63 / 83
第63話
しおりを挟む
『なんと!早くも番狂わせが起きてしまったー!一回戦突破確実と見られていたラング・サーラン選手でしたが、今年12才になったばかりのレベン・アインターブ選手に敗れてしまいました!・・・・・・』
何やらアナウンスしていたけど、話の途中でレベンが控え室まで帰ってきたので聞き取りきれなかった。
「やるわね。大金星じゃない?」
「たぶん、向こうの調子が悪かっただけさ。偶々だよ」
あたしの言葉に謙虚に返事をする。
「あなた一体何をしたの?あたしには手を刺されてから胸を刺されたように見えたのだけど・・・」
リリヤが遠慮がちにレベンに尋ねる。
まあ、確かにそう見えないことはないけど。
あたしもレベンがなんと答えるのか気になるわね。
「いや、何をしたのと言われても、あのおじさんのナイフを破壊してから、倒しただけだよ」
レベンはあっさりと、そう答えた。
「うそ・・・でしょう・・・でもそれなら、あの光景も頷けるわね」
リリヤは愕然とし、無理矢理自分を納得させる。
・・・まあ、簡単には信じられない話ではあるけどさ。
〔やはり、右手は使えないようだな〕
〔そうみたいね。さっき戦った相手は心のどこかで油断があったから勝てたものの、これから先の戦いは厳しいものになるのは間違いないわ。それに・・・〕
〔それに何だ?〕
〔全力のレベンと戦えないってのは何よりもあたしがつまらなくなる〕
〔・・・それだけ言えれば、大したもんだ・・・〕
呆れたように『審査するもの』が呟く。
何でかしら?
「納得してくれた?」
「ええ・・・半信半疑だけどね」
「そっか、でも半分でも十分だよ。それよりマーヘン、そろそろ出番じゃない?」
「えっ?ああ、そうだったっけ?」
あたしは試合の進行表を確認する。
あら、ほんとだ。
「あんたよく覚えてるわね」
「へへっ、だって要チェックだからね」
レベンは照れ笑いを浮かべながら答える。
こういう顔を見る限りだとこの子が12才だと実感できるんだけど、世の中不思議なものね。
だってとても強そうには見えないもの。
「よし。レベン、リリヤ行ってくるわね」
あたしは二人に挨拶をして控え室の外に出ていった。
〔調子はどうなんだ?〕
〔ん、まあまあってところね〕
〔ほう。それで相手は強いのか?〕
〔気になる?〕
〔そりゃ、気にもなるさ。対戦相手のマーヘンとの戦い方によって私がどのくらいのものかわかるからな〕
〔ふーん〕
あたしはちょっとカチンときた。
あたしのことが心配なわけじゃないのね。
何やらアナウンスしていたけど、話の途中でレベンが控え室まで帰ってきたので聞き取りきれなかった。
「やるわね。大金星じゃない?」
「たぶん、向こうの調子が悪かっただけさ。偶々だよ」
あたしの言葉に謙虚に返事をする。
「あなた一体何をしたの?あたしには手を刺されてから胸を刺されたように見えたのだけど・・・」
リリヤが遠慮がちにレベンに尋ねる。
まあ、確かにそう見えないことはないけど。
あたしもレベンがなんと答えるのか気になるわね。
「いや、何をしたのと言われても、あのおじさんのナイフを破壊してから、倒しただけだよ」
レベンはあっさりと、そう答えた。
「うそ・・・でしょう・・・でもそれなら、あの光景も頷けるわね」
リリヤは愕然とし、無理矢理自分を納得させる。
・・・まあ、簡単には信じられない話ではあるけどさ。
〔やはり、右手は使えないようだな〕
〔そうみたいね。さっき戦った相手は心のどこかで油断があったから勝てたものの、これから先の戦いは厳しいものになるのは間違いないわ。それに・・・〕
〔それに何だ?〕
〔全力のレベンと戦えないってのは何よりもあたしがつまらなくなる〕
〔・・・それだけ言えれば、大したもんだ・・・〕
呆れたように『審査するもの』が呟く。
何でかしら?
