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■■■■■・■■■■■■■■が残したもの

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「……やっと辿り着きました」

 アフィラーディ王国を出てから数ヶ月。ファルマーは探していた魔境の一つである【幻惑の森】へ入ることに成功していた。
 ファルマーの所属している魔術省が王国から受けた命令はただ一つ、勇者召喚の痕跡を調べることだ。
 約半年前、最初に召喚されたであろう勇者マコト様が現れてから、順番は不明であるが不定期にこれまで合わせて九人の勇者様がこの世界に召喚されていた。どの勇者もこの世界を支配しているという魔女を倒すために、女神によって召喚されたと聞いている。
 王国側が勇者召喚の痕跡を調べるのは、昔からある伝承の為である。
 はるか昔、アフィラーディ王国の初代国王の時代にも、複数人の魔女が世界を支配しようと暴れ、この世の人々全てを震え上がらせていた。そんな時、女神によって召喚された十人の勇者様によって悪しき魔女は討ち果たされ、世界に平穏が訪れたという。
 昔の魔女達は結託しているのだが、今期の魔女に結託しているような様子は見受けられず、各々で自由に動き回っているようだ。
 それでも被害は深刻で、王国でも魔女の討伐に力を入れてはいるが思うような成果を挙げられていなかった。国は疲弊していき、王国騎士団も魔術省もろくな成果をあげられずにいた。
 そんな中で今回も九人の勇者様がすでに姿を見せて、国民に希望を持たせてくれたのだ。
 伝承では、勇者様は女神から特別な武具を得てこの世に現れているらしく、実際にあったマコト様も今まで見たことのない装備をしていて、既に魔女が解き放った魔獣を討伐するなどの成果を挙げていた。
 王国は、この武具が手に入れば国の騎士でも魔女を倒せるのではと考えているようだった。
 いったいいつの段階でそういった武具を手に入れているのかは伝承ではわからなかったのだが、今回の勇者様達の話で明らかになったのだ。

「本当にこんな魔境にあるのでしょうか……」

 話を聞けた勇者様達曰く、最初に目が覚めた時は森の中で、目の前に小屋のような家があったという。そこで女神からのお告げで、世界を救うために呼ばれたと知り小屋から武具を見繕って、森から出たらもう戻れなくなったらしい。
 武具とは別に、恩恵と呼ばれるものも授かったようで、それだけでも一騎当千の力を見せつけていた。
 流石に恩恵は召喚された勇者だけしか使えないだろうが、もし小屋さえ見つかれば勇者の使う武具が手に入るかもしれない。
 魔法省と王国騎士団が競うようにその場所を探している。
 もう戻れないという森の中という情報を重視し、魔法省はまず魔境の一つである幻惑の森を調査することを決めたのだ。
 森から出た勇者様達は、揃って同じ場所に現れることはなく、世界中の至る所で発見された。それは幻惑の森から出た時と同じ状況だったからだ。

「しかし、こうも魔物が多いと厄介です……」

 この森の魔物は一部の魔物を除き同族でさえ共食いをするほど危険なエリアで生きているからか、出会い頭に気がつく前に隣人が死んでいることなんてむしろ普通の状況である。ファルマーは一人で行動しているが、むしろ一人の方が警戒しながら進めると思っていた。
 ファルマーは魔術省の中でも、それなりに強力な魔術師である。それは彼女自身も自覚していた。しかし、魔術省では腫れ物扱いを受けている。
 理由は、その見た目からだった。
 白い髪に赤い瞳という、珍しい外見をしているというだけで、ファルマーは幼少期からいじめに似た扱いを受けている。
 人と違うだけで不気味だという理由で、彼女とまともに接するのは両親しかいなかった。やがてその両親も事故により亡くなってしまうのだが、そのことでさえファルマーがいたからだと言われるようになり、彼女は塞ぎこむようになってしまった。
 それでもめげずに努力を重ねて、死んでしまった両親に恥じないようにと頑張り続け、現在の地位を獲得するに至った。だが、そんなファルマーに親切にするものはおらず、彼女はいつも一人で行動している。
 一人でも活動できるようにと、ファルマーは自らも他者に対して壁を作ってしまい、そして優秀な魔術師になった。
 そんな彼女を今ではいじめたりする者はいないけれど、親しくするものもいない。
 ファルマーは他人に期待しない。そうして生きてきたのだった。
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