他人の寿命が視える俺は理を捻じ曲げる。学園一の美令嬢を助けたら凄く優遇されることに

第183話

それからのグレイの行動は早朝に自主練習、始業時間から昼休みまで座学、昼休み後から終業時間までは実践訓練という行動を繰り返していた。

「【身体強化魔法】もだいぶ上達されましたわね！」

金曜日の午後の実戦訓練が一段落した時にアリシアがグレイにそう声を掛ける。

「ありがとう。でも、そんなに違うかな？」

グレイは頭を掻きながらそう答える。

「それはもう！3日前と比べても格段と良くなってきてますわ。ねぇ、イズさん」

『ああ。実戦の中でも使い物になるくらいにはなってきているぞ。少ない魔力を効率的に使えてきているしな』

アリシアに続いてイズもグレイの成長を認めてくれる。

「それなら良かった。アリシアとイズのお陰だよ。ありがとう」

グレイは二人の言葉を素直に聞き、頭を下げる。

アリシアもイズも気にするなとばかりに首を振る。

「早く次の段階に進みたいけど、まだ、アリシアのように稼働に関わる部位の身体強化は出来ないんだよね」

グレイは自分の次の課題を吐露する。

ようやく【身体強化魔法】を使えてきたとは言え、グレイのそれはアリシアと比べるとまだまだであった。

アリシアの場合は、踏み込む足や腰や腕や拳など稼働に関わるそれぞれの部位に対して【身体強化魔法】を使えているがグレイの場合は拳なら拳、足なら足と一箇所に対してしか【身体強化魔法】を使えていない。

グレイとしては【身体強化魔法】を使える部位を増やしたいと考えていたが一箇所の強化に比べ、二箇所の強化は格段に難易度が高く正直なところ手こずっていた。

「焦る必要はございませんわ。まずは、一箇所の【身体強化魔法】を完璧にすることを来週の選抜試験までの目標にしましょう」

『アリシアの言う通りだ。急がば回れと言うだろう？まずは一つのことに集中することで結果的に上手くいくだろうさ』

「そうか、そうだよな。まずは一箇所の【身体強化魔法】を上手く出来るようにしよう」

グレイは二人の言葉を聞き入れ、欲をかかないようにする。

「というか、イズってば本当にことわざにはまっているな」

少し苦笑しながらグレイが呟く。

イズは最近、ことわざにはまっていた。

「ふふふ、そうですわね」

アリシアがグレイの言葉に笑顔で同意する。

『ああ。何だか楽しくてな。ついつい覚えてしまうのだ』

イズが嬉しそうに呟く。

（何にしてもイズが興味を持てることが見つかって良かった）

グレイは嬉しそうなイブの様子を見て内心で安堵する。

グレイは風呂好きのイズにシャワーだけで温泉巡りはおろか風呂に入らせることすら出来ずにいたため申し訳なく思っていた。

せめて他に熱中出来るものがあればと思っていたので良い傾向だと感じていたのだった。