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第223話
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「ふぅ・・・明日に響くといけませんし、本日はここまでにしましょう」
「はい。ありがとうございました!」
アリシアの言葉に頭を下げながら礼を言うグレイ。
模擬戦の際にはグレイは丁寧な言葉を話すようにしている。
教えを乞うている側だから当然と考えているようだ。
『大分良くなったな。グレイ。【身体強化魔法】も実戦で使える位にはなってきたんじゃないか?』
グレイとアリシアが柔軟体操をして体を解しているのを見ながらイズが感想を述べる。
「そうかな?それなら良いのだけど・・・」
グレイはイズの言葉に自分ではあまり自覚が無いのか自信なさげに返事をする。
「ご安心ください。グレイはかなり良くなってますわ」
話を聞いていたアリシアがグレイの上達ぶりを認める。
「なら良かった。だけど、全然アリシアに勝てる気がしないや・・・」
「まぁ、模擬戦ですからね。そのようなものでしょう」
グレイは実戦でこそ実力を発揮するタイプということをアリシアは良く理解していた。
そうでなければ、数々の強敵に勝てる訳など無いのだ。
「そうなんだ?」
グレイはアリシアの言いたいことが良く分かってはいなかったがそういうものなのだと納得するようにする。
「そう言えば、明日って何回戦うのかな?」
グレイはふと、明日の試合の事が気になり口に出す。
「どうでしょうね。ユイ先生がどのように考えているかですが・・・」
アリシアが柔軟体操を終え、椅子に座りながら顎に手を当て考える。
「『S組』の人数は全部で19人。私《わたくし》とエルリックさん、そしてセリーは予選には参加しませんので、残り16人。その中から2人の【魔法武闘会】参加者を決めるので8人ずつに分かれてトーナメントをするはずですわ。とすると、3回戦うことになるのではないでしょうか」
「・・・なるほど。流石アリシア。というか、『S組』って19人だったんだ・・・全然知らなかった」
グレイはアリシアの考えを聞き、まず最初に自分のクラスの人数について驚く。
正直、グレイは自分のクラスの人数を気にしたことは無かったというのもあるが、結構休んでいたので余り把握できても居なかった。
(前のクラスに居た時よりも広く感じるのはそういう訳だったのか・・・)
グレイは妙に納得した。
以前のクラスの人数に比べると『S組』の人数は2~3倍少ないのだ。
クラスの部屋の大きさが変わらないので広く感じるのも頷ける。
「あれ?エルの事は手紙で知ってたけどセリーも予選に出ないんだ?」
「はい。先週体調不良でお休みしていたので、今回は出ないと言ってましたわ。今日も休むと言ってましたし、まだ本調子では無いのでしょうね」
「そうなんだ。体調が良くなったのなら良かった」
(なるほど。それで、今日もアリシアだけが貴族女子寮から出て来たんだな)
外では色んな生徒たちの目もあるためセリーがいないことを聞けなかったが、気にはなっていたため体調が治っているのであれば良かったとグレイは思った。
グレイはようやく、明日の試合のことに考えを巡らせる。
「そうか・・・3試合か・・・如何に手の内を見せずに勝ち上がるかが鍵だな」
グレイの戦い方はシンプルである。
近寄って直接攻撃を加える。ただそれだけだ。
【身体強化魔法】を少しだけ使えるようになったとはいえ、あくまでも直接攻撃を与えるための補助のようなものだ。
グレイの戦い方の幅が劇的に上がるわけではない。
そのため、グレイが直接攻撃だけということを如何に悟られないようにするかが重要である。
「そうですわね。・・・とはいえ、先日のゾルゲさんとの戦いはクラスメイト全員に見られておりますしグレイが遠距離攻撃を苦手としていることを予想している者もいるかもしれませんわね」
アリシアがグレイの考えに同意しつつ、懸念事項を告げる。
「あ~。そうかも。まぁ、仕方ないか・・・やれるだけのことをやるしかないね」
グレイはアリシアのもっともな言葉を聞いて深く考えるのをやめることにした。
一種の開き直りである。
アリシアはグレイの言葉を聞くと、椅子から立ち上がり傍に寄ると
「私《わたくし》はグレイなら予選を勝ち抜けるということを信じておりますわ。だから、頑張ってくださいね」
アリシアがグレイに向けて笑顔でエールを送る。
(・・・綺麗だ)
グレイはアリシアの笑顔を見て思わず見惚れる。
「グレイ?」
アリシアが急に固まったグレイを心配して声を掛ける。
グレイは我に返ると、
「あ、いや、何でもない。ありがとう。頑張るよ」
