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一年
巨土の王:this summer
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俺たちの目の前には地下室の床と屋敷の床を繋いでいる円形の柱が数本、規則立って並んでいた。それは区画を分けるように綺麗に並んでいた。
もちろん、工房の部屋を作り出す基礎的な支柱である。
「じゃあ、次は支柱を中心とした壁だね」
一作業終わり、俺はロイス父さんに次の工程を確認する。
「そうだね。セオ。壁の圧縮度や重点配置などは覚えているよね」
ロイス父さんはふぅと一息つきながら言った。イケメンなのでとても爽やかだった。やはり凄い。
「うん、もちろん」
支柱を最初に作ったのは地下空間が屋敷の自重などによって潰れないためだ。しかし、それだけでは地下空間が潰れなくても、屋敷の床が抜けてしまったり、傾いたりしてしまう。
なので、床などが抜けないために壁などを作り、力を分散させて下に流す必要があるのだ。その時に重要になるのは重点をどう配分させるか。
これは昨日、アテナ母さんや"研究室"によって念密に計算された。俺はその辺の計算はさっぱりである。素養の違いが表れている。
本当は支柱も色々な種類に分かれていて、それ別に立てる必要があるのだがそこは魔法に頼る。
「じゃあ、作ろうか」
ロイス父さんは、地面に手を付けながら言う。じゃっかんの汗が滴りとても絵になっている。
「うん」
俺はそんなロイス父さんに頷きながら深緑色に輝く魔法陣を出現させ、土魔術を行使する。ロイス父さんは金髪に恥じない陽光の魔力が体から迸りながら土魔法を行使する。
まぁ、見た目の割りに放出している魔力は少ない。相変わらず派手な魔力光である。本人は治すつもりはないらしい。
しかし、今のままだと壁が作れるまで時間がかかりそうである。遠くを見るとレモンたちは壁の半分以上を生成しているようだし、アテナ母さんも順調に物事を進めているようである。
よし、あれを試してみるか。"研究室"との連帯も修練していたし。
じゃあ、"研究室"よろしくね。俺は心の裡に言う。
――了解しました――
そうすると、心の裡から返事が返ってくる。
それから、俺の周りにはさらに数々の深緑の魔法陣が浮き上がり、それが弧を描くように回転していく。
ロイス父さんは急に起った魔力の回転に若干の驚きを浮かべながらも、静観している。
ふふ、これからもっと面白い事が起こるんだけどな。
俺は心の中でロイス父さんの反応を楽しみにしながら、静観しているロイス父さんを尻目にさらに魔法陣を回転させていき、それらで概念的な魔法陣を作り出していく。
アテナ母さんが瞠目している。それは昨日見せた立体構造式と、まだ魔術では確立できていなかった連結方式が魔術として存在しているから。両方とも混合で合わさっているから。
俺は魔道具にできたことは魔術でもできると思っている。何故なら、そもそも魔術の方が源流であるから。現代では魔術が忘れられ、魔道具の技術だけが残った。それが俺の見解。現時点での俺の予想。
まぁ、それは置いといて、昨日、"研究室"に試算してもらい、それが現時点で実現可能だと判断していた。
なので、丁度いい機会である。土魔法は俺の研究範囲に近い魔法なので、よく情報収集しており、丁度いい魔法があるのだ。
しかも、それは聖級魔法なのだ。昨日までの俺は魔術を使っても土魔法単体だけでは上級までしか使えなかったが、今日ならできる。今日からできる。
これも日々の研究が実った結果である。
だから、完成する。
「――〝巨土の王〟」
特徴的な紋様を描く一つの魔法陣が、地面の上で大きな存在感を放つ。それを空中で回転しながら半円を描くように魔法陣が囲い込んでいく。それは何重にも重なり合い、星の輝きのように彩りを与えていく。
そして、そこから忽然と巌が聳え立つ土塊。それは胎動の様にうねりながら容を造っていく。やがてそれは巨人となり、王となった。
王は胡坐をかいて座っていて、しかしそれでも天井すれすれだ。目はなくまた口もなく、しかしのっぺりな顔は何故か厳つい顔を連想させ、身体は鋼鉄と見間違うほどの光沢をもった圧縮された土でできている。実際、とても硬く頑丈だ。
その土でできた腕は傲慢に胸の前で組まれていて、胡坐と相まってとてもカッコいい。脆弱とはいえ、自立意思を持つ魔法生物である。生きているみたいだ。
彼の王には大地の全てが従う威厳が、大地を戒める意思が、大地を鳴動させる覇気が空間を一瞬で脈動させ、移ろう様に優しさが溢れる。
「じゃあ、よろしくね」
俺はその王にお願いする。実にお使いを頼むくらいに軽い感じで頼む。傍から見たギャップが半端ではないが、しかしどんなに畏怖があろうとも、俺が造った存在である。というか、わざとこんな演出にしているし。本当は胡坐をかかないし、腕も組まない。
