187 / 316
さて準備かな
同じではないが、違う血液型を輸血したと想像すると分かりやすいかもしれない:emulate
しおりを挟む
「君たちは感覚的に魔力の流れを感知できている。うん。その歳でそれができるのは、凄いことだから誇っていいよ」
カップと金属板をどこかにしまい、魔晶石と魔石をお手玉するソフィアは、「けれど」と続ける。
「酷な事を要求するよ。それだと、君たちは守れない」
お手玉をやめ、真剣に俺たちを見る。
「今、見てもらったのは魔晶石と魔石が自然環境内でどうやって形成されるかの再現に近い。もちろん、実際は粒子状の魔力などなく、全ては非実体なんだけどね」
「わわっ!」
「急に投げないでよっ!」
ソファが俺たちに魔晶石と魔石を投げる。ライン兄さんが魔晶石を、俺が魔石を受け止める。
「その形成の違いは君たちが考えること。ボクは教えないよ。まぁ違いを知らなくても問題はないからね」
「え、待って。じゃあ、ここまでの流れって何だったの?」
ライン兄さんが胡乱な瞳をソフィアに向ける。これまでが無駄なのはあり得ず、絶対に意図があったはずだ。
「ただの与太話さ」
ソフィアがニシシッと笑う。一転、真面目な表情をする。
「さて、一番最初に言った通り、二人には互いの体内魔力を感じて、それを隠蔽してもらう。はい、二人とも向き合って」
「え、あ、うん」
「……せっかちだなぁ」
まだ、体内魔力等々の違いも分かってないんだが……
いつも通り魔力感知をすればいいのか?
と、思っていたらソフィアが向かった俺たちの手を掴む。
「じゃあ、両手を繋いで。そう。じゃあ、ボクが二人の体内魔力を操作するから、感知してね」
「ちょ――ッ!」
「うぇっ!」
気持ち悪い。
なんだ、これ。
俺の魔力が無理やり動いているのもそうだが、ライン兄さんの魔力……いや、今まで感じていた魔力とは感覚的に全てが違うけど、それでも思わず拒否反応がでる魔力が流れてくる。
気持ち悪い。気持ち悪い。
吐きそう。
一秒か、十秒か。どっちにしろ、一分は立っていないだろう。
「はい。やめ」
「はぁはぁはぁはぁ」
「なに、これ……気持ち悪い」
ライン兄さんと俺はその場で膝を突き、倒れ込む。どばっと冷や汗がいっぱい出て、気持ち悪い。不快だ。
「……思ったよりも過敏だね。だとしたら……っと、ほら、水。ゆっくり飲みな」
「……ん」
「……分かった」
いつの間にか、ソフィアは水が入った二つの木製のコップを持っていて、俺たちはそれを受け取る。
恐る恐る口に着け、ゆっくり飲む。
「……ふぅ」
清涼感が広がる。先ほどまでの気持ち悪さは消え去り、澄み切った爽やかさが心の奥底から広がる。
ライン兄さんも同じだったのか、ふぃ~と頬を緩ませていた。
と、思ったら。
「はい、もう一度向かって」
「え、待って。どういう――」
「やだっ。あれ、気持ちわ――」
「つべこべ言わない」
流石にあれをまた味わいたいと思わない。俺たちはバッとその場から逃げようとしたが、
「ボクから逃げられるとは思わない方がいいよ。自慢じゃないけど、追いかけっこではロイス君たちにすら負けたことないから」
瞬きした一瞬には、俺とライン兄さんは向かい合わせられた。
そして、
「ッッッ!」
「もう嫌だっ!」
また、気持ち悪いのが流れてくる。流れてくる。
それに、さっきよりも明瞭だ。異物が体に侵入しているのが、ありありと理解できる。異物だから、それを吐き出そうと自分の魔力を放出して押し出そうとするが、ソフィアに魔力制御権を奪われていて、それができない。
“研究室”もさっきから呼びかけても反応してくれない。
そうしてまた一分も経たずして、
「よし」
「ッァ! ……ハァハァハァ」
「カッ! ……もう、や……だ。かえる。いえにか……える」
かき乱された魔力を必死に制御して、俺は分身を五体、召喚。ソフィアに向かって全力全開の魔術を発動。
ごめん、ライン兄さん。見捨てるっ!
