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アフィラーディ王国

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 衛兵と別れたファルマーは村の中を見渡しながら、真っ直ぐに冒険者ギルドへと向かう。
 少し日も傾いてきているので周りに歩いている人は少ない。
 ギルドの重い扉を開くと、中にはお酒を飲んで騒いでいる冒険者の姿があった。

「……」

 ファルマーの姿を見た冒険者たちは一瞬手を止めるが、程なくして元のように騒ぎ出す。
 受付の横の掲示板には周辺の地図が掲示されていて、そこまで移動して目的地であるアフィラーディ王国の位置を確かめる。

「この村がここで……王国がここなら……よかったです。これなら明日一日飛べば王国につきそうですね」
 
 幸い、近くで見つけたこの村は王国から比較的近い位置にあるが、もう日も傾きつつある中で移動するのは危険である。受付で安い宿屋を聞いたファルマーは、この村で一泊することにした。

「それにしても……」

 部屋を一つ確保したファルマーは、この村で見かけたものと、カナデの家で見たものとを見比べてしまう。
 カナデ自身がどう思っているのかわからないが、あの家は異質だ……。どう考えても普通の家ではない。カナデ自身に魔力を感じないのに、あの家には魔力で働く魔道具が山のように置いてあった。おそらく魔石がカナデの代わりのエネルギー源になっているのだろうが、それにしてもひと目見ただけでこの村にある魔道具よりも高性能であることが明らかだった。王国の貴族の屋敷でもあれほどのものは置いてないだろう。あとどれだけ魔石が残っているのかはわからないが、あの家は下手な貴族の屋敷よりも設備が良すぎる。
 それにあれだけの家、柵、アイテムを作ることができる人物はそう多くはないはずだ。
 あの場所で口にしたものも、王国では見たこのも聞いたこともないものだった。

「……これはとても美味しかったです」

 収納袋から取り出したのはカナデから貰ったトマトジュースという赤い液体と、サネカズラの花。部屋の中で蓋を開くと、トマトの甘酸っぱい匂いが部屋の中を満たした。このトマトだけではなく、あの部屋で見た植物たちも、ほとんど見たことのないものばかり。
 発見した場所や、アイテムを見ればおそらくあの場所が勇者の言ってた小屋だと思っていたが、外観は小屋というよりも立派な建物だったし、あの家には勇者が言っていたような武器の類は見受けられなかった。

「勇者様の言う建物は、他の人たちに任せるとして、一度報告に戻らなくてはですね……。それから、色々と、調べて……みないとです……」

 ファルマーは布団で横になると、疲れていたのか、すぐに目を閉じてしまう。魔力自体はだいぶ回復したとはいえ、【幻惑の森】で戦闘続きだった為体力の方が限界を迎えたようだった。
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