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柵の向こう側
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「なぁんだぁ~。やっぱりぃ、いるんじゃないですかぁ~」
しゃがみ込んだ時に声が出てしまったのと、ライアのツルを見られてしまった。女の子は目を細めてニヤリと笑うのを奏は見て、背筋が凍るような感じがした。
「あのぉ~? ここを開けてはぁ、もらえないのぉ~?」
奏が返事に困っていると、待ちきれなかったのか、女の子はまた新しく木を根元から引っこ抜いて、殴りつけるモーションを見せてきた。
「ちょ、ちょっと待って! 今そっちに向かうからっ!!」
奏は意を決して立ち上がる。ライアからは小さな声でずっと止められているのだが、これ以上攻撃されるのは危険だ。
エントの陰から出た奏は、ゆっくりと女の子の前へと歩いていく。
近づいたことで女の子の姿を改めてはっきりと見えた。まだ幼い少女のような風貌なのに、身体中に真っ赤な返り血を浴びて真っ赤に染まった服を着ていて、乾いているのか、ところどころ黒ずんでいる部分もあった。
見た目を気にしていないのか、髪にも血が付着していて、元の髪色が何色なのかもわからなくなっていた。
「は、初めまして……」
「どうもぉ~。ウチはぁ、ペトリスってぇいいますぅ~。ここからぁ、美味しそうなぁ、良い匂いがするんだけどぉ、入れてくれなぁい?」
手に持っていた魔物の肉片を引きちぎり、おもむろに口の中へと運ぶ。
「ママ……! ダメなの! 近づいちゃダメなの……!」
「あらぁ~? あなたの子供ぉ~? ……美味しそうねぇ~?」
ペトリスがライアを見ながらニヤリと笑うと、ライアは怖がり、震えながらも奏の服を掴んだ。
柵越しに対面しているにも関わらず、
(だ、大丈夫……。この柵がある限りあの子は入ってこれない……はず。問題は、あの子を怒らせないように、どうやって帰ってもらうか……)
ライアの頭を撫でながら、奏も自分の手が震えていることに気づいた。
今目の前にいる存在は、ファルマーとも烈風の皆さんとも違う、明らかに危険な存在だ。向こうから話しかけてくるけど、常に何か食べているのも不気味だった。対応を一つでも間違えると、何をされるのかわからない。
「こ、この子には手を出さないでっ……」
「ださないよぉ~? それにぃだしたくてもぉ、これのせいで無理だしねぇ~?」
柵の方を指差しながら、ペトリスはなんとか入れそうな場所を探しているが、柵に触れないので入ってこれないようだ。
しゃがみ込んだ時に声が出てしまったのと、ライアのツルを見られてしまった。女の子は目を細めてニヤリと笑うのを奏は見て、背筋が凍るような感じがした。
「あのぉ~? ここを開けてはぁ、もらえないのぉ~?」
奏が返事に困っていると、待ちきれなかったのか、女の子はまた新しく木を根元から引っこ抜いて、殴りつけるモーションを見せてきた。
「ちょ、ちょっと待って! 今そっちに向かうからっ!!」
奏は意を決して立ち上がる。ライアからは小さな声でずっと止められているのだが、これ以上攻撃されるのは危険だ。
エントの陰から出た奏は、ゆっくりと女の子の前へと歩いていく。
近づいたことで女の子の姿を改めてはっきりと見えた。まだ幼い少女のような風貌なのに、身体中に真っ赤な返り血を浴びて真っ赤に染まった服を着ていて、乾いているのか、ところどころ黒ずんでいる部分もあった。
見た目を気にしていないのか、髪にも血が付着していて、元の髪色が何色なのかもわからなくなっていた。
「は、初めまして……」
「どうもぉ~。ウチはぁ、ペトリスってぇいいますぅ~。ここからぁ、美味しそうなぁ、良い匂いがするんだけどぉ、入れてくれなぁい?」
手に持っていた魔物の肉片を引きちぎり、おもむろに口の中へと運ぶ。
「ママ……! ダメなの! 近づいちゃダメなの……!」
「あらぁ~? あなたの子供ぉ~? ……美味しそうねぇ~?」
ペトリスがライアを見ながらニヤリと笑うと、ライアは怖がり、震えながらも奏の服を掴んだ。
柵越しに対面しているにも関わらず、
(だ、大丈夫……。この柵がある限りあの子は入ってこれない……はず。問題は、あの子を怒らせないように、どうやって帰ってもらうか……)
ライアの頭を撫でながら、奏も自分の手が震えていることに気づいた。
今目の前にいる存在は、ファルマーとも烈風の皆さんとも違う、明らかに危険な存在だ。向こうから話しかけてくるけど、常に何か食べているのも不気味だった。対応を一つでも間違えると、何をされるのかわからない。
「こ、この子には手を出さないでっ……」
「ださないよぉ~? それにぃだしたくてもぉ、これのせいで無理だしねぇ~?」
柵の方を指差しながら、ペトリスはなんとか入れそうな場所を探しているが、柵に触れないので入ってこれないようだ。
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