ライン兄さんを巻き込んだことに涙しながら、俺は浮遊魔術と風魔術を合成して、一気に上昇。風の膜を張って己を守り、家へと飛翔しようとした瞬間、
「言ったよね、ボクから逃げられないって」
「どうしてっ!?」
俺はソフィアの前で正座していた。今まで上空にいたはずなのに、気づいた時には河原で正座させられていたのだ。
どうやったのか、皆目見当もつかない。
ソフィアが申し訳なさそうに、眉を八の字にしながら、
「ボクだって嫌だよ。苦しいのは知ってるし」
「な、なら……」
「けど、時に心を鬼にしなくてはいけないんだ。それに君たちも苦しみは早く終わる方がいいでしょ?」
笑みだ。恐ろしい笑みだ。怖い、ヤバい。鬼だ。マジで、一番スパルタだ。
ライン兄さんの方を見る。
「ら、ライン兄さんっ!」
「……逃げられないよ。僕たち、恐ろしい人の前にいるんだよ……ハハ」
諦めた様子だった。全てを受け入れる事にしたらしい。
え、マジでっ!? ライン兄さんがっ! 嫌なことがあったら、俺以上に逃げようとするライン兄さんがっ!?
「じゃあ、また再開するよ」
「いやだーーーー!!!!」
地獄があった。
Φ
グスグスと泣き声が夜に響く。少し離れたところでは、おっさんたちBBQを堪能している声が響く。
「ふ、二人とも。ね、あれは今日で終わりだし、機嫌直して、ね」
「……やだ」
「……嫌い。あっち行って」
「わ、分かっていたけど、つ、つらい」
河原にあった大きな岩の影で俺とライン兄さんは閉じこもる。マジで、ソフィアの顔なんて見たくない。
もう嫌だ。
ライン兄さんの魔力を無理やり体内に注がれて、それが数時間。残り最後は、ライン兄さんの魔力を俺が操作して、体外に放出される魔力の隠蔽をする。これも強制的にさせられる。
もう嫌だった。気持ち悪いし、吐き気が止まらないし、いくら俺たちが根を上げても問答無用。
今はだいぶ収まって落ち着いたけど、あんな思いはもう二度と味わいたくない。
ソフィアは嫌いだ。
「ほ、ほら。ボクが嫌なのは分かるけど、ごはん、夕食、食べよ? ボクは席を外すからさ。ね?」
いい匂いが漂う。肉だ。焼肉だ。どうやら俺たちを誘おうとしているらしい。
ハンッ。そんなので俺らがつられるわけがないだろ。
っつか、食べられない。食べたくない。
めちゃくちゃ疲れているのに、眼だけがギンギンにさえていて寝れないし、けどだからといってお腹に何も入れたくない。入れたら吐く。気持ち悪い。
「持たないよ。今日ので食欲がないのはわかるけど、ね。明日まで持たないからさ、お願い。食べよ」
「「……」」
ギュっと体育座りして顔を膝に押し付ける。何も聞きたくない。
と、思ったらザッと大きな足音が聞こえ、
「喰え、坊主たち」
「やっ!」
「離せ、アランっ!」
巨漢に首根っこを掴まれ、担がれる。ライン兄さんと同時に手足をバタバタとさせ、暴れるがびくともしない。
諦めて、目を瞑り全てをシャットアウトしようとする。
「ソフィア。坊主たちは俺に任せて、お前はもう休め。顔色が相当悪い。あ、置いてある仙茶と冷暗薬、キチンと飲めよ。お前が一番負担があったんだしな」
「……ありがとう」
…………………………
ソフィアが消えた。
ずんずんと歩くアランの振動だけが伝わる。
アランがポツリと呟く。
「魔法は遺伝する。何故か分かるか?」
「「……」」
嫌だ、何も聞きたくない。
「魔力が遺伝するからだ。魔力の波長、色、性質。それらによって属性変換のしすさが決まる。もちろん、だからといってセオのように属性変換が難しい魔力性質を持った子も産まれる。だが、母親と父親の魔力が合わさるから、必ず同じ部分――核が同様なんだ」
沢のせせらぎが響く。夜のせせらぎだ。
「なぁ、セオ。お前、魔石の魔力を体内に取り入れたことはあるか? 魔法の補助で使う際、無意識に魔晶石と魔石で魔力の制御を変えなかったか? 魔晶石は体内に取り入れて、魔石は外で操作しただろ?」
パチパチと火の粉が弾ける音が聞こえる。
「自然魔力は特有の核、いわば己を持たない。存在を持たない。だから、体内に取り込んでも問題ない。そもそも、魔力回復は自身の体内エネルギーの変換以外に、空気中の自然魔力の吸収もあるからだ」
アランの体が暖かい。筋肉モリモリだからか、ホッカホカだ。
「だが、魔石は魔物――生物の魔力が凝縮したものだ。己がある。絶対の個があるんだ」
早春の寒く、それでも柔らかい夜風が頬を撫でた。
「そりゃあ、拒絶反応がでるんだ。お前らは賢いからやったことはないかと思うが、口の中に長いものを入れてみろ。おえってなって吐くだろ? セオは兎も角、ライン。お前は熱になったことあるだろ? あれは異物を排除する反応だ」
肉が焼ける匂いがする。野菜が焼ける匂いがする。
「お前らは家族だ。だから、それでも拒絶反応は少ない。己の部分の性質がだいぶ似通っているからだ」
焚火に影が揺らめいていた。
「だが、ソフィアは違う。家族ではないし、まして種族も違う」
おっさんたちが騒ぎ明かしていた。
「アイツは感知と制御に優れたやつだ。だから、子供の肉体でも耐えられるように拒絶反応を調整できる。微弱な反応の違いを一瞬で訂正できる」
夜空は澄んでいて、幾星霜の星々が浮かんでいた。
「けれど、アイツは自分をおざなりにする。お前らに全力を注ぐ」
へろへろと歩くソフィアが小さなテントに入っていく様子が見えた。
「お前らは賢い。聡い。なら、酷だが感情のままに世界を狭めるな。感情をないがしろにせず、けれど公平な杓子で世界を広げろ」
俺たちは席に降ろされた。座らされた。
目の前の簡易テーブルには、お米ではない穀物が入った薬膳らしきスープと、幾つかの果物があって、
『ゆっくり食べなよ』
そう書置きがあった。
カップと金属板をどこかにしまい、魔晶石と魔石をお手玉するソフィアは、「けれど」と続ける。
「酷な事を要求するよ。それだと、君たちは守れない」
お手玉をやめ、真剣に俺たちを見る。
「今、見てもらったのは魔晶石と魔石が自然環境内でどうやって形成されるかの再現に近い。もちろん、実際は粒子状の魔力などなく、全ては非実体なんだけどね」
「わわっ!」
「急に投げないでよっ!」
ソファが俺たちに魔晶石と魔石を投げる。ライン兄さんが魔晶石を、俺が魔石を受け止める。
「その形成の違いは君たちが考えること。ボクは教えないよ。まぁ違いを知らなくても問題はないからね」
「え、待って。じゃあ、ここまでの流れって何だったの?」
ライン兄さんが胡乱な瞳をソフィアに向ける。これまでが無駄なのはあり得ず、絶対に意図があったはずだ。
「ただの与太話さ」
ソフィアがニシシッと笑う。一転、真面目な表情をする。
「さて、一番最初に言った通り、二人には互いの体内魔力を感じて、それを隠蔽してもらう。はい、二人とも向き合って」
「え、あ、うん」
「……せっかちだなぁ」
まだ、体内魔力等々の違いも分かってないんだが……
いつも通り魔力感知をすればいいのか?
と、思っていたらソフィアが向かった俺たちの手を掴む。
「じゃあ、両手を繋いで。そう。じゃあ、ボクが二人の体内魔力を操作するから、感知してね」
「ちょ――ッ!」
「うぇっ!」
気持ち悪い。
なんだ、これ。
俺の魔力が無理やり動いているのもそうだが、ライン兄さんの魔力……いや、今まで感じていた魔力とは感覚的に全てが違うけど、それでも思わず拒否反応がでる魔力が流れてくる。
気持ち悪い。気持ち悪い。
吐きそう。
一秒か、十秒か。どっちにしろ、一分は立っていないだろう。
「はい。やめ」
「はぁはぁはぁはぁ」
「なに、これ……気持ち悪い」
ライン兄さんと俺はその場で膝を突き、倒れ込む。どばっと冷や汗がいっぱい出て、気持ち悪い。不快だ。
「……思ったよりも過敏だね。だとしたら……っと、ほら、水。ゆっくり飲みな」
「……ん」
「……分かった」
いつの間にか、ソフィアは水が入った二つの木製のコップを持っていて、俺たちはそれを受け取る。
恐る恐る口に着け、ゆっくり飲む。
「……ふぅ」
清涼感が広がる。先ほどまでの気持ち悪さは消え去り、澄み切った爽やかさが心の奥底から広がる。
ライン兄さんも同じだったのか、ふぃ~と頬を緩ませていた。
と、思ったら。
「はい、もう一度向かって」
「え、待って。どういう――」
「やだっ。あれ、気持ちわ――」
「つべこべ言わない」
流石にあれをまた味わいたいと思わない。俺たちはバッとその場から逃げようとしたが、
「ボクから逃げられるとは思わない方がいいよ。自慢じゃないけど、追いかけっこではロイス君たちにすら負けたことないから」
瞬きした一瞬には、俺とライン兄さんは向かい合わせられた。
そして、
「ッッッ!」
「もう嫌だっ!」
また、気持ち悪いのが流れてくる。流れてくる。
それに、さっきよりも明瞭だ。異物が体に侵入しているのが、ありありと理解できる。異物だから、それを吐き出そうと自分の魔力を放出して押し出そうとするが、ソフィアに魔力制御権を奪われていて、それができない。
“研究室”もさっきから呼びかけても反応してくれない。
そうしてまた一分も経たずして、
「よし」
「ッァ! ……ハァハァハァ」
「カッ! ……もう、や……だ。かえる。いえにか……える」
かき乱された魔力を必死に制御して、俺は分身を五体、召喚。ソフィアに向かって全力全開の魔術を発動。
ごめん、ライン兄さん。見捨てるっ!
