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第210話
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(ゾルム様もアリシアも優し過ぎる。感謝しかないな)
グレイはソファに座った後、ゾルムも寝坊の事を大した事ないように不問にしてくれた事に感謝する。
すると、いつの間にか淹れたのかムスターが紅茶をアリシア達の前に置く。
それを見たゾルムが話を始めた。
「紅茶は話の途中でも遠慮無く飲んでくれて良いからね。・・・さて、まず何から話した方が良いか・・・」
ゾルムがまず最初に呟いた後、
「まずは、最も大きな話をしよう」
と前置きをした後、グレイを見る。
グレイはゾルムに目を向けられ、自然と体が強張るのを自覚する。
するとその様子を感じとったゾルムが笑みを浮かべると、
「ははは、そんなに畏まらなくていいぞ」
「はい・・・」
グレイはゾルムに言われるがまま、緊張を解こうとする。
「グレイ君、実はな・・・『国王様』が君に会いたがっているのだが会ってくれないだろうか?」
ゾルムがしれっととんでもない事を言い出した。
「・・・・・・申し訳ございません。今何と仰ったのでしょうか?」
グレイは余りの内容に聞き間違いかと思い、再度尋ねる。
(・・・今、『国王様』がどうとか言ってなかったかな?・・・聞き間違いだよね)
グレイは自身の心音が早くなるのを感じる。
(嫌・・・聞き間違いであってくれ!)
だが、グレイの願いは呆気なく破れる。
「『国王様』に会ってくれないか?」
ゾルムは嫌な顔をせず、はっきりとグレイに告げた。
「・・・・・・はい?」
もはや訳が分からない。
グレイの頭は真っ白になった。
「お父様、いきなりの言葉にグレイが困ってますわ。事情も併せてお話しくださいませんか?」
その様子を見かねたアリシアが助け舟を出す。
ゾルムはアリシアの言葉を聞いて頷くと、
「それもそうだな。すまなかった。では、事情を説明しよう」
ゾルムがそう言ってから語った内容を纏めると以下のような感じだった。
ゾルムは王都に赴き、ナガリアとの戦いが勃発したことと結末についての説明を国王に行った。
話の流れで一番の功労者が平民であることを伝えると興味を持った国王が詳細を尋ねてきた。
ゾルムはグレイと言う人物についての話をし、更には今回の時とは別に娘のアリシアの命を救ってくれた人物であることも添えで話した。
すると国王は一度グレイに会ってみたいと言うことになったという。
「・・・・・・」
事情を聞いたグレイは何も言えなくなってしまった。
(嘘だろ・・・この国の王様が俺なんかに会いたいだなんて・・・)
グレイの頭の中は混乱しか無かった。
「安心してくださいグレイ」
何も言えないでいるアリシアがグレイに話しかける。
グレイはアリシアがかわりに断ってくれると思い期待しながらアリシアの方に顔を向ける。
「私《わたくし》も付き添いますわ」
しかし、アリシアの口から出た言葉はグレイが期待したものとは違うものであった。
「お父様も御一緒ですわよね?」
アリシアは続いてゾルムに確認をとると、
「もちろんだ。グレイ君だけ行かせるなんて無責任な事はしないさ」
ゾルムは大きく頷く。
(・・・えっと、、、これは断れないな・・・)
ゾルムやアリシアにこう言われたらグレイには拒否するなどという選択肢は無くなっていた。・・・もとから無かったのではあるが。
「御二方とも御心遣いありがとうございます」
グレイはゾルムとアリシアに向かって頭を下げる。
「「気にするな(しないで良いですわ)」」
ゾルムとアリシアの言葉を受けて顔を上げたグレイは尋ねる。
「国王様とお会いするのはいつ頃でしょうか?もし可能でしたら週末が良いのですが・・・」
「実はまだ決まっていないのだ。国王様も忙しい方だからな。これから調整することになる。グレイ君の希望通りに行くかは分からないが出来る限り希望に添えるようにしてみよう。なぁに、平日であっても魔法学園は公休扱いになるから心配しなくて良い」
「はい。よろしくお願い致します」
「分かった。アリシアを通してまた連絡する。アリシアよ、よろしく頼む」
ゾルムはグレイが承諾したことにほっとしたように頷きながらそう言った後、アリシアに話し掛ける。
「畏まりましたわ。ご連絡お待ちしております」
アリシアは嬉しそうに呟いた。
その後語られた内容は細かいものが多かった。
中でも特筆すべき点はグレイが頼んでいた褒美を貰ったことだろう。
ゾルムはしっかりとした筒に入れられたものをグレイに渡し、中を見たグレイは喜んだ。
イズが興味を持った温泉の場所を記した地図である。
地図自体もグレイが迷宮後にひょんなことから入手していたものとは異なりかなり正確なものであった。
国王との謁見の事を聞いてから反応が悪くなっていたグレイではあったがこの時だけはとても喜んだのであった。
もちろん、ゾルムやアリシア、更にはムスターもグレイのこの様子に笑みを浮かべていた。
グレイはソファに座った後、ゾルムも寝坊の事を大した事ないように不問にしてくれた事に感謝する。
すると、いつの間にか淹れたのかムスターが紅茶をアリシア達の前に置く。
それを見たゾルムが話を始めた。
「紅茶は話の途中でも遠慮無く飲んでくれて良いからね。・・・さて、まず何から話した方が良いか・・・」
ゾルムがまず最初に呟いた後、
「まずは、最も大きな話をしよう」
と前置きをした後、グレイを見る。
グレイはゾルムに目を向けられ、自然と体が強張るのを自覚する。
するとその様子を感じとったゾルムが笑みを浮かべると、
「ははは、そんなに畏まらなくていいぞ」
「はい・・・」
グレイはゾルムに言われるがまま、緊張を解こうとする。
「グレイ君、実はな・・・『国王様』が君に会いたがっているのだが会ってくれないだろうか?」
ゾルムがしれっととんでもない事を言い出した。
「・・・・・・申し訳ございません。今何と仰ったのでしょうか?」
グレイは余りの内容に聞き間違いかと思い、再度尋ねる。
(・・・今、『国王様』がどうとか言ってなかったかな?・・・聞き間違いだよね)
グレイは自身の心音が早くなるのを感じる。
(嫌・・・聞き間違いであってくれ!)
