110 / 362
第109話
しおりを挟む
「こんな場所があったなんて・・・」
アリシアに案内されたのは魔法学園の中にある豪邸であった。
グレイは初めて来たエリアであったため、驚きながらも思わず呟く。
流石にバルム家の屋敷と比べると見劣りはするが、グレイにとっては充分豪邸である。
「こちらは学園長先生のご自宅ですわ」
グレイの驚く様子を見ながらここが誰の家かを説明するアリシア。
「確かに学園長先生であれば、魔法学園側に説明するのに最適な人物ですね」
アリシアに言われてみて、日曜日で校舎内にいないのだったら自宅に行けば良いと言うことに思い至るグレイ。
魔法学園の長である学園長に話を通せるのであれば一番話しが早いのは間違いない。
少なくともグレイは学園長先生の家を知らないのでこの手段は取りようも無かった。
アリシアならではの行動であろう。
「グレイさん、話の内容は私《わたくし》にお任せくださいませんか?」
前を歩くアリシアがグレイに確認を取る。
「もちろん構いません。むしろお願いしたいくらいです」
グレイは正直に答える。
(自分が交渉事に向いているなんて思ったこと無いしな)
「ありがとうございます。このようなことでグレイさんから受けた恩を返せるとは思ってはおりませんが少しでもお役に立てるなら幸いですわ」
「恩なんて気にしなくていいよ」
グレイが本気で思っていることをぽつりと呟く。
すると、
「そういう訳には参りません!」
アリシアがグレイの方に振り返りながら珍しく強い口調で言う。
グレイの左肩にいるイズと共に驚きながらもアリシアの目を見たグレイは、
(これは、何を言ってもだめなやつだ)
と理解したので、
「ありがとう。恩とか関係なしにこれからもアリシアさんには色々協力して欲しい。よろしく頼むよ」
「うふふ。もちろんですわ。お任せください!」
と、アリシアは嬉しそうにする。
「あ、そろそろイズさんは隠れて頂いてもよろしいでしょうか?」
学園長の屋敷の門に近づいてきたので、イズに申し訳無さそうにお願いするアリシア。
『分かった。・・・今日は隠れてばかりだな』
イズはそう返事をすると、グレイの服のポケットに隠れる。
「悪いな、イズ」
グレイはイズが隠れたポケットの上からそっと撫でた。
「では、行って参りますわ」
アリシアはそう言うと、門番に近づき、
「日曜日に失礼いたします。学園長先生にお取次ぎください。私《わたくし》の名前はアリシア・エト・バルム。急ぎご相談があり、参りました」
「ば、バルム家のご令嬢ですか!?おい!すぐにお伺いを立ててこい」
アリシアに話しかけられた門番はもう一人の門番に指示を出す。
「わ、分かった!」
指示をされた方の門番は返事をするなり急いで屋敷の中に走って行った。
それからは早かった。
すぐに学園長からの許可を貰ってきた門番がグレイとアリシアを屋敷の入口まで案内し、屋敷の入口からは執事が応接室まで案内した。
中に入ったグレイとアリシアは既に応接室で待っていた笑顔の学園長に出迎えられた。
「ズー君!無事で良かった!!本当に良かった!!!」
学園長はまっさきにグレイのところに駆け寄り、グレイの右手を両手で手に取り無事な帰還を心より喜ぶ。
「ありがとうございます。学園長先生」
グレイはまさかここまで喜んで貰えると思わず、嬉しくなりながら礼を言う。
学園長はしばらくの間グレイの無事を喜んでから、はっとしたようにアリシアの方を向き、
「バルム様、ご挨拶もせずに申し訳ございませんでした」
と頭を下げる。
本来であれば3大貴族の長女であるアリシアを無視して平民と話しかけるなど言語道断である。
しかし、アリシアはにこにことしながら、
「お気になさらないでください。ですが、私《わたくし》以外の貴族相手でしたらお気をつけくださいね」
と一応、釘をさす。
(かなりの権力者である学園長先生が私《わたくし》を放置してグレイさんの無事を喜んでくださるなんて通常ではありえませんわ。それほど、グレイさんのことを認めているという証拠に他なりません。グレイさんが評価されていることが分かってとても良い気分ですわ)
アリシアは内心ではとても喜んでいた。
「ありがとうございます。肝に銘じます。さあ、バルム様、ズー君、こちらにお座りください」
学園長は目に見えて反省した後、アリシアの寛大な心遣いに礼を言うと、グレイとアリシアの二人をソファに座るように案内した。
アリシアに案内されたのは魔法学園の中にある豪邸であった。
グレイは初めて来たエリアであったため、驚きながらも思わず呟く。
流石にバルム家の屋敷と比べると見劣りはするが、グレイにとっては充分豪邸である。
「こちらは学園長先生のご自宅ですわ」
グレイの驚く様子を見ながらここが誰の家かを説明するアリシア。
「確かに学園長先生であれば、魔法学園側に説明するのに最適な人物ですね」
アリシアに言われてみて、日曜日で校舎内にいないのだったら自宅に行けば良いと言うことに思い至るグレイ。
魔法学園の長である学園長に話を通せるのであれば一番話しが早いのは間違いない。
少なくともグレイは学園長先生の家を知らないのでこの手段は取りようも無かった。
アリシアならではの行動であろう。
「グレイさん、話の内容は私《わたくし》にお任せくださいませんか?」
前を歩くアリシアがグレイに確認を取る。
「もちろん構いません。むしろお願いしたいくらいです」
グレイは正直に答える。
(自分が交渉事に向いているなんて思ったこと無いしな)
「ありがとうございます。このようなことでグレイさんから受けた恩を返せるとは思ってはおりませんが少しでもお役に立てるなら幸いですわ」
「恩なんて気にしなくていいよ」
グレイが本気で思っていることをぽつりと呟く。
すると、
「そういう訳には参りません!」
アリシアがグレイの方に振り返りながら珍しく強い口調で言う。
グレイの左肩にいるイズと共に驚きながらもアリシアの目を見たグレイは、
(これは、何を言ってもだめなやつだ)
と理解したので、
「ありがとう。恩とか関係なしにこれからもアリシアさんには色々協力して欲しい。よろしく頼むよ」
「うふふ。もちろんですわ。お任せください!」
と、アリシアは嬉しそうにする。
「あ、そろそろイズさんは隠れて頂いてもよろしいでしょうか?」
学園長の屋敷の門に近づいてきたので、イズに申し訳無さそうにお願いするアリシア。
『分かった。・・・今日は隠れてばかりだな』
イズはそう返事をすると、グレイの服のポケットに隠れる。
「悪いな、イズ」
グレイはイズが隠れたポケットの上からそっと撫でた。
「では、行って参りますわ」
アリシアはそう言うと、門番に近づき、
「日曜日に失礼いたします。学園長先生にお取次ぎください。私《わたくし》の名前はアリシア・エト・バルム。急ぎご相談があり、参りました」
「ば、バルム家のご令嬢ですか!?おい!すぐにお伺いを立ててこい」
アリシアに話しかけられた門番はもう一人の門番に指示を出す。
「わ、分かった!」
指示をされた方の門番は返事をするなり急いで屋敷の中に走って行った。
