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幕間 I’m Gonna Live Till I Die
終わりの旅の始まりb
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「それで、新しい用事っていうのは何だ」
面白そうに笑ったレーラーに対して少しだけ不機嫌そうに鼻を鳴らしたフリーエンは、その不機嫌さのまま片眉を上げてレーラーに訊ねた。
面白そうに笑ったレーラーは、直ぐにいつも通りの無表情になって懐から小さな筒を取り出し、机に置いた。
「そんなに急かさない。物事には順序があるんだよ」
「……はぁ、それで?」
レーラーは取り出した小さな筒を弄ぶように机の上で転がしながら、フリーエンの赤錆の瞳を見つめた。
そしてフィンガースナップ。
すると。
「なんだ、これは……」
レーラーの右の壁、つまり小さな筒が向いている方向にフリーエンが映った。驚き、呆然としているフリーエンが映ったのだ。
写したのではない。
「フリーエンが望んでたのはこれでしょ?」
レーラーが少しだけ首を横にずらせば、右の壁に映された映像が動き、可愛らしい花が挿されている花瓶が映し出される。
レーラーの左にある花瓶だ。
「私は〝過去を再生する魔法〟は使えない。けど、〝過去を再生する魔法〟をもとに〝視界を写す魔法〟を改良した〝視界を映す魔法〟を使えるよ。それに――」
レーラーは再びフィンガースナップをする。すると、右の壁に映されていた映像は消え失せる。
それを確認したレーラーは小さな筒を手に取り、それを捻った。捻らた小さな筒は二つに分かれ、その間から小さな黄金の宝石が出てくる。
レーラーは二つに分けた小さな筒を机の上に置きながら小さな黄金の宝石を手に取り、また開いた片手を懐に突っ込み、別の筒を取りだした。こっちは少しだけ大きくて、古めかしい。
そしてレーラーは取り出した古めかしい筒にある窪みに黄金の宝石をはめ込む。古めかしい筒を右の壁に向けて、魔力を流し込む。
そして。
「フリーエン、これを望んでたんでしょ。動く絵を、過去を映し出す絵を望んでたんでしょ?」
「……あ、ああ」
先程、右の壁に映し出された映像がもう一度映し出された。
フリーエンは未だに呆然としている。
「ついでに、あともう少しで作れる録音の魔道具を使えば、音声も再生できるようになるよ」
そんなフリーエンのレーラーは呼びかける。
フリーエンはその呼びかけに無意識に応じ、レーラーを見た。
「ねぇ、フリーエン。旅に出よう」
「……旅だと?」
無意識にレーラーを見たフリーエンは、しかしその言葉を聞いた瞬間不機嫌そうに眉を歪めて、警戒した声でレーラーに問い返す。
レーラーはそれに気にする様子もなく、無表情に頷く。
「うん。私に依頼されたのは〝視界を写す魔法〟で一日一枚、絵を撮る事。そしてもう一つはこの魔導書を、正確には過去を再生できる手段を手に入れる事。いや、それを使ってトレーネに遺言を残そうとした」
「……」
「だんまりだね。うん、意地っ張りだし不器用だし……まぁ、いいや。それよりさ、こんな変化のない場所にいる変化のない老人を撮っても面白くないんだよね。どうせなら色々な場所で、ちょっと前みたいに色々な景色をバックに撮りたい」
レーラーはまた懐に手を突っ込み、今度は色々な紙切れを取り出した。
その懐にはどれだけのものが入るのだろう。不思議な懐だ。
「ねぇ、いっぱい撮った。私がいっぱい撮った」
「……そうだな」
レーラーはフリーエンの赤錆の瞳を逃さないように、半眼の深緑の瞳で見つめながら、取り出した紙切れを広げた。
そこには、人族の青年と猫人の青年、フリーエン、神官服を着た少女が写し出されていた。レーラーは写ってなかった。
「これを撮るとき、私は絶対的な存在だったよね」
「……ああ」
「私が、色々と背景を決めたり、ポーズを決めたり……ぶっちゃけ同じ場所なんてつまらない。さっき、面白い情報が手に入ったんだ」
レーラーは再び懐に手を突っ込み、地図を取り出した。
その懐にはどれだけの以下略。
「アイファング王国、ウォーリアズ王国。ここ一年間で魔人に現れた場所。しかも両方とも混沌派がいた。ついでに魔王復活派も」
「……らしいな」
赤丸が刻まれた地図をファッケル大陸の地図を見下ろし、フリーエンは呟いた。
レーラーは少しだけ唇を上げる。
「理由は共に勇者の剣を破壊するため。アイファング王国の件は、色々と暗躍してたから理由はそれだけじゃなかったけど、ファーバフェルクト領を狙ったのはそれだけみたいだね」
「……お前さんの弟子か」
「うん。ライゼはエルピスと同様トラブルに巻き込まれやすしね。うん、よく似てるでしょ。……まぁそれは置いといても、老い先短い命、最後に楽しまない?」
レーラーはフリーエンに手を差し出す。
フリーエンはなおも警戒する。
「別にトレーネに会えと言ってるわけじゃない。たださ、トレーネに誇られたくない? 魔人がこの大陸で暗躍してる。魔王がいなくなったのに、暗躍できてる」
「……」
「その不思議を最後に解くつもりはない? 解決するつもりはない?」
「……」
「私はそうしたい。史上初魔王を討った勇者パーティーの、戦士の最後の偉業を記憶に、記録におさめたい。まぁ、記録は百年もしない内に消えてしまうだろうけど、それでも私の記憶には残したい」
「……弟子はどうするんだ」
フリーエンの赤錆の瞳が揺れる。眉間に皺がもの凄くよる。
「ライゼは、まぁいっかな。私がフリーエンの依頼を終える前で帰るつもりはないらしいし」
「……気を使ってるのか」
「さぁね。……それで、どうする。一年ちょっとの旅をするつもりはない?」
やけに饒舌に話すレーラー。
フリーエンはそれを思う。
「……慣れない事をするな」
「……何の事?」
不器用に頬を吊り上げて笑おうとするレーラーは、少しだけ深緑の瞳を濡らしながらも首を傾げた。
フリーエンは溜息を吐いた。
「……まぁ、いい。トレーネに会うつもりはない……だが、旅には出よう。各地に飾ってあるであろう絵も気になるしな」
「うん、分かったよ」
そうして、レーラーとフリーエンは太陽が中天を超えるころには小屋を出た。
終わりの旅に出た。死に場所を求める戦士の旅に出た。
面白そうに笑ったレーラーに対して少しだけ不機嫌そうに鼻を鳴らしたフリーエンは、その不機嫌さのまま片眉を上げてレーラーに訊ねた。
面白そうに笑ったレーラーは、直ぐにいつも通りの無表情になって懐から小さな筒を取り出し、机に置いた。
「そんなに急かさない。物事には順序があるんだよ」
「……はぁ、それで?」
レーラーは取り出した小さな筒を弄ぶように机の上で転がしながら、フリーエンの赤錆の瞳を見つめた。
そしてフィンガースナップ。
すると。
「なんだ、これは……」
レーラーの右の壁、つまり小さな筒が向いている方向にフリーエンが映った。驚き、呆然としているフリーエンが映ったのだ。
写したのではない。
「フリーエンが望んでたのはこれでしょ?」
レーラーが少しだけ首を横にずらせば、右の壁に映された映像が動き、可愛らしい花が挿されている花瓶が映し出される。
レーラーの左にある花瓶だ。
「私は〝過去を再生する魔法〟は使えない。けど、〝過去を再生する魔法〟をもとに〝視界を写す魔法〟を改良した〝視界を映す魔法〟を使えるよ。それに――」
レーラーは再びフィンガースナップをする。すると、右の壁に映されていた映像は消え失せる。
それを確認したレーラーは小さな筒を手に取り、それを捻った。捻らた小さな筒は二つに分かれ、その間から小さな黄金の宝石が出てくる。
レーラーは二つに分けた小さな筒を机の上に置きながら小さな黄金の宝石を手に取り、また開いた片手を懐に突っ込み、別の筒を取りだした。こっちは少しだけ大きくて、古めかしい。
そしてレーラーは取り出した古めかしい筒にある窪みに黄金の宝石をはめ込む。古めかしい筒を右の壁に向けて、魔力を流し込む。
そして。
「フリーエン、これを望んでたんでしょ。動く絵を、過去を映し出す絵を望んでたんでしょ?」
「……あ、ああ」
先程、右の壁に映し出された映像がもう一度映し出された。
フリーエンは未だに呆然としている。
「ついでに、あともう少しで作れる録音の魔道具を使えば、音声も再生できるようになるよ」
そんなフリーエンのレーラーは呼びかける。
フリーエンはその呼びかけに無意識に応じ、レーラーを見た。
「ねぇ、フリーエン。旅に出よう」
「……旅だと?」
無意識にレーラーを見たフリーエンは、しかしその言葉を聞いた瞬間不機嫌そうに眉を歪めて、警戒した声でレーラーに問い返す。
レーラーはそれに気にする様子もなく、無表情に頷く。
「うん。私に依頼されたのは〝視界を写す魔法〟で一日一枚、絵を撮る事。そしてもう一つはこの魔導書を、正確には過去を再生できる手段を手に入れる事。いや、それを使ってトレーネに遺言を残そうとした」
「……」
「だんまりだね。うん、意地っ張りだし不器用だし……まぁ、いいや。それよりさ、こんな変化のない場所にいる変化のない老人を撮っても面白くないんだよね。どうせなら色々な場所で、ちょっと前みたいに色々な景色をバックに撮りたい」
レーラーはまた懐に手を突っ込み、今度は色々な紙切れを取り出した。
その懐にはどれだけのものが入るのだろう。不思議な懐だ。
「ねぇ、いっぱい撮った。私がいっぱい撮った」
「……そうだな」
レーラーはフリーエンの赤錆の瞳を逃さないように、半眼の深緑の瞳で見つめながら、取り出した紙切れを広げた。
そこには、人族の青年と猫人の青年、フリーエン、神官服を着た少女が写し出されていた。レーラーは写ってなかった。
「これを撮るとき、私は絶対的な存在だったよね」
「……ああ」
「私が、色々と背景を決めたり、ポーズを決めたり……ぶっちゃけ同じ場所なんてつまらない。さっき、面白い情報が手に入ったんだ」
レーラーは再び懐に手を突っ込み、地図を取り出した。
その懐にはどれだけの以下略。
「アイファング王国、ウォーリアズ王国。ここ一年間で魔人に現れた場所。しかも両方とも混沌派がいた。ついでに魔王復活派も」
「……らしいな」
赤丸が刻まれた地図をファッケル大陸の地図を見下ろし、フリーエンは呟いた。
レーラーは少しだけ唇を上げる。
「理由は共に勇者の剣を破壊するため。アイファング王国の件は、色々と暗躍してたから理由はそれだけじゃなかったけど、ファーバフェルクト領を狙ったのはそれだけみたいだね」
「……お前さんの弟子か」
「うん。ライゼはエルピスと同様トラブルに巻き込まれやすしね。うん、よく似てるでしょ。……まぁそれは置いといても、老い先短い命、最後に楽しまない?」
レーラーはフリーエンに手を差し出す。
フリーエンはなおも警戒する。
「別にトレーネに会えと言ってるわけじゃない。たださ、トレーネに誇られたくない? 魔人がこの大陸で暗躍してる。魔王がいなくなったのに、暗躍できてる」
「……」
「その不思議を最後に解くつもりはない? 解決するつもりはない?」
「……」
「私はそうしたい。史上初魔王を討った勇者パーティーの、戦士の最後の偉業を記憶に、記録におさめたい。まぁ、記録は百年もしない内に消えてしまうだろうけど、それでも私の記憶には残したい」
「……弟子はどうするんだ」
フリーエンの赤錆の瞳が揺れる。眉間に皺がもの凄くよる。
「ライゼは、まぁいっかな。私がフリーエンの依頼を終える前で帰るつもりはないらしいし」
「……気を使ってるのか」
「さぁね。……それで、どうする。一年ちょっとの旅をするつもりはない?」
やけに饒舌に話すレーラー。
フリーエンはそれを思う。
「……慣れない事をするな」
「……何の事?」
不器用に頬を吊り上げて笑おうとするレーラーは、少しだけ深緑の瞳を濡らしながらも首を傾げた。
フリーエンは溜息を吐いた。
「……まぁ、いい。トレーネに会うつもりはない……だが、旅には出よう。各地に飾ってあるであろう絵も気になるしな」
「うん、分かったよ」
そうして、レーラーとフリーエンは太陽が中天を超えるころには小屋を出た。
終わりの旅に出た。死に場所を求める戦士の旅に出た。
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