ライン兄さんを巻き込んだことに涙しながら、俺は浮遊魔術と風魔術を合成して、一気に上昇。風の膜を張って己を守り、家へと飛翔しようとした瞬間、
「言ったよね、ボクから逃げられないって」
「どうしてっ!?」
俺はソフィアの前で正座していた。今まで上空にいたはずなのに、気づいた時には河原で正座させられていたのだ。
どうやったのか、皆目見当もつかない。
ソフィアが申し訳なさそうに、眉を八の字にしながら、
「ボクだって嫌だよ。苦しいのは知ってるし」
「な、なら……」
「けど、時に心を鬼にしなくてはいけないんだ。それに君たちも苦しみは早く終わる方がいいでしょ?」
笑みだ。恐ろしい笑みだ。怖い、ヤバい。鬼だ。マジで、一番スパルタだ。
ライン兄さんの方を見る。
「ら、ライン兄さんっ!」
「……逃げられないよ。僕たち、恐ろしい人の前にいるんだよ……ハハ」
諦めた様子だった。全てを受け入れる事にしたらしい。
え、マジでっ!? ライン兄さんがっ! 嫌なことがあったら、俺以上に逃げようとするライン兄さんがっ!?
「じゃあ、また再開するよ」
「いやだーーーー!!!!」
地獄があった。
Φ
グスグスと泣き声が夜に響く。少し離れたところでは、おっさんたちBBQを堪能している声が響く。
「ふ、二人とも。ね、あれは今日で終わりだし、機嫌直して、ね」
「……やだ」
「……嫌い。あっち行って」
「わ、分かっていたけど、つ、つらい」
河原にあった大きな岩の影で俺とライン兄さんは閉じこもる。マジで、ソフィアの顔なんて見たくない。
もう嫌だ。
ライン兄さんの魔力を無理やり体内に注がれて、それが数時間。残り最後は、ライン兄さんの魔力を俺が操作して、体外に放出される魔力の隠蔽をする。これも強制的にさせられる。
もう嫌だった。気持ち悪いし、吐き気が止まらないし、いくら俺たちが根を上げても問答無用。
今はだいぶ収まって落ち着いたけど、あんな思いはもう二度と味わいたくない。
ソフィアは嫌いだ。
「ほ、ほら。ボクが嫌なのは分かるけど、ごはん、夕食、食べよ? ボクは席を外すからさ。ね?」
いい匂いが漂う。肉だ。焼肉だ。どうやら俺たちを誘おうとしているらしい。
ハンッ。そんなので俺らがつられるわけがないだろ。
っつか、食べられない。食べたくない。
めちゃくちゃ疲れているのに、眼だけがギンギンにさえていて寝れないし、けどだからといってお腹に何も入れたくない。入れたら吐く。気持ち悪い。
「持たないよ。今日ので食欲がないのはわかるけど、ね。明日まで持たないからさ、お願い。食べよ」
「「……」」
ギュっと体育座りして顔を膝に押し付ける。何も聞きたくない。
と、思ったらザッと大きな足音が聞こえ、
「喰え、坊主たち」
「やっ!」
「離せ、アランっ!」
巨漢に首根っこを掴まれ、担がれる。ライン兄さんと同時に手足をバタバタとさせ、暴れるがびくともしない。
諦めて、目を瞑り全てをシャットアウトしようとする。
「ソフィア。坊主たちは俺に任せて、お前はもう休め。顔色が相当悪い。あ、置いてある仙茶と冷暗薬、キチンと飲めよ。お前が一番負担があったんだしな」
「……ありがとう」
…………………………
ソフィアが消えた。
ずんずんと歩くアランの振動だけが伝わる。
アランがポツリと呟く。
「魔法は遺伝する。何故か分かるか?」
「「……」」
嫌だ、何も聞きたくない。
「魔力が遺伝するからだ。魔力の波長、色、性質。それらによって属性変換のしすさが決まる。もちろん、だからといってセオのように属性変換が難しい魔力性質を持った子も産まれる。だが、母親と父親の魔力が合わさるから、必ず同じ部分――核が同様なんだ」
沢のせせらぎが響く。夜のせせらぎだ。
「なぁ、セオ。お前、魔石の魔力を体内に取り入れたことはあるか? 魔法の補助で使う際、無意識に魔晶石と魔石で魔力の制御を変えなかったか? 魔晶石は体内に取り入れて、魔石は外で操作しただろ?」
パチパチと火の粉が弾ける音が聞こえる。
「自然魔力は特有の核、いわば己を持たない。存在を持たない。だから、体内に取り込んでも問題ない。そもそも、魔力回復は自身の体内エネルギーの変換以外に、空気中の自然魔力の吸収もあるからだ」
アランの体が暖かい。筋肉モリモリだからか、ホッカホカだ。
「だが、魔石は魔物――生物の魔力が凝縮したものだ。己がある。絶対の個があるんだ」
