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第206話
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昼食を食べ始めてからの時間はあっという間に過ぎた。
基本的にゾルム、ウェンディ、アリシア、グレイの四人で世間話をし、ソルはイズの隣にいるのでイズにご飯を食べさせたりすることに夢中になっていた。
そしてリリィはソルの様子を羨ましそうに見ており、たまに声を掛けていた。
イズはといえば、ソルにされるがままになっているが嫌そうな表情では無さそうなので問題ないだろう。
今は昼食が終わり、食後のティータイムである。
ふぅ
グレイは一つ深呼吸をする。
そして、食事中にウェンディに言われた言葉を思い出していた。
(ウェンディ様の「それでアリシアちゃんはグレイ君とはどこまでいったのかしら?」には思わず食事を吹き出しそうになってしまった)
ウェンディにとっては世間話の内の一つだったのだろう。
アリシアがグレイを呼び捨てるようになっていたことから仲が深まったのだと判断したようだ。
その問に対してはアリシアが淡々と、
「グレイが『付き人』になってから時も過ぎましたから出会った時よりもお互いに思ったことを言い合えるようになってきただけですわ」
と答えていた。
それを聞いたウェンディは、
「それは良かったわ」
と意味深に笑ったのだ。
まるで、『アリシアちゃんの気持ちはお見通しよ』とでも言いたそうに・・・
ちなみにグレイはアリシアがウェンディに答える時に表面上では何とも無いようにしていたがちょうどウェンディからはテーブルで隠れる位置にあった手が強く握られており、動揺していたことに気づいていた。
今はウェンディ、リリィ、ソルの3人は食堂には居なくなっていた。
イズと戯れに中庭に向かったのだ。
イズもずいぶんと好かれたものである。
「済まないが、朝の話の続きをしよう」
アリシア、グレイ同様、紅茶を飲んでいたゾルムがそう話しかける。
2人はゾルムの言葉に頷く。
「お父様、場所を移動しますか?」
アリシアがゾルムにそう尋ねた。
これは、『内密な話なのか?』と言うことを確認する意味もあるのだろう。
食堂に比べてゾルムの部屋はさらに防音対策に優れている。
ゾルムは一瞬沈黙し、考えた後、
「アリシアの言う通りだな。場所を移動しよう。連続で話ばかりというのも疲れただろうから15時に私の部屋に集合としよう」
「「畏まりました」」
時刻は14時を少し過ぎた頃なので、あと小1時間はある。リフレッシュするのにはちょうど良いだろう。
アリシアとグレイはゾルムに断りを入れてから食堂を出てそれぞれの部屋のある方へ共に向かう。
「あ、グレイ、見てください。イズさん楽しそうにしてますわ」
食堂を出てすぐにアリシアが窓から中庭を見ながらグレイに声を掛ける。
グレイはアリシアに言われて中庭を見るとイズ達が楽しそうに遊んでいるところであった。
「本当ですね。楽しそうです」
執事やメイドがどこにいてもおかしくないのでグレイは敬語で答える。
そして、イズ達がやっている遊びを見て、
「・・・というか、あのような遊びにつきあって貰って大丈夫ですかね・・・」
少し心配になった。
午前中にどのようなことをしていたかは分からないが今やっているのはリリィやソルが小枝を投げてイズが取ってくるという遊びだった。
「・・・確かにグレイの言う通りですね。グレイに言われるまで私《わたくし》は微笑ましい光景だと思ってしまいましたがイズさんの正体を考えると判断に迷いますわね・・・」
グレイの言葉にアリシアは困った表情になる。
見た目こそ可愛い小鳥だがイズはあの『とこしえの迷宮』の主だった者なのだ。
それを考えると今やっている遊びは何とも恐れ多い気がしてくる。
「ま、まあ、後でイズにそれと無く探ってみますよ」
「そうですわね。よろしくお願いしますわ。もし嫌そうでしたらリリィとソルにははっきりと止めるように伝えますので」
「畏まりました」
グレイが了承の意を示し、この話題は終わる。
(ちょうど良い機会ですわ)
アリシアは先程気になったことをグレイに尋ねることにした。
「ねぇ、グレイ。先程の会話の中でのリンダさんの話で、ムスターさんが同席すると分かるとグレイが明らかに安堵したように見受けられたのですがどういう考えからですか?」
「っ!?」
アリシアの言葉にグレイが目に見えて動揺する。
(まいったな・・・俺の話であればアリシアに対してならいくらでも話すんだけど、他の人になると簡単に話す訳にはいかない・・・)
グレイがどう答えるかを悩んでいるとそれを見たアリシアが、
「・・・答えなくて良いですわ。グレイの反応で何となく理解しました。グレイの判断では話せないことなのでしょう?」
グレイはその言葉に黙って頷く。
(ムスターさんは色々と謎がある面も多いですからきっとグレイが安心するに足る能力があるのでしょう。恐らく、普段私《わたくし》たちには使わない能力でグレイに対して使ったことがあり、感の鋭いグレイが気付いたのでしょう。きっと初めてムスターさんとグレイが会った時ですわね)
アリシアはグレイの様子からかなり正確に把握していた。
恐るべき推理力である。
そうこうしている間に部屋に到着する。
「では、15時の10分前に集合してから参りましょう」
「畏まりました」
「では、また後で」
こうしてグレイとアリシアは少しの間別行動をすることになった。
基本的にゾルム、ウェンディ、アリシア、グレイの四人で世間話をし、ソルはイズの隣にいるのでイズにご飯を食べさせたりすることに夢中になっていた。
そしてリリィはソルの様子を羨ましそうに見ており、たまに声を掛けていた。
イズはといえば、ソルにされるがままになっているが嫌そうな表情では無さそうなので問題ないだろう。
今は昼食が終わり、食後のティータイムである。
ふぅ
グレイは一つ深呼吸をする。
そして、食事中にウェンディに言われた言葉を思い出していた。
(ウェンディ様の「それでアリシアちゃんはグレイ君とはどこまでいったのかしら?」には思わず食事を吹き出しそうになってしまった)
ウェンディにとっては世間話の内の一つだったのだろう。
アリシアがグレイを呼び捨てるようになっていたことから仲が深まったのだと判断したようだ。
その問に対してはアリシアが淡々と、
「グレイが『付き人』になってから時も過ぎましたから出会った時よりもお互いに思ったことを言い合えるようになってきただけですわ」
と答えていた。
それを聞いたウェンディは、
「それは良かったわ」
と意味深に笑ったのだ。
まるで、『アリシアちゃんの気持ちはお見通しよ』とでも言いたそうに・・・
ちなみにグレイはアリシアがウェンディに答える時に表面上では何とも無いようにしていたがちょうどウェンディからはテーブルで隠れる位置にあった手が強く握られており、動揺していたことに気づいていた。
今はウェンディ、リリィ、ソルの3人は食堂には居なくなっていた。
イズと戯れに中庭に向かったのだ。
イズもずいぶんと好かれたものである。
「済まないが、朝の話の続きをしよう」
アリシア、グレイ同様、紅茶を飲んでいたゾルムがそう話しかける。
2人はゾルムの言葉に頷く。
「お父様、場所を移動しますか?」
アリシアがゾルムにそう尋ねた。
これは、『内密な話なのか?』と言うことを確認する意味もあるのだろう。
食堂に比べてゾルムの部屋はさらに防音対策に優れている。
ゾルムは一瞬沈黙し、考えた後、
「アリシアの言う通りだな。場所を移動しよう。連続で話ばかりというのも疲れただろうから15時に私の部屋に集合としよう」
「「畏まりました」」
時刻は14時を少し過ぎた頃なので、あと小1時間はある。リフレッシュするのにはちょうど良いだろう。
アリシアとグレイはゾルムに断りを入れてから食堂を出てそれぞれの部屋のある方へ共に向かう。
「あ、グレイ、見てください。イズさん楽しそうにしてますわ」
食堂を出てすぐにアリシアが窓から中庭を見ながらグレイに声を掛ける。
グレイはアリシアに言われて中庭を見るとイズ達が楽しそうに遊んでいるところであった。
「本当ですね。楽しそうです」
執事やメイドがどこにいてもおかしくないのでグレイは敬語で答える。
そして、イズ達がやっている遊びを見て、
「・・・というか、あのような遊びにつきあって貰って大丈夫ですかね・・・」
少し心配になった。
午前中にどのようなことをしていたかは分からないが今やっているのはリリィやソルが小枝を投げてイズが取ってくるという遊びだった。
「・・・確かにグレイの言う通りですね。グレイに言われるまで私《わたくし》は微笑ましい光景だと思ってしまいましたがイズさんの正体を考えると判断に迷いますわね・・・」
グレイの言葉にアリシアは困った表情になる。
見た目こそ可愛い小鳥だがイズはあの『とこしえの迷宮』の主だった者なのだ。
それを考えると今やっている遊びは何とも恐れ多い気がしてくる。
「ま、まあ、後でイズにそれと無く探ってみますよ」
「そうですわね。よろしくお願いしますわ。もし嫌そうでしたらリリィとソルにははっきりと止めるように伝えますので」
「畏まりました」
グレイが了承の意を示し、この話題は終わる。
(ちょうど良い機会ですわ)
アリシアは先程気になったことをグレイに尋ねることにした。
「ねぇ、グレイ。先程の会話の中でのリンダさんの話で、ムスターさんが同席すると分かるとグレイが明らかに安堵したように見受けられたのですがどういう考えからですか?」
「っ!?」
アリシアの言葉にグレイが目に見えて動揺する。
(まいったな・・・俺の話であればアリシアに対してならいくらでも話すんだけど、他の人になると簡単に話す訳にはいかない・・・)
グレイがどう答えるかを悩んでいるとそれを見たアリシアが、
「・・・答えなくて良いですわ。グレイの反応で何となく理解しました。グレイの判断では話せないことなのでしょう?」
グレイはその言葉に黙って頷く。
(ムスターさんは色々と謎がある面も多いですからきっとグレイが安心するに足る能力があるのでしょう。恐らく、普段私《わたくし》たちには使わない能力でグレイに対して使ったことがあり、感の鋭いグレイが気付いたのでしょう。きっと初めてムスターさんとグレイが会った時ですわね)
アリシアはグレイの様子からかなり正確に把握していた。
恐るべき推理力である。
そうこうしている間に部屋に到着する。
「では、15時の10分前に集合してから参りましょう」
「畏まりました」
「では、また後で」
こうしてグレイとアリシアは少しの間別行動をすることになった。
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