だが、グレイの願いは呆気なく破れる。
「『国王様』に会ってくれないか?」
ゾルムは嫌な顔をせず、はっきりとグレイに告げた。
「・・・・・・はい?」
もはや訳が分からない。
グレイの頭は真っ白になった。
「お父様、いきなりの言葉にグレイが困ってますわ。事情も併せてお話しくださいませんか?」
その様子を見かねたアリシアが助け舟を出す。
ゾルムはアリシアの言葉を聞いて頷くと、
「それもそうだな。すまなかった。では、事情を説明しよう」
ゾルムがそう言ってから語った内容を纏めると以下のような感じだった。
ゾルムは王都に赴き、ナガリアとの戦いが勃発したことと結末についての説明を国王に行った。
話の流れで一番の功労者が平民であることを伝えると興味を持った国王が詳細を尋ねてきた。
ゾルムはグレイと言う人物についての話をし、更には今回の時とは別に娘のアリシアの命を救ってくれた人物であることも添えで話した。
すると国王は一度グレイに会ってみたいと言うことになったという。
「・・・・・・」
事情を聞いたグレイは何も言えなくなってしまった。
(嘘だろ・・・この国の王様が俺なんかに会いたいだなんて・・・)
グレイの頭の中は混乱しか無かった。
「安心してくださいグレイ」
何も言えないでいるアリシアがグレイに話しかける。
グレイはアリシアがかわりに断ってくれると思い期待しながらアリシアの方に顔を向ける。
「私《わたくし》も付き添いますわ」
しかし、アリシアの口から出た言葉はグレイが期待したものとは違うものであった。
「お父様も御一緒ですわよね?」
アリシアは続いてゾルムに確認をとると、
「もちろんだ。グレイ君だけ行かせるなんて無責任な事はしないさ」
ゾルムは大きく頷く。
(・・・えっと、、、これは断れないな・・・)
ゾルムやアリシアにこう言われたらグレイには拒否するなどという選択肢は無くなっていた。・・・もとから無かったのではあるが。
「御二方とも御心遣いありがとうございます」
グレイはゾルムとアリシアに向かって頭を下げる。
「「気にするな(しないで良いですわ)」」
ゾルムとアリシアの言葉を受けて顔を上げたグレイは尋ねる。
「国王様とお会いするのはいつ頃でしょうか?もし可能でしたら週末が良いのですが・・・」
「実はまだ決まっていないのだ。国王様も忙しい方だからな。これから調整することになる。グレイ君の希望通りに行くかは分からないが出来る限り希望に添えるようにしてみよう。なぁに、平日であっても魔法学園は公休扱いになるから心配しなくて良い」
「はい。よろしくお願い致します」
「分かった。アリシアを通してまた連絡する。アリシアよ、よろしく頼む」
ゾルムはグレイが承諾したことにほっとしたように頷きながらそう言った後、アリシアに話し掛ける。
「畏まりましたわ。ご連絡お待ちしております」
アリシアは嬉しそうに呟いた。
その後語られた内容は細かいものが多かった。
中でも特筆すべき点はグレイが頼んでいた褒美を貰ったことだろう。
ゾルムはしっかりとした筒に入れられたものをグレイに渡し、中を見たグレイは喜んだ。
イズが興味を持った温泉の場所を記した地図である。
地図自体もグレイが迷宮後にひょんなことから入手していたものとは異なりかなり正確なものであった。
国王との謁見の事を聞いてから反応が悪くなっていたグレイではあったがこの時だけはとても喜んだのであった。
もちろん、ゾルムやアリシア、更にはムスターもグレイのこの様子に笑みを浮かべていた。
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