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ライアとの日常
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「なかなか芽が出ないね」
「ねー? なんでなのー?」
ライアが言うには、世界樹の種自体は元気になってきているらしい。ただ、奏からは未だに土しか見えてないので、なかなか実感がわかなかった。
(発芽するのになにか条件とかあるのかな……?)
こういう時こそ叡智の書の出番なのだが、なぜか種の状態のときでは新しい情報が乗ることはなかった。
ライアの時も、完全に姿が出てから追加されたのだ。
(もしかしたら、私の想像から作り出したものだから実物を見ないとだめなのかな)
そう思いながら、いつものようにライアと世界樹をテーブルの上に移動させて作業を始めた。
今日するのは魔力水の増産だ。ライアもよく飲むようになったし、魔力土が魔力を無くすと危険なものだとわかってから、魔法薬作りよりもこっちの生産の方が大事になってきていた。
魔石を削っていく工程にも慣れると、よそ見しながらでもできる。魔石草も十二分に魔石を作り出してくれている。
今奏の中にある不安要素は、ひとつしかないアイテムが壊れることだった。
ひとつは、これまで何千と使わせてもらっている複製鏡。
万能鉢も収納袋も、主に使ってきたアイテムを増やしてきてくれたこの鏡が壊れると、奏の生活は一変するだろう。
それともうひとつは、種子の宝箱だ。このアイテムのおかげで生活できているし、何よりライアに出会えたのはこのアイテムのおかげでもあった。
(修理できるようなものがあれば……)
そんな都合の良いアイテムがこの家の中にあるはずもなく、奏は汚さないように、落とさないようにと、慎重に扱うことしかできない。
今の奏にとって、これ以上のお花も野菜も管理が難しいので新しく育てたりはしていないが、思い出した時に種子の宝箱を使うようにしている。
世界樹を眺めているライアを横目に、奏は種子の宝箱を持ち出していた。
(そういえばエルレインさんの腰にあったお花……この世界のお花よね。見たこともないし……)
奏はエルレインが持っていたお花をイメージしながら種子の宝箱に願う。
(白い花びらで、見た目は……ちょっとだけサフランっぽいかな? 綺麗だったなぁ)
種子の宝箱からは魔石が消費されて、中に入っている種を取り出す奏。今回の種は初めて入手したものなので育てるかどうか悩む。種を手のひらにのせて考えていると、ライアが近寄ってきていた。
「ままはなにしてるの?」
「えっとね、新しいお花の種をどうしようか悩んでて……」
「あたらしいおはな? どんなのなの? みてみたいの!」
ライアは新しいお花と聞いて嬉しそうにしている。
それならと、奏も新しい万能鉢を準備して植えることにした。一つだけなら今とそう変わらないし、大変になってきたら庭を拡張すればいいだけである。
「ねぇまま? ライアもそれやってみたい……」
奏がどこに置こうか悩んでいると、ライアが小さい手で服を掴んでいる。どうやらライアも種子の宝箱を使ってみたいという。
(まぁ爆発したりするわけじゃないしね)
奏はライアの前に種子の宝箱を置いて、近くに魔石も数個準備した。簡単に使い方を教えると、ライアは魔石を早速種子の宝箱にはめると、ウキウキしながら考えている。
「ゆっくり考えたらいいからね?」
「うん! だいじにつかうの!」
ライアは蔦で世界樹の鉢も近くに寄せると、まるでおままごとみたいに世界樹の鉢に話しかけていた。
(……楽しそうだし、しばらく大丈夫かな?)
奏はライアが種子の宝箱を使っている間、叡智の書をもう一度おさらいし、使えそうなアイテムや読み逃している情報がないか見直すことにした。
「ねー? なんでなのー?」
ライアが言うには、世界樹の種自体は元気になってきているらしい。ただ、奏からは未だに土しか見えてないので、なかなか実感がわかなかった。
(発芽するのになにか条件とかあるのかな……?)
こういう時こそ叡智の書の出番なのだが、なぜか種の状態のときでは新しい情報が乗ることはなかった。
ライアの時も、完全に姿が出てから追加されたのだ。
(もしかしたら、私の想像から作り出したものだから実物を見ないとだめなのかな)
そう思いながら、いつものようにライアと世界樹をテーブルの上に移動させて作業を始めた。
今日するのは魔力水の増産だ。ライアもよく飲むようになったし、魔力土が魔力を無くすと危険なものだとわかってから、魔法薬作りよりもこっちの生産の方が大事になってきていた。
魔石を削っていく工程にも慣れると、よそ見しながらでもできる。魔石草も十二分に魔石を作り出してくれている。
今奏の中にある不安要素は、ひとつしかないアイテムが壊れることだった。
ひとつは、これまで何千と使わせてもらっている複製鏡。
万能鉢も収納袋も、主に使ってきたアイテムを増やしてきてくれたこの鏡が壊れると、奏の生活は一変するだろう。
それともうひとつは、種子の宝箱だ。このアイテムのおかげで生活できているし、何よりライアに出会えたのはこのアイテムのおかげでもあった。
(修理できるようなものがあれば……)
そんな都合の良いアイテムがこの家の中にあるはずもなく、奏は汚さないように、落とさないようにと、慎重に扱うことしかできない。
今の奏にとって、これ以上のお花も野菜も管理が難しいので新しく育てたりはしていないが、思い出した時に種子の宝箱を使うようにしている。
世界樹を眺めているライアを横目に、奏は種子の宝箱を持ち出していた。
(そういえばエルレインさんの腰にあったお花……この世界のお花よね。見たこともないし……)
奏はエルレインが持っていたお花をイメージしながら種子の宝箱に願う。
(白い花びらで、見た目は……ちょっとだけサフランっぽいかな? 綺麗だったなぁ)
種子の宝箱からは魔石が消費されて、中に入っている種を取り出す奏。今回の種は初めて入手したものなので育てるかどうか悩む。種を手のひらにのせて考えていると、ライアが近寄ってきていた。
「ままはなにしてるの?」
「えっとね、新しいお花の種をどうしようか悩んでて……」
「あたらしいおはな? どんなのなの? みてみたいの!」
ライアは新しいお花と聞いて嬉しそうにしている。
それならと、奏も新しい万能鉢を準備して植えることにした。一つだけなら今とそう変わらないし、大変になってきたら庭を拡張すればいいだけである。
「ねぇまま? ライアもそれやってみたい……」
奏がどこに置こうか悩んでいると、ライアが小さい手で服を掴んでいる。どうやらライアも種子の宝箱を使ってみたいという。
(まぁ爆発したりするわけじゃないしね)
奏はライアの前に種子の宝箱を置いて、近くに魔石も数個準備した。簡単に使い方を教えると、ライアは魔石を早速種子の宝箱にはめると、ウキウキしながら考えている。
「ゆっくり考えたらいいからね?」
「うん! だいじにつかうの!」
ライアは蔦で世界樹の鉢も近くに寄せると、まるでおままごとみたいに世界樹の鉢に話しかけていた。
(……楽しそうだし、しばらく大丈夫かな?)
奏はライアが種子の宝箱を使っている間、叡智の書をもう一度おさらいし、使えそうなアイテムや読み逃している情報がないか見直すことにした。
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