それからは早かった。
すぐに学園長からの許可を貰ってきた門番がグレイとアリシアを屋敷の入口まで案内し、屋敷の入口からは執事が応接室まで案内した。
中に入ったグレイとアリシアは既に応接室で待っていた笑顔の学園長に出迎えられた。
「ズー君!無事で良かった!!本当に良かった!!!」
学園長はまっさきにグレイのところに駆け寄り、グレイの右手を両手で手に取り無事な帰還を心より喜ぶ。
「ありがとうございます。学園長先生」
グレイはまさかここまで喜んで貰えると思わず、嬉しくなりながら礼を言う。
学園長はしばらくの間グレイの無事を喜んでから、はっとしたようにアリシアの方を向き、
「バルム様、ご挨拶もせずに申し訳ございませんでした」
と頭を下げる。
本来であれば3大貴族の長女であるアリシアを無視して平民と話しかけるなど言語道断である。
しかし、アリシアはにこにことしながら、
「お気になさらないでください。ですが、私《わたくし》以外の貴族相手でしたらお気をつけくださいね」
と一応、釘をさす。
(かなりの権力者である学園長先生が私《わたくし》を放置してグレイさんの無事を喜んでくださるなんて通常ではありえませんわ。それほど、グレイさんのことを認めているという証拠に他なりません。グレイさんが評価されていることが分かってとても良い気分ですわ)
アリシアは内心ではとても喜んでいた。
「ありがとうございます。肝に銘じます。さあ、バルム様、ズー君、こちらにお座りください」
学園長は目に見えて反省した後、アリシアの寛大な心遣いに礼を言うと、グレイとアリシアの二人をソファに座るように案内した。
128
お気に入りに追加
1,446
あなたにおすすめの小説
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
とある婚約破棄の顛末
瀬織董李
ファンタジー
男爵令嬢に入れあげ生徒会の仕事を疎かにした挙げ句、婚約者の公爵令嬢に婚約破棄を告げた王太子。
あっさりと受け入れられて拍子抜けするが、それには理由があった。
まあ、なおざりにされたら心は離れるよね。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断
Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。
23歳の公爵家当主ジークヴァルト。
年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。
ただの女友達だと彼は言う。
だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。
彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。
また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。
エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。
覆す事は出来ない。
溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。
そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。
二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。
これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。
エルネスティーネは限界だった。
一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。
初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。
だから愛する男の前で死を選ぶ。
永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。
矛盾した想いを抱え彼女は今――――。
長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。
センシティブな所へ触れるかもしれません。
これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。
転生したら死にそうな孤児だった
佐々木鴻
ファンタジー
過去に四度生まれ変わり、そして五度目の人生に目覚めた少女はある日、生まれたばかりで捨てられたの赤子と出会う。
保護しますか? の選択肢に【はい】と【YES】しかない少女はその子を引き取り妹として育て始める。
やがて美しく育ったその子は、少女と強い因縁があった。
悲劇はありません。難しい人間関係や柵はめんどく(ゲフンゲフン)ありません。
世界は、意外と優しいのです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
病弱を演じていた性悪な姉は、仮病が原因で大変なことになってしまうようです
柚木ゆず
ファンタジー
優秀で性格の良い妹と比較されるのが嫌で、比較をされなくなる上に心配をしてもらえるようになるから。大嫌いな妹を、召し使いのように扱き使えるから。一日中ゴロゴロできて、なんでも好きな物を買ってもらえるから。
ファデアリア男爵家の長女ジュリアはそんな理由で仮病を使い、可哀想な令嬢を演じて理想的な毎日を過ごしていました。
ですが、そんな幸せな日常は――。これまで彼女が吐いてきた嘘によって、一変してしまうことになるのでした。
【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う
たくみ
ファンタジー
圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。
アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。
ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?
それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。
自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。
このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。
それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。
※小説家になろうさんで投稿始めました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる