上 下
31 / 316
一年

みんな悪気はないんです:this spring

しおりを挟む
 丁度、フォート橋は城壁に繋がっていて、三メートル程度の大きな両開きの鉄扉がある埋門うずみもんみたいな門が、橋の行く手を塞いでいる。

 ロイス父さんはその鉄扉の前まで行って、鉄扉をコンコンと二回叩いた。

「はい、なんでしょうか」

 すると鉄門の一部が小窓の様に開き、おっさんが顔を出した。

「やぁ、ピョートル。小扉を開けてくれないかい?」
「……、ああロイスさまでしたか。了解しました。少しお待ちください」

 そう言って、小窓が閉じ、カチャカチャと音が鳴った後、ギギギッと、金属が擦れる音と共に鉄門の端のの小さな片開きの扉が開いた。流石に門を全て開けたりはしないか。ただ、常時、門を開放していないのが不思議だ。

「どうぞ、お通り下さい」
「ありがとう」
「ありがとうございます」

 ロイス父さんと俺は丁寧に誘導してくれるピョートルに礼を言って、小扉をくぐった。

 そして俺の眼前にはこれこそ異世界?って感じの石畳の街道と住宅街が現れた。淡いシンプルな色合いの住宅がずらりと並んでいて、雰囲気がある。屋根の色は紅葉色である。今のところ。

「わぁー!」

 そして俺は、思わず感嘆が漏れてしまうほど感動している。

 だって、海外旅行なんてしたことないし。こんなヨーロッパみたいな街並みを直で見たのは、初めてなんだ。というか、国内の旅行も全然していない。

 そりゃ感動するさ。

「セオ。探索する時間は後でいっぱいあるから、先に用事を済ませちゃうよ」

 ロイス父さんは感動で棒立ちをしている俺の背を優しく押しながら歩き出した。

「もうちょっと感動に浸らせてよ」

 俺は少し文句を言いながらも、ロイス父さんの隣に並んで歩く。

 そうして俺たちは街道を歩く。歩いていく。

 それから数分。

 それから少し歩いて分かったのだが、露店が幾つか並び見た感じ栄えてるような気がする。だが、売買は物々交換が基本らしい。硬貨を使っている人もいたが、それは武器などを帯刀した人々や上等な服を着ている人々であった。あと、通行人の大半が彼らで占められている。

 たぶん、冒険者や商人とだと思う。また、彼らは人種が多種多様で獣人や鬼人、なかにはエルフなどもいて、とてもファンタージでワクワクする。

 また、それでも普通の服と少し特徴的な髪飾りを身に着けている人たち、たぶん町人だと思う人たちもいて、歩いているロイス父さんに気が付くと一礼して挨拶してくる。見ている感じ、ロイス父さんと町人の距離は近いらしい。

 そして俺の方を見て首をかしげロイス父さんに問うのだ。「誰の子ですか」と。どうやら、顔面偏差値が違い過ぎてロイス父さんの子には見えないらしい。

 はぁ、別段俺の見た目がわるいわけではない。俺はごく普通の方である。ロイス父さん達が美形すぎるのだ。まるでギャルゲー乙女ゲーの主要人物みたいなのだ。そして俺はモブ。だから、見た目はわるくない。

 ……、見た目は割り切ってはいても、なんとなく気になるものである。まぁ、なんとなくではあるが。

 それから、ロイス父さんは苦笑いで自分の子供だと説明する。俺はそれに続いてキチンと名乗り上げる。そうすれば、町人たちは驚いたように目を丸くして、しかし直ぐに、にこやかな顔になって、よろしくねと、言う。またごめんなさいねと、目で俺に伝えてくる。

 まぁ、感じから気の良い人たちであることは容易に察することができた。風土的な気質なのかもしれない。

 中にはずけずけと口に出して驚く人もいたが、ただデリカシーがない人で、わるい人ではなさそうである。隣にいた奥さんに引っ叩かれてたので、すっきりしたのもある。

 そうやって真っすぐ街道に沿って歩いていると、中央に小さな噴水がある円形の広場にでた。広場からは、俺たちがいるのも含めて十字の様に大きな街道が伸びていて、それらの街道によって区分された四つに一個づつ大きな施設が入っていた。

 また、多くの人が行き交っていてここが町の中心ぽかった。こういう広場って、憧れるよな。前世じゃ仕事で全てを埋め尽くされていたしな。

「セオ。ここはラート町の中央広場、重要な施設が集まっている場所だよ。因みにあの噴水はアテナの自作なんだよね」

 ロイス父さんがさりげなく説明してくれる。ガイドの人みたいである。

「へぇー、そうなんだ。じゃあ、今日はその施設の人たちと会うの?」

 アテナ母さんに関してはスルーである。家に帰ったら色々と聞く。

「まぁ、そうだね。と言っても、全ての施設を回るわけではないよ。今日はもともと、町の会議も兼ねていてね。ちょうど、あの施設で会議するんだけど……」

 そう言ってロイス父さんは、俺たちがいるところから奥左手を指した。金属製の武器や装備、それとコスプレっぽい服装の人たちが多く出入りする少し砦の様な四階建ての建物だった。

「冒険者ギルド?」
「いや、あれは自由ギルドだよ」

 ああ、そう言えば自由ギルドは冒険者ギルドとかをまとめているギルドだっけ?

「そういえば、セオには自由ギルドについてキチンと説明してなかったね。……、まぁ、今は時間がないから屋敷に帰ったら説明するね」

 疑問が顔に出ていたのだろうロイス父さんは俺を見て、微笑してそう言った。

 それから俺の背中をそっと押した。

「じゃあ、行くよ」

 そうして歩き出したロイス父さんに、俺は周りに気を取られながらも、ぼんやりとついていった。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

異世界に転生したのでとりあえず好き勝手生きる事にしました

おすし
ファンタジー
買い物の帰り道、神の争いに巻き込まれ命を落とした高校生・桐生 蓮。お詫びとして、神の加護を受け異世界の貴族の次男として転生するが、転生した身はとんでもない加護を受けていて?!転生前のアニメの知識を使い、2度目の人生を好きに生きる少年の王道物語。 ※バトル・ほのぼの・街づくり・アホ・ハッピー・シリアス等色々ありです。頭空っぽにして読めるかもです。 ※作者は初心者で初投稿なので、優しい目で見てやってください(´・ω・) 更新はめっちゃ不定期です。 ※他の作品出すのいや!というかたは、回れ右の方がいいかもです。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

成長促進と願望チートで、異世界転生スローライフ?

後藤蓮
ファンタジー
20年生きてきて不幸なことしかなかった青年は、無職となったその日に、女子高生二人を助けた代償として、トラックに轢かれて死んでしまう。 目が覚めたと思ったら、そこは知らない場所。そこでいきなり神様とか名乗る爺さんと出会い、流れで俺は異世界転生することになった。 日本で20年生きた人生は運が悪い人生だった。来世は運が良くて幸せな人生になるといいな..........。 そんな思いを胸に、神様からもらった成長促進と願望というチートスキルを持って青年は異世界転生する。 さて、新しい人生はどんな人生になるのかな? ※ 第11回ファンタジー小説大賞参加してます 。投票よろしくお願いします! ◇◇◇◇◇◇◇◇ お気に入り、感想貰えると作者がとても喜びますので、是非お願いします。 執筆スピードは、ゆるーくまったりとやっていきます。 ◇◇◇◇◇◇◇◇ 9/3 0時 HOTランキング一位頂きました!ありがとうございます! 9/4 7時 24hランキング人気・ファンタジー部門、一位頂きました!ありがとうございます!

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

処理中です...