「納得してくれた?」
「ええ・・・半信半疑だけどね」
「そっか、でも半分でも十分だよ。それよりマーヘン、そろそろ出番じゃない?」
「えっ?ああ、そうだったっけ?」
あたしは試合の進行表を確認する。
あら、ほんとだ。
「あんたよく覚えてるわね」
「へへっ、だって要チェックだからね」
レベンは照れ笑いを浮かべながら答える。
こういう顔を見る限りだとこの子が12才だと実感できるんだけど、世の中不思議なものね。
だってとても強そうには見えないもの。
「よし。レベン、リリヤ行ってくるわね」
あたしは二人に挨拶をして控え室の外に出ていった。
〔調子はどうなんだ?〕
〔ん、まあまあってところね〕
〔ほう。それで相手は強いのか?〕
〔気になる?〕
〔そりゃ、気にもなるさ。対戦相手のマーヘンとの戦い方によって私がどのくらいのものかわかるからな〕
〔ふーん〕
あたしはちょっとカチンときた。
あたしのことが心配なわけじゃないのね。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
伯爵家の次男に転生しましたが、10歳で当主になってしまいました
竹桜
ファンタジー
自動運転の試験車両に轢かれて、死んでしまった主人公は異世界のランガン伯爵家の次男に転生した。
転生後の生活は順調そのものだった。
だが、プライドだけ高い兄が愚かな行為をしてしまった。
その結果、主人公の両親は当主の座を追われ、主人公が10歳で当主になってしまった。
これは10歳で当主になってしまった者の物語だ。
レベル上限5の解体士 解体しかできない役立たずだったけど5レベルになったら世界が変わりました
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
前世で不慮な事故で死んだ僕、今の名はティル
異世界に転生できたのはいいけど、チートは持っていなかったから大変だった
孤児として孤児院で育った僕は育ての親のシスター、エレステナさんに何かできないかといつも思っていた
そう思っていたある日、いつも働いていた冒険者ギルドの解体室で魔物の解体をしていると、まだ死んでいない魔物が混ざっていた
その魔物を解体して絶命させると5レベルとなり上限に達したんだ。普通の人は上限が99と言われているのに僕は5おかしな話だ。
5レベルになったら世界が変わりました
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第三章フェレスト王国エルフ編
さようなら、私の初恋。あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
ごろごろみかん。
ファンタジー
結婚式の夜、私はあなたに殺された。
彼に嫌悪されているのは知っていたけど、でも、殺されるほどだとは思っていなかった。
「誰も、お前なんか必要としていない」
最期の時に言われた言葉。彼に嫌われていても、彼にほかに愛するひとがいても、私は彼の婚約者であることをやめなかった。やめられなかった。私には責務があるから。
だけどそれも、意味のないことだったのだ。
彼に殺されて、気がつけば彼と結婚する半年前に戻っていた。
なぜ時が戻ったのかは分からない。
それでも、ひとつだけ確かなことがある。
あなたは私をいらないと言ったけど──私も、私の人生にあなたはいらない。
私は、私の生きたいように生きます。
【ユイナーダ王国勇者伝説】天然ボケ猫勇者王子セイマは修行中〜勇者パーティーは回復役は聖人より聖女の方が良い!と言ってますが真の勇者は私です!
砂月ちゃん
ファンタジー
私は勇者パーティーの神官セイマ。
この度、パーティーメンバーから
『どうせ回復してもらうなら、男の神官より聖女の方が良い!』
という理由で、クビになりました。
あの〜貴方達を雇っていたのは、私の方なのですが??
この世界【勇者】【聖人】【聖女】の定義が他とは違っていた様です。
☆ユイナーダ王国の天然ボケ猫王子と、臨時でそのお世話をする事になってしまった、ハーシー先生のドタバタコメディー。
☆対する勘違い勇者タツヒコ一行の、珍道中。
☆勇者シルバーvs大怪獣
(特撮ヒーロー&猫好き向きのお話しです。)
ユイナーダ王国が誇る三大勇者の活躍はいかに?
主人公複数。
銀の髪を持つ愛し子は外の世界に憧れる
Guidepost
ファンタジー
リフィルナ・フィールズは侯爵家の末の娘として生まれた。
フィールズ家は皆、茶色の髪に青い瞳をしている。嫁いできた母親もそうだ。
だがリフィルナは間違いなくフィールズ家の血を引いている両親の正真正銘、娘であるにも関わらず一人だけ髪も瞳の色も違った。
珍しい、白に近いシルバーの髪にイエローとゴールドが混ざったような琥珀色の瞳を持つ、当時産まれたばかりの娘を両親は堅い表情で見つめていた。
リフィルナには、兄姉が4人居るが、4つ上の次男のコルドと使用人たちだけは優しかった。
ある日リフィルナは、一匹の怪我をした白い蛇と出会う。
そして、その出会いをきっかけに、リフィルナの運命は大きく変わった。
我儘女に転生したよ
B.Branch
ファンタジー
転生したら、貴族の第二夫人で息子ありでした。
性格は我儘で癇癪持ちのヒステリック女。
夫との関係は冷え切り、みんなに敬遠される存在です。
でも、息子は超可愛いです。
魔法も使えるみたいなので、息子と一緒に楽しく暮らします。
俺のスキル『性行為』がセクハラ扱いで追放されたけど、実は最強の魔王対策でした
宮富タマジ
ファンタジー
アレンのスキルはたった一つ、『性行為』。職業は『愛の剣士』で、勇者パーティの中で唯一の男性だった。
聖都ラヴィリス王国から新たな魔王討伐任務を受けたパーティは、女勇者イリスを中心に数々の魔物を倒してきたが、突如アレンのスキル名が原因で不穏な空気が漂い始める。
「アレン、あなたのスキル『性行為』について、少し話したいことがあるの」
イリスが深刻な顔で切り出した。イリスはラベンダー色の髪を少し掻き上げ、他の女性メンバーに視線を向ける。彼女たちは皆、少なからず戸惑った表情を浮かべていた。
「……どうしたんだ、イリス?」
アレンのスキル『性行為』は、女性の愛の力を取り込み、戦闘中の力として変えることができるものだった。
だがその名の通り、スキル発動には女性の『愛』、それもかなりの性的な刺激が必要で、アレンのスキルをフルに発揮するためには、女性たちとの特別な愛の共有が必要だった。
そんなアレンが周りから違和感を抱かれることは、本人も薄々感じてはいた。
「あなたのスキル、なんだか、少し不快感を覚えるようになってきたのよ」
女勇者イリスが口にした言葉に、アレンの眉がぴくりと動く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる