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アフィラーディ王国

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 魔術省の長官がいる部屋は、建物の最上階に位置している。一つずつ階段を登っていくとその部屋までたどり着く。たどり着くのだが……。

(……なんで……わざわざ……こんなっ……高いところに……!)

 長い階段を登っていると、ファルマーの額にはうっすらと汗が滲んでくる。
 歴代の長官いわく「魔術師は基礎体力が無さすぎる。そんなことではいざと言う時動けなくなる。普段から身体を動かすことを心掛けよ」という考えの持ち主だったらしく、魔術省の本部が建設される際にこういう建物になったらしい。その結果、完成した建物の最上階までの長い階段を昇った先に長官室を作り、長官自らが先んじて歩いていたらしい。それからも魔術省の長官が代わっても本部の頂上から長官室が移動することはないという。
 実際に長官が昇り降りしているところを見たことがないのだが、長官がするなら自分達もと、他の魔術師たちも悪態をつきながらではあるが登っていた。

「ふぅ……ふぅ……」

 ファルマーは王国の外での仕事が多いので、報告のたびに長官のいる最上階に登っている。他の魔術師は長官室とは別のところで報告すれば良いのだが、ファルマーの直属の上司は魔術省長官になっているので、登るしかない。
 休むことなく登り続けると、長官がいる部屋まではもう少し。通路の隅の方に避けて息を整える。滴る汗を拭きながら、乱れた服装をもう一度直す。ファルマーの白い髪に赤い瞳はこの王国でも、他の国でも不吉の象徴として扱われる。そんなファルマーを他の人と変わらずに接してくれるのは長官であるアマギウスだけだった。

 コンコン……。

「どうぞ」

「……失礼します」

 室内に入るとアマギウスは自身の席でコーヒーを飲んでいるところだった。

「戻ったのか、ファルマー。無事で何よりだよ」

「ありがとうございます」

「君以外のチームはすでに一度帰国して、もう一度出立してもらっているよ。報告が済んだら少し休むといい。帰還が遅くなったのも別に問題にする気はないよ」

 アマギウスはファルマーに座るように言う。

「それじゃあ報告を聞こうかな。何があったんだい?」

 ファルマーの前にコーヒーを用意したアマギウスも座り、ファルマーは幻惑の森で起きたことを話していった。
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