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第63話

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『なんと!早くも番狂わせが起きてしまったー!一回戦突破確実と見られていたラング・サーラン選手でしたが、今年12才になったばかりのレベン・アインターブ選手に敗れてしまいました!・・・・・・』

何やらアナウンスしていたけど、話の途中でレベンが控え室まで帰ってきたので聞き取りきれなかった。

「やるわね。大金星じゃない?」

「たぶん、向こうの調子が悪かっただけさ。偶々だよ」

あたしの言葉に謙虚に返事をする。

「あなた一体何をしたの?あたしには手を刺されてから胸を刺されたように見えたのだけど・・・」

リリヤが遠慮がちにレベンに尋ねる。

まあ、確かにそう見えないことはないけど。

あたしもレベンがなんと答えるのか気になるわね。

「いや、何をしたのと言われても、あのおじさんのナイフを破壊してから、倒しただけだよ」

レベンはあっさりと、そう答えた。

「うそ・・・でしょう・・・でもそれなら、あの光景も頷けるわね」

リリヤは愕然とし、無理矢理自分を納得させる。

・・・まあ、簡単には信じられない話ではあるけどさ。

〔やはり、右手は使えないようだな〕

〔そうみたいね。さっき戦った相手は心のどこかで油断があったから勝てたものの、これから先の戦いは厳しいものになるのは間違いないわ。それに・・・〕

〔それに何だ?〕

〔全力のレベンと戦えないってのは何よりもあたしがつまらなくなる〕

〔・・・それだけ言えれば、大したもんだ・・・〕

呆れたように『審査するもの』が呟く。

何でかしら?

「納得してくれた?」

「ええ・・・半信半疑だけどね」

「そっか、でも半分でも十分だよ。それよりマーヘン、そろそろ出番じゃない?」

「えっ?ああ、そうだったっけ?」

あたしは試合の進行表を確認する。

あら、ほんとだ。

「あんたよく覚えてるわね」

「へへっ、だって要チェックだからね」

レベンは照れ笑いを浮かべながら答える。

こういう顔を見る限りだとこの子が12才だと実感できるんだけど、世の中不思議なものね。

だってとても強そうには見えないもの。

「よし。レベン、リリヤ行ってくるわね」

あたしは二人に挨拶をして控え室の外に出ていった。

〔調子はどうなんだ?〕

〔ん、まあまあってところね〕

〔ほう。それで相手は強いのか?〕

〔気になる?〕

〔そりゃ、気にもなるさ。対戦相手のマーヘンとの戦い方によって私がどのくらいのものかわかるからな〕

〔ふーん〕

あたしはちょっとカチンときた。

あたしのことが心配なわけじゃないのね。
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