かっこいいじゃん。だから、演出は必要である。
と、そんな俺の内情は置いといて、王は俺のお願いに深く低く響く音と共に緩慢に頷く。そして、これまた傲慢に組んでいた腕を大気が轟かせる吹鳴を伴いながら解き、手のひらを地につける。
刹那。
壮大な地鳴りと共に地面から土の壁が這い出てきた。それはまだ、作られていない地下室の壁全てである。つまり、俺達の所だけでなくレモンやアテナ母さんの仕事も終わらせたのだ。全て設計図通り。
いや、さっきアテナ母さんに見せてもらった時に、“記録庫”で設計図全体を記録していたので、アテナ母さんが設計した部分の情報もキチンと手に入れてたのである。
しかし、最初は〝巨土の王〟を使うつもりはなかった。だって魔力消費量が膨大でとても疲れるから。また、〝巨土の王〟を行使することによって生じる轟音を遮断するための土魔術や風魔術を同時行使する必要があり、労力が凄いのだ。
聖級なので音が普通にヤバい。爆弾を落とした以上の雷鳴が響き渡るのだ。なので、それらを遮断するのに使う魔術の処理量が半端ない。
そのせいで目が充血し、頭痛がひどい。
しかしそれらを一切合切無視して、何か使いたくなったので使った。俺の迸る好奇心というか何というかが抑えきれなかったのだ。
ただ魔術を介したとはいえ、土魔法には一切の適性がないのに聖級を行使したのでめっちゃ怠い。倦怠感が阿保みたいにある。久しぶりに魔力を九割ほど使った。
けれど後悔はない。
そして俺の目の前では役目を果たした王がはらはらと儚く散っていった。あっけない。あれだけの魔力を注いだのに。
まぁ、当たり前か。初めての行使だったから耐久性に難あり。維持も注意。
でも。
「おー。やっぱすげぇ。流石は聖級魔法」
感嘆は漏れるわけで。また魔法に対して再度、畏怖を抱くわけで。そして、初めての単独属性魔法の聖級行使によって見えた欠点や改善点などがいっぱいあって、今後の展望に大きな開いて、とても充実した瞬間だった。
と、静観を決めていたが余りの出来事に呆然と突っ立ていたロイス父さんが、バッと俺を見る。目は殺気を伴うほど鋭い。
それと同時に壁が生成されたおかげで見えなくなっていたアテナ母さんが豪速で現れた。やはりこっちも瞳に殺気を宿している。
「セオ!? 一言、言いなさい!」
「セオ! あれは他所では使ってはいけないわ! いい、絶対よ!」
切羽詰まった感じで詰め寄る。もの凄い真剣な表情で、やべっと思った。
ただ二人とも声が大きくて、そして同時に言ったので内容が把握できなかった。
もちろん、工房の部屋を作り出す基礎的な支柱である。
「じゃあ、次は支柱を中心とした壁だね」
一作業終わり、俺はロイス父さんに次の工程を確認する。
「そうだね。セオ。壁の圧縮度や重点配置などは覚えているよね」
ロイス父さんはふぅと一息つきながら言った。イケメンなのでとても爽やかだった。やはり凄い。
「うん、もちろん」
支柱を最初に作ったのは地下空間が屋敷の自重などによって潰れないためだ。しかし、それだけでは地下空間が潰れなくても、屋敷の床が抜けてしまったり、傾いたりしてしまう。
なので、床などが抜けないために壁などを作り、力を分散させて下に流す必要があるのだ。その時に重要になるのは重点をどう配分させるか。
これは昨日、アテナ母さんや"研究室"によって念密に計算された。俺はその辺の計算はさっぱりである。素養の違いが表れている。
本当は支柱も色々な種類に分かれていて、それ別に立てる必要があるのだがそこは魔法に頼る。
「じゃあ、作ろうか」
ロイス父さんは、地面に手を付けながら言う。じゃっかんの汗が滴りとても絵になっている。
「うん」
俺はそんなロイス父さんに頷きながら深緑色に輝く魔法陣を出現させ、土魔術を行使する。ロイス父さんは金髪に恥じない陽光の魔力が体から迸りながら土魔法を行使する。
まぁ、見た目の割りに放出している魔力は少ない。相変わらず派手な魔力光である。本人は治すつもりはないらしい。
しかし、今のままだと壁が作れるまで時間がかかりそうである。遠くを見るとレモンたちは壁の半分以上を生成しているようだし、アテナ母さんも順調に物事を進めているようである。
よし、あれを試してみるか。"研究室"との連帯も修練していたし。
じゃあ、"研究室"よろしくね。俺は心の裡に言う。
――了解しました――
そうすると、心の裡から返事が返ってくる。
それから、俺の周りにはさらに数々の深緑の魔法陣が浮き上がり、それが弧を描くように回転していく。
ロイス父さんは急に起った魔力の回転に若干の驚きを浮かべながらも、静観している。
ふふ、これからもっと面白い事が起こるんだけどな。
俺は心の中でロイス父さんの反応を楽しみにしながら、静観しているロイス父さんを尻目にさらに魔法陣を回転させていき、それらで概念的な魔法陣を作り出していく。
アテナ母さんが瞠目している。それは昨日見せた立体構造式と、まだ魔術では確立できていなかった連結方式が魔術として存在しているから。両方とも混合で合わさっているから。
俺は魔道具にできたことは魔術でもできると思っている。何故なら、そもそも魔術の方が源流であるから。現代では魔術が忘れられ、魔道具の技術だけが残った。それが俺の見解。現時点での俺の予想。
まぁ、それは置いといて、昨日、"研究室"に試算してもらい、それが現時点で実現可能だと判断していた。
なので、丁度いい機会である。土魔法は俺の研究範囲に近い魔法なので、よく情報収集しており、丁度いい魔法があるのだ。
しかも、それは聖級魔法なのだ。昨日までの俺は魔術を使っても土魔法単体だけでは上級までしか使えなかったが、今日ならできる。今日からできる。
これも日々の研究が実った結果である。
だから、完成する。
「――〝巨土の王〟」
特徴的な紋様を描く一つの魔法陣が、地面の上で大きな存在感を放つ。それを空中で回転しながら半円を描くように魔法陣が囲い込んでいく。それは何重にも重なり合い、星の輝きのように彩りを与えていく。
そして、そこから忽然と巌が聳え立つ土塊。それは胎動の様にうねりながら容を造っていく。やがてそれは巨人となり、王となった。
王は胡坐をかいて座っていて、しかしそれでも天井すれすれだ。目はなくまた口もなく、しかしのっぺりな顔は何故か厳つい顔を連想させ、身体は鋼鉄と見間違うほどの光沢をもった圧縮された土でできている。実際、とても硬く頑丈だ。
その土でできた腕は傲慢に胸の前で組まれていて、胡坐と相まってとてもカッコいい。脆弱とはいえ、自立意思を持つ魔法生物である。生きているみたいだ。
彼の王には大地の全てが従う威厳が、大地を戒める意思が、大地を鳴動させる覇気が空間を一瞬で脈動させ、移ろう様に優しさが溢れる。
「じゃあ、よろしくね」
俺はその王にお願いする。実にお使いを頼むくらいに軽い感じで頼む。傍から見たギャップが半端ではないが、しかしどんなに畏怖があろうとも、俺が造った存在である。というか、わざとこんな演出にしているし。本当は胡坐をかかないし、腕も組まない。
かっこいいじゃん。だから、演出は必要である。
と、そんな俺の内情は置いといて、王は俺のお願いに深く低く響く音と共に緩慢に頷く。そして、これまた傲慢に組んでいた腕を大気が轟かせる吹鳴を伴いながら解き、手のひらを地につける。
刹那。
壮大な地鳴りと共に地面から土の壁が這い出てきた。それはまだ、作られていない地下室の壁全てである。つまり、俺達の所だけでなくレモンやアテナ母さんの仕事も終わらせたのだ。全て設計図通り。
いや、さっきアテナ母さんに見せてもらった時に、“記録庫”で設計図全体を記録していたので、アテナ母さんが設計した部分の情報もキチンと手に入れてたのである。
しかし、最初は〝巨土の王〟を使うつもりはなかった。だって魔力消費量が膨大でとても疲れるから。また、〝巨土の王〟を行使することによって生じる轟音を遮断するための土魔術や風魔術を同時行使する必要があり、労力が凄いのだ。
聖級なので音が普通にヤバい。爆弾を落とした以上の雷鳴が響き渡るのだ。なので、それらを遮断するのに使う魔術の処理量が半端ない。
そのせいで目が充血し、頭痛がひどい。
しかしそれらを一切合切無視して、何か使いたくなったので使った。俺の迸る好奇心というか何というかが抑えきれなかったのだ。
ただ魔術を介したとはいえ、土魔法には一切の適性がないのに聖級を行使したのでめっちゃ怠い。倦怠感が阿保みたいにある。久しぶりに魔力を九割ほど使った。
けれど後悔はない。
そして俺の目の前では役目を果たした王がはらはらと儚く散っていった。あっけない。あれだけの魔力を注いだのに。
まぁ、当たり前か。初めての行使だったから耐久性に難あり。維持も注意。
でも。
「おー。やっぱすげぇ。流石は聖級魔法」
感嘆は漏れるわけで。また魔法に対して再度、畏怖を抱くわけで。そして、初めての単独属性魔法の聖級行使によって見えた欠点や改善点などがいっぱいあって、今後の展望に大きな開いて、とても充実した瞬間だった。
と、静観を決めていたが余りの出来事に呆然と突っ立ていたロイス父さんが、バッと俺を見る。目は殺気を伴うほど鋭い。
それと同時に壁が生成されたおかげで見えなくなっていたアテナ母さんが豪速で現れた。やはりこっちも瞳に殺気を宿している。
「セオ!? 一言、言いなさい!」
「セオ! あれは他所では使ってはいけないわ! いい、絶対よ!」
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内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません?
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