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第73話
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(横だ!)
『審査するもの』の言葉に反応して横を向く。
眼前にあたしの頭ほどある黒い物体が迫っていた。
やばい!なんとか剣を怪物の拳とあたしの間に入れる。
しかし態勢が悪く、なすすべもなく吹き飛ばされた。
「がはっ!」
以前の『審査するもの』のように壁に叩きつけられた。
(大丈夫か!?)
(だ・・・大丈夫よ。攻撃を食らう瞬間になんとか自分で後ろに飛んだから見た目よりはダメージは少ないわ)
怪物は止めを刺しにゆっくりとあたしのほうに向けて歩いて来る。
(早く立ち上がれ、やつが来るぞ!)
(・・・だめだわ。ちょっと間抜けなぶつかり方しちゃったみたいでしばらく身体が動きそうにないの)
(なんだと!?なんとかならんか?)
無茶なことをいうわね・・・。そうこうしている間にもどんどん怪物が迫ってくる。
ゆっくり、ゆっくりと。
まるであたしのあわてぶりを楽しむかのように。
いい趣味してないわね、こいつ。
身体が動くのにはあと、20秒ってところか。
何とかそのくらいの時間を掛けてここまで来てほしいとこだけど、残念ながらその半分の時間であたしはこの世にはいないわね。
(お手上げよ。何ともならないわ)
自嘲するあたし。
(・・・でも、諦めるつもりはないわ!)
そう言ったときにはずいぶんと時間をかけていた怪物が目の前に来ていた。
両手を組んで両腕を大きく振りかぶる。
目だけは動くので怪物をにらみつける。
絶対に目を逸らせてやるものか!怪物が腕を振り下ろした。
あたしには腕が迫るのをスローモーションに見えていた。
あたる瞬間、横から黒い影が飛び込んできた。
バサァー
すごい衝撃の代わりに風があたしの髪を揺らした。
「大丈夫か?お嬢さん」
何の気負いも焦りもなく尋ねてきたのは、あたしの予想した人物とはかけ離れていた。
「バガルト・・・スターリン・・・」
「どうやら何とか動けそうだな」
相変わらず相手を見据えたまま、振り向きもせずに行ってくる。
「・・・ええ、なんとかね」
声が出せたということは、身体も動かせるだろう。
「ちょっと待ってな」
ドガァァァン
バガルトがそう言った途端、怪物が横に吹き飛ばされた。
「・・・ずいぶん早かったな、小僧」
「そうかな?これでも時間食っちゃったんだけど」
そう無邪気に答えたのはまさにあたしが予想していた人物・・・レベン・アインターブその人であった。
何故か手にはやけに分厚い鋼鉄製の盾をもっている。
「レベン、何であなたがこの人と?」
多少ぎこちなさを感じつつ何とか立ち上がりレベンに問い掛ける。
レベンはあたしの方に向き、
「怪物を何とかしようと来たときに、ばったり会ったんだよ」
「なるほど・・・ね。それでリリヤや他の選手たちは?」
レベンが手にもっていた盾をよく見ると、無数のへこみがあった。
・・・さっきはこれで殴ったんだ。
素手だと痛いからって無茶なことを・・・。
「んとね、リリヤは国都の人たちに被害が及ばないようにこの事を伝えて、避難させるっていってた。他の選手はここにいないってことはあいつにびびって逃げちゃったんじゃない?」
面白そうにレベンがいってくる。
・・・何でそこで楽しそうな顔をするんだ・・・この子は。
まあ、たぶん他の選手もきっとリリヤと同じようなことをしているのだろう。
逃げた人もいるだろうけど・・・。
「そうなの・・・つまり、あたしたちでこいつを何とかしないといけないってわけね」
未だ倒れたままの怪物を見て、不敵に言った。
「んでさ、具体的にどうする?まだ倒れてはいるけど手応えなかったから・・・」
レベンがあたしとバガルトに尋ねる。
『審査するもの』の言葉に反応して横を向く。
眼前にあたしの頭ほどある黒い物体が迫っていた。
やばい!なんとか剣を怪物の拳とあたしの間に入れる。
しかし態勢が悪く、なすすべもなく吹き飛ばされた。
「がはっ!」
以前の『審査するもの』のように壁に叩きつけられた。
(大丈夫か!?)