(人事は尽くした。後は、やるだけだ)
グレイは覚悟を決め、清々しく答えた。
「はい。ありがとうございました!」
アリシアの言葉に頭を下げながら礼を言うグレイ。
模擬戦の際にはグレイは丁寧な言葉を話すようにしている。
教えを乞うている側だから当然と考えているようだ。
『大分良くなったな。グレイ。【身体強化魔法】も実戦で使える位にはなってきたんじゃないか?』
グレイとアリシアが柔軟体操をして体を解しているのを見ながらイズが感想を述べる。
「そうかな?それなら良いのだけど・・・」
グレイはイズの言葉に自分ではあまり自覚が無いのか自信なさげに返事をする。
「ご安心ください。グレイはかなり良くなってますわ」
話を聞いていたアリシアがグレイの上達ぶりを認める。
「なら良かった。だけど、全然アリシアに勝てる気がしないや・・・」
「まぁ、模擬戦ですからね。そのようなものでしょう」
グレイは実戦でこそ実力を発揮するタイプということをアリシアは良く理解していた。
そうでなければ、数々の強敵に勝てる訳など無いのだ。
「そうなんだ?」
グレイはアリシアの言いたいことが良く分かってはいなかったがそういうものなのだと納得するようにする。
「そう言えば、明日って何回戦うのかな?」
グレイはふと、明日の試合の事が気になり口に出す。
「どうでしょうね。ユイ先生がどのように考えているかですが・・・」
アリシアが柔軟体操を終え、椅子に座りながら顎に手を当て考える。
「『S組』の人数は全部で19人。私《わたくし》とエルリックさん、そしてセリーは予選には参加しませんので、残り16人。その中から2人の【魔法武闘会】参加者を決めるので8人ずつに分かれてトーナメントをするはずですわ。とすると、3回戦うことになるのではないでしょうか」
「・・・なるほど。流石アリシア。というか、『S組』って19人だったんだ・・・全然知らなかった」
グレイはアリシアの考えを聞き、まず最初に自分のクラスの人数について驚く。
正直、グレイは自分のクラスの人数を気にしたことは無かったというのもあるが、結構休んでいたので余り把握できても居なかった。
(前のクラスに居た時よりも広く感じるのはそういう訳だったのか・・・)
グレイは妙に納得した。
以前のクラスの人数に比べると『S組』の人数は2~3倍少ないのだ。
クラスの部屋の大きさが変わらないので広く感じるのも頷ける。
「あれ?エルの事は手紙で知ってたけどセリーも予選に出ないんだ?」
「はい。先週体調不良でお休みしていたので、今回は出ないと言ってましたわ。今日も休むと言ってましたし、まだ本調子では無いのでしょうね」
「そうなんだ。体調が良くなったのなら良かった」
(なるほど。それで、今日もアリシアだけが貴族女子寮から出て来たんだな)
外では色んな生徒たちの目もあるためセリーがいないことを聞けなかったが、気にはなっていたため体調が治っているのであれば良かったとグレイは思った。
グレイはようやく、明日の試合のことに考えを巡らせる。
「そうか・・・3試合か・・・如何に手の内を見せずに勝ち上がるかが鍵だな」
グレイの戦い方はシンプルである。
近寄って直接攻撃を加える。ただそれだけだ。
【身体強化魔法】を少しだけ使えるようになったとはいえ、あくまでも直接攻撃を与えるための補助のようなものだ。
グレイの戦い方の幅が劇的に上がるわけではない。
そのため、グレイが直接攻撃だけということを如何に悟られないようにするかが重要である。
「そうですわね。・・・とはいえ、先日のゾルゲさんとの戦いはクラスメイト全員に見られておりますしグレイが遠距離攻撃を苦手としていることを予想している者もいるかもしれませんわね」
アリシアがグレイの考えに同意しつつ、懸念事項を告げる。
「あ~。そうかも。まぁ、仕方ないか・・・やれるだけのことをやるしかないね」
グレイはアリシアのもっともな言葉を聞いて深く考えるのをやめることにした。
一種の開き直りである。
アリシアはグレイの言葉を聞くと、椅子から立ち上がり傍に寄ると
「私《わたくし》はグレイなら予選を勝ち抜けるということを信じておりますわ。だから、頑張ってくださいね」
アリシアがグレイに向けて笑顔でエールを送る。
(・・・綺麗だ)
グレイはアリシアの笑顔を見て思わず見惚れる。
「グレイ?」
アリシアが急に固まったグレイを心配して声を掛ける。
グレイは我に返ると、
「あ、いや、何でもない。ありがとう。頑張るよ」
(人事は尽くした。後は、やるだけだ)
グレイは覚悟を決め、清々しく答えた。
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