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第97話
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「そろそろ良い時間だね」
グレイが時計を見ながら呟く。
結構な時間が経過していたようで待ち合わせの場所に向かうとちょうど良い位になっている。
「そうですわね・・・」
アリシアも時計を確認してハッとする。
(・・・せっかくのグレイさんとのデートでしたが仕方がありませんね)
今日、モリアスの町にグレイと来たからこそリンダやキャミーは救われた。
なので、その事自体は全くもって後悔など無いのだが、グレイと色々回れなかったという事実に関してだけはアリシアは心残りであった。
「あ、あのさ・・・」
アリシアが頭の中で少しだけもやもや考えているとグレイが言いづらそうに前置きをする。
「?どうされましたか?」
アリシアは不思議に思いながら返事をする。
「もし、アリシアさんさえ良ければまた今度この町に一緒に来ない?」
「!?」
アリシアはグレイの言葉に驚く。
(・・・驚きましたわ。私《わたくし》と同じことを思っていてくださった)
「はい。もちろんですわ。お誘いくださりとても嬉しいです!」
アリシアは溢れんばかりの笑顔でグレイに言ったのであった。
「あ、見えてきましたわ」
食事をした後、グレイはアリシアの後を付いていき、無事にモリアスの町の外まで来ていた。
そして御者との待ち合わせ場所のあたりまで来ると既に馬車は停止して待っていたので馬車を目印に歩いていく。
「リンダさんやキャミーちゃんはまだいらっしゃって無いのかもしれませんわね」
周囲に二人の姿が見えず、アリシアが呟く。
「既に馬車内で待っているってことはありませんか?」
グレイが外用の敬語でアリシアに尋ねる。
「ありえますね。私《わたくし》はそのようなことは気にしませんが普段であれば、バルム家の者よりも先に馬車内で待っている事は不敬にあたるためそのようなことは御者がさせないでしょうが今回は事前に事情をお伝えしておりますからね。なるべく人目を避ける意味でも馬車の中で待っていたほうが良いですから」
「そうなのですね。覚えておきます」
礼儀などには疎いグレイはアリシアの言葉を心の中でメモして今後の参考にする。
(少なくともバルム家の人たちであれば、状況に応じて礼儀を重んじずとも良い場合があるということだな)
「ふふ。グレイさんは真面目ですわね。付け加えますと、他の貴族の場合は殆どが礼儀を優先させますからお気をつけくださいね」
「・・・気をつけます。ちなみに礼儀を欠くとどうなりますか?」
「相手の貴族によって異なる場合が多いですが・・・グレイさんは今のところ平民ですので、最悪強制労働でしょうね・・・」
アリシアの言葉でグレイはびっくりする。
「・・・もしかして魔法学園でもそう言ったことはありえますか?」
不敬と言われてもおかしくない行動をいくつかしてしまっている気がしてならないグレイはついアリシアに聞いてしまう。
「ふふふ、もちろんですわ」
アリシアは少しだけ意地悪そうに答える。
「う・・・気をつけよう」
グレイは肩を落とす。
その様子を見たアリシアは、
「以前ならまだ分かりませんが今はバルム家の『付き人』ですからそこまで気にしなくて大丈夫ですわ。・・・気をつけてはいただきたいですけど」
(グレイさんは私《わたくし》のこととなると見境が無くなることがありますからね。一応言っておきませんと。まあ、私《わたくし》としてはとても嬉しいことではありますが)
「・・・肝に銘じます」
グレイは自分のせいでアリシアさんに迷惑がかかることになるということを理解し、逆に気をつけようと決意した。
グレイが時計を見ながら呟く。
結構な時間が経過していたようで待ち合わせの場所に向かうとちょうど良い位になっている。
「そうですわね・・・」
アリシアも時計を確認してハッとする。
(・・・せっかくのグレイさんとのデートでしたが仕方がありませんね)
今日、モリアスの町にグレイと来たからこそリンダやキャミーは救われた。
なので、その事自体は全くもって後悔など無いのだが、グレイと色々回れなかったという事実に関してだけはアリシアは心残りであった。
「あ、あのさ・・・」
アリシアが頭の中で少しだけもやもや考えているとグレイが言いづらそうに前置きをする。
「?どうされましたか?」
アリシアは不思議に思いながら返事をする。
「もし、アリシアさんさえ良ければまた今度この町に一緒に来ない?」
「!?」
アリシアはグレイの言葉に驚く。
(・・・驚きましたわ。私《わたくし》と同じことを思っていてくださった)
「はい。もちろんですわ。お誘いくださりとても嬉しいです!」
アリシアは溢れんばかりの笑顔でグレイに言ったのであった。
「あ、見えてきましたわ」
食事をした後、グレイはアリシアの後を付いていき、無事にモリアスの町の外まで来ていた。
そして御者との待ち合わせ場所のあたりまで来ると既に馬車は停止して待っていたので馬車を目印に歩いていく。
「リンダさんやキャミーちゃんはまだいらっしゃって無いのかもしれませんわね」
周囲に二人の姿が見えず、アリシアが呟く。
「既に馬車内で待っているってことはありませんか?」
グレイが外用の敬語でアリシアに尋ねる。
「ありえますね。私《わたくし》はそのようなことは気にしませんが普段であれば、バルム家の者よりも先に馬車内で待っている事は不敬にあたるためそのようなことは御者がさせないでしょうが今回は事前に事情をお伝えしておりますからね。なるべく人目を避ける意味でも馬車の中で待っていたほうが良いですから」
「そうなのですね。覚えておきます」
礼儀などには疎いグレイはアリシアの言葉を心の中でメモして今後の参考にする。
(少なくともバルム家の人たちであれば、状況に応じて礼儀を重んじずとも良い場合があるということだな)
「ふふ。グレイさんは真面目ですわね。付け加えますと、他の貴族の場合は殆どが礼儀を優先させますからお気をつけくださいね」
「・・・気をつけます。ちなみに礼儀を欠くとどうなりますか?」
「相手の貴族によって異なる場合が多いですが・・・グレイさんは今のところ平民ですので、最悪強制労働でしょうね・・・」
アリシアの言葉でグレイはびっくりする。
「・・・もしかして魔法学園でもそう言ったことはありえますか?」
不敬と言われてもおかしくない行動をいくつかしてしまっている気がしてならないグレイはついアリシアに聞いてしまう。
「ふふふ、もちろんですわ」
アリシアは少しだけ意地悪そうに答える。
「う・・・気をつけよう」
グレイは肩を落とす。
その様子を見たアリシアは、
「以前ならまだ分かりませんが今はバルム家の『付き人』ですからそこまで気にしなくて大丈夫ですわ。・・・気をつけてはいただきたいですけど」
(グレイさんは私《わたくし》のこととなると見境が無くなることがありますからね。一応言っておきませんと。まあ、私《わたくし》としてはとても嬉しいことではありますが)
「・・・肝に銘じます」
グレイは自分のせいでアリシアさんに迷惑がかかることになるということを理解し、逆に気をつけようと決意した。
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