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第249話
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アリシアから驚きの言葉を聞いてから数日の間は、午前に模擬戦、午後に勉強という形で時間が進んでいった。
午前中だけとはいえ、【エリクサー】のお陰で一戦、一戦の質を最大限に高めることが出来るため普通に丸一日疲れとともに訓練するよりも遥かに効率が高い。
そのまま午後も訓練をすればとなるかもしれないが、いくら【魔法武闘会】がある日まで授業が免除とはいえその後の授業のこともあるためできるだけ勉強の時間に充てるようにしていた。
もっとも、アリシアは恐ろしいことに4年生で習う範囲の勉強は既に終えているらしくグレイが不明なところのフォローと何やら別のことをやっていた。
当然とばかりにグレイは予選の2日後くらいから早朝訓練を開始していた。
週末には訓練NGとアリシアに釘を刺されながらももはや定期的なものとなったアリシアの屋敷へと向かうグレイとアリシア、そしてイズ。
そこで呼ばれたゾルムからまたとんでもない事を告げられた。
「えっ、国王様との謁見ですか!?」
グレイは思わず大きな声を上げる。
「ああ、そうだ。ようやく日時が決まったのだ。まだ先ではあるが、グレイ君にはあらかじめ心づもりをしておいて貰いたい」
ゾルムはグレイの驚く様子を楽しそうに見ながらそう告げる。
「・・・」
グレイはまさか本当に国王と謁見することになるとは思ってもおらず、開いた口がふさがらなかった。
「それで、その日というのはいつなのでしょうか?」
動揺しきっているグレイの変わりにアリシアがゾルムに尋ねる。
「ああ。今からひと月後の水曜日だ。平日ではあるが【魔法武闘会】終了後は1週間ほど休みだろうから問題あるまい」
「そうですわね。畏まりましたわ。それで、王都へは私《わたくし》も同行しても構いませんですわよね?」
アリシアがゾルムの言葉に頷きつつ、念を押すように尋ねる。
「あ~、アリシアにはここで留守番を・・・」
「お父様?」
ゾルムが何をいうかを察したアリシアが言葉の途中で遮り、プレッシャーを掛ける。
「も、もちろんアリシアにも国王様と謁見して貰うから心づもりしておいてくれ」
「はい。畏まりましたわ」
180度内容の変わったゾルムの言葉にアリシアが機嫌を良くしながら快諾をする。
(ふぅ・・・ますます妻と似てきたな・・・)
ゾルムはアリシアの雰囲気が段々と妻であるウェンディに似てきたことを実感する。
基本的に夫を立ててくれる良妻であるが、譲らないところは全く譲らないのだ。
アリシアは自分似だと思っていたゾルムはそうではなかったかもしれないと考えを改める。
「と、ところでグレイ君。【魔法武闘会】に出場出来ることが決まったそうだね。おめでとう」
ゾルムは話題を逸らすためにグレイの方に向かって話しかける。
「あ、はい!ありがとうございます!これも全てアリシア様のお陰です」
我に返ったグレイはゾルムに対し、礼を言う。
「ははは、グレイ君は本当に謙虚だね。アリシアが参加できるのは分かっていたがおめでとうと言わせて貰おう」
グレイを褒めたことでアリシアの先程までの雰囲気が和らいだことを確認したゾルムはアリシアに対しても声を掛ける。
「ありがとうございますわ」
アリシアは「全くお父様は話を逸らすのが上手いのですから」という雰囲気を見せながら返事を返す。
「【魔法武闘会】は3週間と少し後の土曜日だったね。娘やグレイ君の晴れ舞台だ。私達も応援に行かせて貰うつもりだ」
「本当ですか!?それでは、無様な試合はお見せ出来ませんわね。頑張らないと」
アリシアがとても嬉しそうに返事をする。
(うーん・・・やっぱり色々な人が来るんだな・・・どうしよう。今から既に緊張してきた・・・)
