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【06】部外者なんですよ。実務担当者が知っていればいいのですよ
しおりを挟む――正しい成績公表は、馬鹿めな男爵令嬢がよくやる、炊き出しなどの適当福祉とは違うから、問題ないと思ったのだろうけれど……貴族なんてひん曲がったプライド持ちが多いの、ご存じでしょうに……あ、公爵令嬢は記憶が戻るのが早いから、前世の記憶に引っ張られた可能性があるな
ソロモンとナオミが近づいたのは、正しい順位が張り出され――ナオミは初めてのテストで上位貴族を抑えて、トップ10入りした。
つい最近まで平民として生活していた男爵家の元庶子が、並み居る貴族たちを押しのけて上位入りしたことでナオミは上位貴族から不興を買い――アクロイド、引いては自分の婚約者オリアーナが原因だと知ったソロモンは、ナオミを側において保護した。
「あなたのように、もとから飛び抜けて成績が良いことが、上位貴族たちにも知られていて、嫁ぐ予定のない人ならば問題にはなりませんが」
「わたしの背後には、一応王家の方々がついていたので」
「そうだな」
モイラが学園に通っていたのは、十五歳から十六歳の一年のみ。
飛び抜けて優秀なことを、王宮だけではなく、同年代の国内の貴族にアピールするために通ったのだ。
学園は三年間だが、モイラは二年に進級する前に、アピールは”もういいだろう”ということで、公費留学生試験を受けて、国外留学した――国に戻ってくるつもりがあったので、コネクションを作ってから国外へ出たのだ。
そういう目的だったので、モイラは子爵令嬢ながら実力で主席を独占し続けた――が、これも上からの指示だっただけで、二位以下は手心が加えられていたのは言うまでもない。
――二人が近づいたのは、公爵令嬢のせいか……良い仕事しますね、悪役令嬢
ソロモンとナオミが近づいた経緯を知り、国王たちが目こぼしした理由がモイラにもわかった――騒ぎにすると、未来の王妃オリアーナの経歴に傷が付く。
「そろそろ門が開く」
聞きたいことはいろいろあったが、まずは主要人物たちの顔と名前を一致させるのが大事だと考えていたモイラは、門が見える場所で、事務官に教えてもらうことにした。
正門正面で職員以外の立ち入りが、原則禁止されている部屋で、モイラと事務官は双眼鏡をつかい、
――やっぱりピンクブロンドだ!
このままいけば、ソロモンとともに「ざまぁ」されることになるナオミ・シーモアは、離れていても分かる、ふわふわで光り輝くピンクブロンドの持ち主だった。
制服に包まれた体は華奢の一言につきた。
下位貴族で王太子の庇護を受けているナオミだが、同じく徒歩で登校してくる女子生徒たちと、楽しげに話をしている。
「ナオミ・シーモアは、特段孤立しているわけではない?」
「そこは大丈夫だ。レディ・シーモアが殿下の庇護を受けざるを得ない状況なのは、下位貴族なら誰もが理解しているしな」
「なるほど。ちなみに、オリアーナ・ダドリーは?」
「うーん。微妙なところだな」
「そうですか」
――弟と王太子以外の攻略対象は、司法長官の息子と神官の息子、あとはオリアーナの義兄……義兄はもう卒業しているから、学園に来ることはない……オリアーナと義兄は原作では良好な関係になってるけど、ゲームでは不仲……っていう設定だったな……どちら寄りなのかな、この世界は
「あのダークブロンドで背の高い生徒が、司法長官の息子だ」
「ほー」
事務官に「会ったことはないが、記憶にある二名の攻略対象」を紹介してもらっていると、徒歩の生徒が捌け――馬車や騎馬で登校する、上位貴族たちがやってきた。
もっとも上位貴族でも、学園に乗り付けられるのはごく少数。
ほとんどは学外にある馬車止めで下車して、徒歩で学園にやってくる。
「あれ? あれは殿下が乗っている馬車?」
乗馬が好きな王太子は、ジェイクと共に登校している――留学先に届いたジェイクからの手紙にそう書かれていたのだが、目の前に現れたのは王家の紋章が描かれた馬車。
「そうだ」
「殿下はジェイクと一緒に、騎馬で登校していると手紙に書かれていたのですが」
ジェイクは騎馬で付き従っていた。
ジェイクはあまり頭がよろしくないので、モイラは「まさかこんな単純な文章を、書き間違ったのか? そろそろ教育機関から卒業だぞ。それでその文章を間違うのは……さすがに、家庭教師したほうがいいか?」と焦ったが、そうではなかった。
「殿下は三ヶ月くらい前に、登校中に落馬したそうだ。大事には至らなかったが、以来、登校には馬車を使われている」
「ん……そうでしたか」
――良かった、良かった。……ん? 落馬? ソロモンはかなり乗馬が上手かったはず。よほど体調が悪くない限り、落馬するような技量じゃなかったはず
モイラは王太子の落馬が、少しばかり引っかかった。
こうしてオリアーナと義兄以外を確認し、
「監査官ですか」
事務官から「監査にきた人」という名目で、学園内を調査できるよう手筈を整えておいたと告げられた。
「職員や教員には”そういう名目なだけだから、構える必要はない”と通達しておいた」
「ありがとうございます……あ、あと一つだけ」
「なんだい?」
「デクスター・アクロイドには近づかないようにしたいので、顔を教えていただきたい」
「分かった」
デクスター・アクロイドの姿を確認し、
――原作には登場していなかった……と思う
危険因子には近づかないようにし、監査官としてモイラは学園内を歩き周りさまざまな情報を入手した。
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