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魔法薬の調合

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 魔力水の量は減ってしまったが、おそらくこれが本来魔法薬に必要な魔力水だと判断して、奏はアロエを最初と同じようにカットし、三種類目の魔力水の中に入れていく。いろいろな方法を試してみたのだが、どの方法でも効果は今の所変わりがないので、ひとまず皮を剥いて小さく切るだけにしておく。
 ぽちゃぽちゃと音をたてながら鍋の中に入っていったアロエは、火にかけていないにも関わらず魔力水にうっすらと青色を移していった。

(それにしても、なんでアロエを入れたら青色になるんだろ?)
 
 鍋をコンロに戻して再度火を入れる。くるくると鍋の中を混ぜながら奏は考えていると、しだいにアロエは無くなっていって、沸騰するころには青色の液体だけになっていた。最初に作った【不思議な魔法薬】とは違い、今度はしっかりと色がついている。ただ、ファルマーが置いていってくれた【中級治癒魔法薬】の色よりも濃く、鮮やかな色になっている気がする。
 沸騰している状態からさらに煮詰め、色の変化が落ち着いてきた段階で火を止める。鍋から別の容器へと移し、氷水を張ったボウルを使って冷ましておく。
 奏はその間にもう一つ大きな鍋を取り出すと、三種類目の魔力水を量産するために必要な材料をまとめた。

(魔力水だけで三種類あるのって、どれがどれのことかわからないとやりにくいな……)

 奏は最初に作った、魔石の粉末を混ぜたものを【下位魔力水】、【下位魔力水】にウルタナ草を混ぜて沸騰するまで火を入れたものを【中位魔力水】、【中位魔力水】を鍋の半分くらいの量まで煮詰めたものを【上位魔力水】と名づけることにした。
 この家にはタイマーもなければ時計もない、どのくらいの時間煮詰めたらいいのかわからないため、火の側から離れられない。奏は大きな鍋の中に、樽の中にあった【下位魔力水】を最初に使った鍋を使って移していく。大きな鍋には小さい鍋に比べて大体十杯分の量が入ったので、最初に使ったウルタナ草の約十倍、二鉢分を加える。
 それから火にかけると、大きい鍋なのに小さい鍋と変わらない感覚で表面がふつふつし始めた。どうやら鍋自体も■■■■■・■■■■■■■■が作ったものの特別製であった。

【不鍋】
 破壊不可が付与された鍋。変形せず、すぐに火が巡る仕様になっている。■■■■■・■■■■■■■■の奥さんの希望で制作した。

 それでも魔力水が濃縮されるまでまだ時間がかかるので、奏は冷えた魔法薬を叡智の書で確認してみる。

【治癒魔法薬(傷・火傷)】
 患部にふりかけることで症状を改善する効果がある。

「で、できたぁぁ……!!」

 出来上がった魔法薬はクリアブルーのような綺麗な青色へと変化していた。ファルマーのくれた魔法薬とはまた別物ができてしまったのだが、奏が今まで生成した中では一番の出来だとわかる。瓶に移すと約二本分くらいしか完成しなかったが、それは今後増やしていけばいい。
 完成品を見た奏は急に身体の力が抜けてしまい、椅子に座り込む。外を見るとすでに日も落ちてあたりは真っ暗になっていたので、今日はここまでにして残りは明日続きを始めることにした。鍋の火を落とし、蓋をしておき、奏は着替えも忘れて布団へと飛び込む。

「つ、疲れた……もう残りは今度……」

 そう呟いた奏は深い眠りへと落ちていった。
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