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第二章 おふくろの味としじみ汁

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「俺達、そろそろ行くわ!」

 他の客達は慌てて立ち上がった。

「猪牙舟が来たし、偶然皆行き先が同じだし」

「ご馳走様! 勘定、ここに置いてくね」

「さぁて、午後も仕事だべ。頑張るべ」

 逃げ足の速い連中だ。四人共、彦さんの舟に乗り込んだ。

 そして問題漢の次介は、座ってからおチヨ達に気付いた。

「ん?」

 まじまじとおチヨを見つめる次介。

「べっぴんさんだなぁ。どこの誰だよ? いや、待て。なんかオラ、あんたに会った事ある気がする。吉原かどっかの岡場所で遊んだっけ」

「初対面の相手を遊女と決めつけるのは、失礼では? 私は遊郭の者じゃありません」

「ありゃ、失礼。だがあんたなら、どんな男でも手玉に取れそうなのに。勿体ねぇよ。紅がよく似合ってる」

「あなたのお名前は次介さんというのですか? もしかして、花火師?」

「んん? 何で知ってんの? 言ったっけ?」

 何だか嫌な予感がする。アタシは一歩下がった。

 おチヨは立ち上がった。

「今謝れば、先程の無礼な言葉は忘れてあげます。私達は山川屋の者です。この意味が分かりますね?」

 返事代わりに、次介は悲鳴を上げた。

「うるさい」

 孫介は他人事のように冷静だ。

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