(だ・・・大丈夫よ。攻撃を食らう瞬間になんとか自分で後ろに飛んだから見た目よりはダメージは少ないわ)
怪物は止めを刺しにゆっくりとあたしのほうに向けて歩いて来る。
(早く立ち上がれ、やつが来るぞ!)
(・・・だめだわ。ちょっと間抜けなぶつかり方しちゃったみたいでしばらく身体が動きそうにないの)
(なんだと!?なんとかならんか?)
無茶なことをいうわね・・・。そうこうしている間にもどんどん怪物が迫ってくる。
ゆっくり、ゆっくりと。
まるであたしのあわてぶりを楽しむかのように。
いい趣味してないわね、こいつ。
身体が動くのにはあと、20秒ってところか。
何とかそのくらいの時間を掛けてここまで来てほしいとこだけど、残念ながらその半分の時間であたしはこの世にはいないわね。
(お手上げよ。何ともならないわ)
自嘲するあたし。
(・・・でも、諦めるつもりはないわ!)
そう言ったときにはずいぶんと時間をかけていた怪物が目の前に来ていた。
両手を組んで両腕を大きく振りかぶる。
目だけは動くので怪物をにらみつける。
絶対に目を逸らせてやるものか!怪物が腕を振り下ろした。
あたしには腕が迫るのをスローモーションに見えていた。
あたる瞬間、横から黒い影が飛び込んできた。
バサァー
すごい衝撃の代わりに風があたしの髪を揺らした。
「大丈夫か?お嬢さん」
何の気負いも焦りもなく尋ねてきたのは、あたしの予想した人物とはかけ離れていた。
「バガルト・・・スターリン・・・」
「どうやら何とか動けそうだな」
相変わらず相手を見据えたまま、振り向きもせずに行ってくる。
「・・・ええ、なんとかね」
声が出せたということは、身体も動かせるだろう。
「ちょっと待ってな」
ドガァァァン
バガルトがそう言った途端、怪物が横に吹き飛ばされた。
「・・・ずいぶん早かったな、小僧」
「そうかな?これでも時間食っちゃったんだけど」
そう無邪気に答えたのはまさにあたしが予想していた人物・・・レベン・アインターブその人であった。
何故か手にはやけに分厚い鋼鉄製の盾をもっている。
「レベン、何であなたがこの人と?」
多少ぎこちなさを感じつつ何とか立ち上がりレベンに問い掛ける。
レベンはあたしの方に向き、
「怪物を何とかしようと来たときに、ばったり会ったんだよ」
「なるほど・・・ね。それでリリヤや他の選手たちは?」
レベンが手にもっていた盾をよく見ると、無数のへこみがあった。
・・・さっきはこれで殴ったんだ。
素手だと痛いからって無茶なことを・・・。
「んとね、リリヤは国都の人たちに被害が及ばないようにこの事を伝えて、避難させるっていってた。他の選手はここにいないってことはあいつにびびって逃げちゃったんじゃない?」
面白そうにレベンがいってくる。
・・・何でそこで楽しそうな顔をするんだ・・・この子は。
まあ、たぶん他の選手もきっとリリヤと同じようなことをしているのだろう。
逃げた人もいるだろうけど・・・。
「そうなの・・・つまり、あたしたちでこいつを何とかしないといけないってわけね」
未だ倒れたままの怪物を見て、不敵に言った。
「んでさ、具体的にどうする?まだ倒れてはいるけど手応えなかったから・・・」
レベンがあたしとバガルトに尋ねる。
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