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烈風という名の冒険者パーティ
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「いやぁもう食えねぇなっ! 腹いっぱいだぜ!」
「……満腹」
奏の魔法の練習が一段落ついた頃、リータとガルマもやっと食事が終わったようで満足そうに寛いでいる。奏が持ってきていたスープに果物は綺麗に平らげてしまい、残っているのは洗い物しかなかった。
「あのスープは絶品でしたね。今まで食べた中で過去一番美味しかったと思います」
エルレインが奏の作ったスープを評価すると、他の三人もあれこれと褒めてくれた。
(……ファルマーの時も思ったんだけど、ちょっと反応が大袈裟な気がするのは気のせい……?)
奏からしたら確かにスープは美味しいと思う。素材の味が濃い故に満足できているけれど、調味料があったらもっと美味しく作れる気がする。
できれば最優先で欲しいのは塩。それからバターだろうか……。
塩は岩塩か、海水を蒸発して作るっていうことしかわからないけど、ここでは入手するのは無理だろう。同じ理由でバターも作れない。
(種子の宝箱で何かできないだろうか……今度試してみないと)
ファルマーが来た時もそうだったが、誰かと会話をすると新しい発見があって面白い。ファルマーが帰ってから数ヶ月くらいが経つだろうか。元気にしているといいのだけど……。
「あぁ~……これで酒があればいうことないんだけどなぁ」
流石にお酒はないことをリータに伝えると、ガックリと頭を落としてしまう。お酒の準備はできないけれど、ゆずで作った果実ジュースを出したら結構気に入ってくれたようだ。
みんなが羨ましそうに奏を見つめる。もともと全員に出す予定だったので、コップに注いで行った。そこの庭で採れた果物で作ったジュースだとわかると、エルレインは強い興味を持ったようだった。
「あの……カナデ。あそこの庭で育てている植物は、あなたが育てられたのですか?」
「はい、そうですけど……」
「ぜひ! 見させて頂いてもよろしいでしょうか!?」
「あ、はい。どうぞ……」
奏はエルレインの勢いに気圧されるまま、庭まで案内した。彼女の興味を引いたのは野菜ではなく、りんごやみかんなどが成っている果実樹の方だった。ガルマもその後ろからついて来て一緒に眺めている。奏は二人の邪魔をしないように元の場所に戻ると、リータとマンチが使った食器を片付けているところだった。
奏も手伝おうとしたのだが、座って休んでてくれと言われてしまったので、大人しく座る。
「ここには、あなたしか住んでいないんですか?」
「そうですよ。のんびり生活してます」
「のんびりって……。ここは魔境の一つだぜ?」
「肝の座った方ですね……」
なぜか呆れたような視線を感じるが、奏からしてみればこの家から出た方が危険なのだ。叡智の書で自分を確認したけれど、ほとんど成長していないのだからしょうがない。
「……満腹」
奏の魔法の練習が一段落ついた頃、リータとガルマもやっと食事が終わったようで満足そうに寛いでいる。奏が持ってきていたスープに果物は綺麗に平らげてしまい、残っているのは洗い物しかなかった。
「あのスープは絶品でしたね。今まで食べた中で過去一番美味しかったと思います」
エルレインが奏の作ったスープを評価すると、他の三人もあれこれと褒めてくれた。
(……ファルマーの時も思ったんだけど、ちょっと反応が大袈裟な気がするのは気のせい……?)
奏からしたら確かにスープは美味しいと思う。素材の味が濃い故に満足できているけれど、調味料があったらもっと美味しく作れる気がする。
できれば最優先で欲しいのは塩。それからバターだろうか……。
塩は岩塩か、海水を蒸発して作るっていうことしかわからないけど、ここでは入手するのは無理だろう。同じ理由でバターも作れない。
(種子の宝箱で何かできないだろうか……今度試してみないと)
ファルマーが来た時もそうだったが、誰かと会話をすると新しい発見があって面白い。ファルマーが帰ってから数ヶ月くらいが経つだろうか。元気にしているといいのだけど……。
「あぁ~……これで酒があればいうことないんだけどなぁ」
流石にお酒はないことをリータに伝えると、ガックリと頭を落としてしまう。お酒の準備はできないけれど、ゆずで作った果実ジュースを出したら結構気に入ってくれたようだ。
みんなが羨ましそうに奏を見つめる。もともと全員に出す予定だったので、コップに注いで行った。そこの庭で採れた果物で作ったジュースだとわかると、エルレインは強い興味を持ったようだった。
「あの……カナデ。あそこの庭で育てている植物は、あなたが育てられたのですか?」
「はい、そうですけど……」
「ぜひ! 見させて頂いてもよろしいでしょうか!?」
「あ、はい。どうぞ……」
奏はエルレインの勢いに気圧されるまま、庭まで案内した。彼女の興味を引いたのは野菜ではなく、りんごやみかんなどが成っている果実樹の方だった。ガルマもその後ろからついて来て一緒に眺めている。奏は二人の邪魔をしないように元の場所に戻ると、リータとマンチが使った食器を片付けているところだった。
奏も手伝おうとしたのだが、座って休んでてくれと言われてしまったので、大人しく座る。
「ここには、あなたしか住んでいないんですか?」
「そうですよ。のんびり生活してます」
「のんびりって……。ここは魔境の一つだぜ?」
「肝の座った方ですね……」
なぜか呆れたような視線を感じるが、奏からしてみればこの家から出た方が危険なのだ。叡智の書で自分を確認したけれど、ほとんど成長していないのだからしょうがない。
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