早春の寒く、それでも柔らかい夜風が頬を撫でた。
「そりゃあ、拒絶反応がでるんだ。お前らは賢いからやったことはないかと思うが、口の中に長いものを入れてみろ。おえってなって吐くだろ? セオは兎も角、ライン。お前は熱になったことあるだろ? あれは異物を排除する反応だ」
肉が焼ける匂いがする。野菜が焼ける匂いがする。
「お前らは家族だ。だから、それでも拒絶反応は少ない。己の部分の性質がだいぶ似通っているからだ」
焚火に影が揺らめいていた。
「だが、ソフィアは違う。家族ではないし、まして種族も違う」
おっさんたちが騒ぎ明かしていた。
「アイツは感知と制御に優れたやつだ。だから、子供の肉体でも耐えられるように拒絶反応を調整できる。微弱な反応の違いを一瞬で訂正できる」
夜空は澄んでいて、幾星霜の星々が浮かんでいた。
「けれど、アイツは自分をおざなりにする。お前らに全力を注ぐ」
へろへろと歩くソフィアが小さなテントに入っていく様子が見えた。
「お前らは賢い。聡い。なら、酷だが感情のままに世界を狭めるな。感情をないがしろにせず、けれど公平な杓子で世界を広げろ」
俺たちは席に降ろされた。座らされた。
目の前の簡易テーブルには、お米ではない穀物が入った薬膳らしきスープと、幾つかの果物があって、
『ゆっくり食べなよ』
そう書置きがあった。
21
お気に入りに追加
841
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました
おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。
※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。
※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・)
更新はめっちゃ不定期です。
※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。
異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します
桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
引きこもり転生エルフ、仕方なく旅に出る
Greis
ファンタジー
旧題:引きこもり転生エルフ、強制的に旅に出される
・2021/10/29 第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞 こちらの賞をアルファポリス様から頂く事が出来ました。
実家暮らし、25歳のぽっちゃり会社員の俺は、日ごろの不摂生がたたり、読書中に死亡。転生先は、剣と魔法の世界の一種族、エルフだ。一分一秒も無駄にできない前世に比べると、だいぶのんびりしている今世の生活の方が、自分に合っていた。次第に、兄や姉、友人などが、見分のために外に出ていくのを見送る俺を、心配しだす両親や師匠たち。そしてついに、(強制的に)旅に出ることになりました。
※のんびり進むので、戦闘に関しては、話数が進んでからになりますので、ご注意ください。
「残念でした~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~ん笑」と女神に言われ異世界転生させられましたが、転移先がレベルアップの実の宝庫でした
御浦祥太
ファンタジー
どこにでもいる高校生、朝比奈結人《あさひなゆいと》は修学旅行で京都を訪れた際に、突然清水寺から落下してしまう。不思議な空間にワープした結人は女神を名乗る女性に会い、自分がこれから異世界転生することを告げられる。
異世界と聞いて結人は、何かチートのような特別なスキルがもらえるのか女神に尋ねるが、返ってきたのは「残念でした~~。レベル1だしチートスキルなんてありませ~~ん(笑)」という強烈な言葉だった。
女神の言葉に落胆しつつも異世界に転生させられる結人。
――しかし、彼は知らなかった。
転移先がまさかの禁断のレベルアップの実の群生地であり、その実を食べることで自身のレベルが世界最高となることを――
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる