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第173話

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「・・・」

グレイは、ついこの間のことではあるが、数年も昔とも思える出来事を振り返る。

(マギーとの一戦。あれは初めてアリシアに会った日だったな・・・)

とにかく、あの時は必死だった。

アリシアの寿命が残り僅かだと分かり、ひたすら走り回って何とか救うことができたことを我が事のように覚えている。

(そして、ゾルゲとの一戦。あれはS組になってからすぐにアリシアの付き人であることを気に入らない俺に対して決闘を挑んで来たんだった)

あの時は、平静を装ってはいたが内心では難癖をつけられたことに心の底から怒っていた。

(最後に執事との戦い。あの時ほど怒り狂ったことは無かったな)

一秒でも駆けつけるのが遅ければアリシアが殺されていたのだ。

相手との力量の差など全く考える気持すら無く、いつになく怒り狂っていた。

ここまで思い返したグレイは気がつく。

そう言えば必死であったマギーとの戦いのときも怒っていたな・・・と。

(・・・そうか。俺が戦う時はいつだって『アリシアのため』であったり『怒っていた』時であったり、『逃げたら取り返しのつかない』時だったんだな)

グレイはその結論に至った時、自然と目を開けていた。

「・・・どうやら、何かを悟ったようですわね」

グレイが目を開けた時にはアリシアが静かに話しかけてくる。

「ああ。アリシアが言った通りだ。真面目にやれと言われた訳が良くわかったよ」

「それは良かったですわ」

グレイは立ち上がりながら、ふと視界に入った訓練室にある時計を見ると大分時間が経っていたことが分かる。

「待たせてごめん」

そのため、グレイはアリシアに素直に謝った。

「気にしなくていいですわ。私《わたくし》は
私《わたくし》で自主練習が出来ましたし」

アリシアはそう言いながら柔らかく笑う。

「そっか、それなら良かった」

自主練?全然気が付かなかったと思いながらも返事をするグレイ。

「・・・それでどうされますか?本日のところはこれで終わりにしておきますか?」

アリシアが時計を見ながらグレイに尋ねる。

もう午後の授業時間が終わる頃合いではあった。

グレイはアリシアの言葉に首を振ると、

「ごめん。もう一回だけチャンスをくれないかな?」

再戦を申し込む。

「ふふふ。勿論ですわ。もう一回とは言わず、何回でも」

アリシアはグレイの言葉が嬉しいのかにっこりと笑いながら了承した。

「ありがとう」

グレイはアリシアに礼を言うと、早速とばかりに距離をとる。

先程と同じくらい距離を取ったグレイは再び構える。

アリシアも先程同様自然体になる。

「・・・行くぞ」

「いつでもどうぞ」

そして、グレイとアリシアの初めての戦いが始まったのであった。
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