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第二章 おふくろの味としじみ汁

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 それから豆腐を口に入れた。

「こっちも良いね! やはり味噌汁と言えば豆腐! 舌触りは滑らかで、水菜との対比が出てる。味も甘味があって、大豆の香りが残ってるね。味噌も大豆で出来てるし、合わない訳がない」

 弥次郎は味噌汁と白飯を交互に食べた。あっという間に食べ終わる。他の客達は涎を堪えて見ていた。

「こんなに美味いのに、納得出来ないのかい?」

 弥次郎の素朴な疑問は尤もだ。

 でもアタシは、そう、まだ駄目なのだ。

 だって、こんなに簡単に作れるなら、おチヨ達は悩んでないはず。

 普通の味噌汁じゃ駄目なのだ。

「弥次郎さん、ありがとう。だけど、もう少し考えたいんです」

「そうか。早くしないと水菜が旬を過ぎてしまうよ」

「そうですね。急がなきゃ」

「嗚呼、ほんと、おタキさんの十分の一で良いから……おふくろの料理が美味ければなぁ」

 三郎がその肩を抱いて慰めた。どんな食生活を送っているというのだ。

 気になったが、それどころではない。

 味噌汁の試作ばかりもしてられない。アタシは客あしらいで忙しくなった。茶を運んだり、注文された料理を作ったり、舟を見送ったり、等。

 父と母も一階で客の対応に追われていた。

 気付けば昼になっていた。





「普通の作り方じゃ、いけない」

 昼過ぎ、一般的な味噌汁と同じ材料では足りない、と気付いた。

 せめて何かと何かを組み合わせて、新しい味を作らなければ。

「どうしよう」

「おタキさん」

 台所で悩むアタシの前に、彦さんが現れた。昼休憩に入るところのようだ。
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