無い、屋根と椅子と調理器具の乗った台だけの、ほぼ露店だった。椅子は十席しかない。しかし質素な感じではなく、座布団や暖簾は洒落ていて、店の名が書かれた旗も威厳があった。
若い夫婦が経営していて、慣れた手つきだ。
「いらっしゃい」
「空いてる席へどうぞ」
「あっ、奥の方が落ち着きますよ」
「まだ誰もいませんし」
この夫婦も仕掛側だな、と察した。
奥の隅に両親、その横にアタシ、姉は道路側に座った。姉の横は、勿論空席になるように。
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