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5 不測の事態

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 婚姻してから一週間、ステファンは仕事を入れずアリーに寄り添っていた。
 町に降りて領民の生活を見て、商店で買い物をした。岬まで登り朝日を見て、夕方の浜辺を散歩して大きな貝殻を拾った。
 アリーがしたい事を見つけたらすればいい、ないならないでいい、そんなスタンスで見守ると言われ嬉しかった。

 ここへ来て一番変わったのはアリーの食生活だ。
 朝はしっかり食べる習慣がついた。食事の後はボル婦人の後を付いて歩いて食料を買い出しに行く。
 昨日は庭の果実を収穫してジャムを煮た。
 砂糖は予想の倍以上を入れて、コトコト火にかける。
 ジャム用の瓶詰を専用の鍋で蒸して詰める。これまで完成品しか見た事がなかったアリーは感動した。
 あまった果実もスライスして干せば保存食ができる。果実なのにお菓子だけじゃなく、料理の材料にもなると知った。
 自分の体を作る食の元を目にして、料理にも興味がわき、食べる事が楽しくなった。ステファンと囲む食卓も楽しくなった。
 そんな気の抜けた感じで、三週間がたっていた。


 ステファンの寝室はアリーの隣。なのに彼が夜にアリーの部屋を訪問してくる事はなかった。
 スキンシップは多いほどにある。家で顔を合わせれば抱擁に頬へのキス、額ヘのキス。一緒にいる時は常に隣にいて体のどこかが触れ合っている。そうしているだけで自然と微笑んでいた。
 二人は結婚して夫婦になったが、ステファンとしては新たな家族を迎え入れた感覚なのだろう。
 ボル夫婦を父と母に例えると、ステファンは長男、アリーは年の離れた弟。もしかすると自分の子供、くらいに思っているかもしれない。
 だから今後も一線を越る事はないのだとアリーは思った。


 でもそれはアリーの勘違いだった。
 アリーの中には大きく育ったステファンがいる。

「えっ、アリーも初めてなの? でも、ごめん……腰が、とまらない……!」
「あん……旦那様っ……気持ちいいっ……」

 ステファンは初めての体験に飲まれながら、それでもアリーが傷つかないように腰を動かしていた。
 前後の動きで奥に負担をかけるのはダメだと、動きを遅めたり、途中の感じる部分を攻めているのが余計にアリーの性感を高めている事に気付かない。
 胸の飾りも舐められすぎでぷっくり立っている。
 ステファン様は本当に病弱なのだろうか、広い肩に強い腰。予想外の動きをする巧みな技にアリーは困惑する。
 年に一度来るか来ないかの発情期ではないため濡れは悪い。
 それでもステファンが何度も香油を塗りこめるから負担もなく、ズズッと入り込む杭はアリーの奥の奥に到達してゴリゴリ刺激してくる。
 痛いようでいて気持ちよくて、もう一度突いてほしくて、気持ちがバラバラになる。
 
「……入り口だけじゃなくて、奥の方も絞めてくるよ……アリーアリー……」

 体を折ってキスをしてくる。
 唇へのキスはベッドでが始めてだった。
 頬から少し横にずれただけなのに、どうしてこれほど気持ちがいいのか、アリーは夢中でそれを重ねた。
 器用なステファンはキスと同時に突いてくる。どうしても声が漏れてしまうのに、ステファンは遠慮してくれない。
 自分の体の事はわからない。でもステファンが気持ちよくなって、自分の名前を呼んでくれるのが嬉しい。

「そうだ……確かこっちも可愛がってあげるものだと……」

 ステファンの手がアリーの慎ましい竿を握り、ぐっと圧を掛けたところで白濁が散る。
 それと同時に中でも達してしまうけれど、ステファンは虚脱したアリーから抜かないまま体位を変え枕を抱えさせる。
 後ろから出入りされると違ったさっきまでと刺激が走る。
 動きはゆっくりで労わるような愛を感じる。細い息を吐いて感じていると勝手に涙が出てきた。
 
「あっあっあっ……んっ……すごい……」

 さっきまでの昇りつめるような快感とは違い、深くてジンジンとした感覚がある。
 その感覚にステファンが好きだと自覚する。

「……好き、すきです……旦那様、ステファン様……」
「アリー、僕も好きだ……これはいけない。死ねない……僕は絶対に死なないっ!」
「……だめっ……そこっ。あっあっあっ……」
 
 パンパンと肌がぶつかり、未知の感覚に頭が真っ白になる。
 ぐぐっと腰が押し付けられ、熱い飛沫が注がれた。
 その後、二人は目が合うたびにキスをして、肌を寄せては何度も交わった。
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