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第255話

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「はい。どうされましたか?もしかしてもう少し膝枕してほしいとか?」

グレイに名前を呼ばれたアリシアは自分の膝を軽く手で叩きながら少しいたずらっぽく尋ねる。

グレイは先程の感触を思い出し、一瞬・・・いやかなり気持ちが揺れるが頭を振ってその思いを霧散させると、

「えっと、そうじゃなくて・・・。さっきの模擬戦の時にアリシアが急に消えたように見えた気がしたんだけど何だったかなと思って」

グレイはアリシアに対して聞きたいことを尋ねる。

「ああ、そのお話ですか」

アリシアは冷静にそう言うと、予備動作無くすっと立ち上がる。

「あっ・・・(立っちゃった)」

アリシアが立った事に対してグレイが思わず、残念そうに声を出す。

そして、慌てて自分の口を自分の手で塞ぎ目をつぶる。

(まずい、思わず声に出てしまった・・・だって仕方がないじゃないか。意識がはっきりとしてなかった一瞬のことでも多幸感が押し寄せて来たんだから)

グレイは誰にか分からないが言い訳を心の中で呟くと、恐る恐る目を開ける。

そこには明らかに先程のグレイの呟きを聞き取ったアリシアが満面の笑みでグレイを見ていた。

「ふふふ、どうやらグレイは気に入ってくれたようですわね」

アリシアが嬉しそうに話しかけてくる。

「うっ・・・うん。その・・・最高でした・・・」

完全に頭の中が真っ白になったグレイが周りに誰もいないのに何故か敬語に戻しながら感想を口にする。

その様子に先程までは何とかポーカーフェイスを保っていたアリシアが限界を迎えて顔を真っ赤にさせる。

「あ、ええと、その・・・お粗末様でした」

「・・・」

「・・・」

2人は完全にお互いを意識してしまい沈黙してしまう。

『・・・話が進まぬから正気に戻ってくれると助かるのだが?』

「「っ!?」」

少し離れたところから見ていたイズが、「またやっているのか・・・懲りないぬな」と言わんばかりの様子で声を掛けるとグレイとアリシアが完全に動揺する。

「こほん。・・・グレイがお聞きしたいのは私《わたくし》が模擬戦の途中で消えた事でしたわね?」

わざとらしく咳を一つしたアリシアが冷静を装いながらグレイに改めて確認をとる。

「あ、ああ、俺が聞きたいのはその事だね」

(流石、3大貴族。切り替えが早いな)

グレイは口に出せば「そのような事で3大貴族であることを感心されましても困ります」と言われるであろうことを内心で呟き、感心すると、わずかに動揺を残しながらもアリシアに同意する。

アリシアは普段、自分の能力を自慢したりしないがこの時ばかりは余程嬉しいのか得意げな顔をすると、

「簡単に言いますと、あの時、私《わたくし》はのですわ」

はっきりと、とんでもない事を告げたのであった。
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