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第336話

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時は少し遡る。

音声伝達機を通じてリングの方で異常な爆音が響き、しばらくして聞こえた声にグレイははっとなる。

それは小さな呟きだった。

『・・・どこだ?何故いない』

その言葉を聞いた瞬間、グレイは再び扉を叩いていた。

ドンドンドンッ!!!

「エル!!頼む、この扉を何とかしてくれっ!!」

先ほども必死であったが、それ以上に焦り出すグレイ。

「わ、わかったよっ!!」

事態に追い付いていなかったエルリックがグレイの声に従い、立ち上がる。

そして、呪文を唱え始める。

グレイはアリシアの元に駆けつけたい衝動を堪え、拳を強く握りしめる。

「・・・これは一人の魔法では厳しい。私もやる」

呪文を唱え始めたエルリックの様子を見ながら、セリーも同様に呪文を唱え始める。

エルリックはセリーの言葉に頷くと呪文を続け、完成させる。

ほどなくしてセリーの呪文も完成するのを待つと、

「グレイッ!!二人で魔法を放って扉を壊すから、離れていてっ!!」

グレイに向かって注意喚起をする。

「分かったっ!頼む!!」

グレイはエルリックに返事をするとすぐに控室の後方に下がり、椅子を扉の方に向け、なるべくその陰に隠れるようにしゃがみ込む。

「イズ。危ないから懐に入っていてくれ」

『分かった。結界も張っておこう』

グレイの左肩に居たイズはグレイの言葉に頷くと懐に隠れながらも魔法障壁を展開する。

「ありがとう」

グレイはイズに礼を言うと、衝撃に備える。

エルリックはセリーの方に顔を向けると、

コク

二人して頷き合い、扉に向け手を翳すと、同時に魔法を放つ。

「「【爆炎】よ!!」」

エルリックとセリーから放たれた炎の塊は途中で両者が絡み合いサイズが倍になりながら扉に向かって行く。

どこにそんな力があるのか。セリーは自分より一回りは大きいエルリックの体を掴み、扉から距離を取る。

そして、魔法は扉のドアノブの所に狙ったように直撃する。

ドゴォォ

とてつもない大きな音を立て、エルリックとセリーの魔法が扉に直撃をする。

それにより、辺りに満たされる煙。

「ゴホッゴホッ・・・扉はっ!?」

エルリックは口を手で押さえながら咳をし、扉がどうなったか確認しようとするが煙の所為で良く見えない。

状況ははっきりしないが、控室の方からすぐさま飛び出してきた影が何なのかが分かると安堵の溜息を吐く。

「エル・・・それにセリー、助かった・・・」

体が土埃塗れになっていたがそんなことに気にした様子も無く、グレイはエルリックとセリーの前に駆け寄ると頭を下げた。
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