グレイは嬉しいそうなアリシアの傍らで早くもソワソワし始めていた。
午前中だけとはいえ、【エリクサー】のお陰で一戦、一戦の質を最大限に高めることが出来るため普通に丸一日疲れとともに訓練するよりも遥かに効率が高い。
そのまま午後も訓練をすればとなるかもしれないが、いくら【魔法武闘会】がある日まで授業が免除とはいえその後の授業のこともあるためできるだけ勉強の時間に充てるようにしていた。
もっとも、アリシアは恐ろしいことに4年生で習う範囲の勉強は既に終えているらしくグレイが不明なところのフォローと何やら別のことをやっていた。
当然とばかりにグレイは予選の2日後くらいから早朝訓練を開始していた。
週末には訓練NGとアリシアに釘を刺されながらももはや定期的なものとなったアリシアの屋敷へと向かうグレイとアリシア、そしてイズ。
そこで呼ばれたゾルムからまたとんでもない事を告げられた。
「えっ、国王様との謁見ですか!?」
グレイは思わず大きな声を上げる。
「ああ、そうだ。ようやく日時が決まったのだ。まだ先ではあるが、グレイ君にはあらかじめ心づもりをしておいて貰いたい」
ゾルムはグレイの驚く様子を楽しそうに見ながらそう告げる。
「・・・」
グレイはまさか本当に国王と謁見することになるとは思ってもおらず、開いた口がふさがらなかった。
「それで、その日というのはいつなのでしょうか?」
動揺しきっているグレイの変わりにアリシアがゾルムに尋ねる。
「ああ。今からひと月後の水曜日だ。平日ではあるが【魔法武闘会】終了後は1週間ほど休みだろうから問題あるまい」
「そうですわね。畏まりましたわ。それで、王都へは私《わたくし》も同行しても構いませんですわよね?」
アリシアがゾルムの言葉に頷きつつ、念を押すように尋ねる。
「あ~、アリシアにはここで留守番を・・・」
「お父様?」
ゾルムが何をいうかを察したアリシアが言葉の途中で遮り、プレッシャーを掛ける。
「も、もちろんアリシアにも国王様と謁見して貰うから心づもりしておいてくれ」
「はい。畏まりましたわ」
180度内容の変わったゾルムの言葉にアリシアが機嫌を良くしながら快諾をする。
(ふぅ・・・ますます妻と似てきたな・・・)
ゾルムはアリシアの雰囲気が段々と妻であるウェンディに似てきたことを実感する。
基本的に夫を立ててくれる良妻であるが、譲らないところは全く譲らないのだ。
アリシアは自分似だと思っていたゾルムはそうではなかったかもしれないと考えを改める。
「と、ところでグレイ君。【魔法武闘会】に出場出来ることが決まったそうだね。おめでとう」
ゾルムは話題を逸らすためにグレイの方に向かって話しかける。
「あ、はい!ありがとうございます!これも全てアリシア様のお陰です」
我に返ったグレイはゾルムに対し、礼を言う。
「ははは、グレイ君は本当に謙虚だね。アリシアが参加できるのは分かっていたがおめでとうと言わせて貰おう」
グレイを褒めたことでアリシアの先程までの雰囲気が和らいだことを確認したゾルムはアリシアに対しても声を掛ける。
「ありがとうございますわ」
アリシアは「全くお父様は話を逸らすのが上手いのですから」という雰囲気を見せながら返事を返す。
「【魔法武闘会】は3週間と少し後の土曜日だったね。娘やグレイ君の晴れ舞台だ。私達も応援に行かせて貰うつもりだ」
「本当ですか!?それでは、無様な試合はお見せ出来ませんわね。頑張らないと」
アリシアがとても嬉しそうに返事をする。
(うーん・・・やっぱり色々な人が来るんだな・・・どうしよう。今から既に緊張してきた・・・)
グレイは嬉しいそうなアリシアの傍らで早くもソワソワし始めていた。
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