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第二部 二章:独りはあっても孤独はない
四話 武器は力だ
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「解放」
ライゼはそう呟いた。
瞬間。
「ッ」
ライゼを中心に楕円を描いていた宝石たちが、一斉にまばゆい光を放ち、輝きだす。そして、魔力を放ち、更に高めていく。
そして、空中に多種多様な魔弾が、彩色弾が現れる。
火の弾、水の弾、土の弾、風の弾、雷の弾、氷の弾などなど、あらゆる魔法弾がライゼに殺意の嵐を向け、襲いだした。
ライゼが槍衾の牢獄に閉じ込められる。
しかし。
「ハッ」
それらの魔法弾はライゼに掠りはすれど、当たりはしない。全てがギリギリとところでライゼを避けていく。
さらに、ライゼの両手に持つ二本の棒が、筒が、銃身が、刃を形成し、逸らしていく。
ライゼは僅かな身体の動きによって全ての魔法弾を回避した。
Φ
『お疲れさん、調整はどうだ?』
『うん、とてもいいよ』
魔法の回避訓練を終えたライゼは、短刀ほどの長さの二本の筒を俺の前において、水筒の薄めたポーションを飲んでいる。
俺はおかれた二本の筒をじっくりと念入りに見る。
この二本の筒はライゼに贈った誕生日プレゼントである。武器を贈ったのだ。
そして、その武器とは銃らしきものである。
元々、ライゼがヴァンズン山脈でレッドドラゴンと戦った時から、いつかこれを、銃らしきものを贈ろうと思った。
というのも、ライゼからの相談もあり、魔物相手にライゼの魔法は通用しないことがハッキリと分かった。
魔力量の問題だ。
いくら、“魔倉の腕輪”に魔力を蓄えようと、ライゼは上級魔法は放てない。もし、放てたとしても一回こっきりだ。
それに、魔法を使うには本人の魔力を消費する必要がある。俺やレーラーが“魔倉の腕輪”に魔力を注ごうとも、ライゼはその魔力を消費して魔法を使う事はできない。ライゼは上級魔法を連続で放てないのだ。
そして、上位の魔物に対しては最低でも上級魔法でないと攻撃が通用しない。いくら、中級魔法を一点集中して放とうと、全く意味がないのだ。
魔物は身体を魔素で構成されているが、魔石によって魔法として構成されている部分も大きい。そのため、魔法耐性が途轍もなく高く、物理耐性も高い。
そのため、上級魔法以上の攻撃力を一度にぶつけないと攻撃が通らないのだ。
なので、中級魔法でその魔法耐性を突破しようとするなら、上級魔法と同威力になるまで、中級魔法を同時展開し、それを一点集中で放つ必要がある。
そんな事をするよりは、上級魔法を一発展開した方が魔力コストが少ない。
つまり、必然的にライゼは上位の魔物に対しては魔法攻撃があまり意味がなくなるのだ。
もちろん、身体強化などといった魔力量よりも魔力操作技術や魔法技術に大きく依存している魔法もあるため、魔力消費が中級、もしくは下級程度でも上級魔法並みの効果を出せる場合がある。
が、そういう魔法は『くだらない魔法』に分類されるものが多く、また、戦闘向きであっても大抵は物質変換系の魔法や強化系の魔法、後は特定の生物だけに効果がある魔法くらいだ。
そして、それらは既にライゼが行ってきた事だし、これからも技術を上げたりして戦えばいい。
だが、それでも上位の魔物には通用しなくなってきているのだ。
そもそもの話、ライゼは強くなりたいわけではない。正確には、多くの『くだらない魔法』を使えるようになりたいのだ。
幸いというべきか、何故か世界に対しての影響がでかいのに『くだらない魔法』の魔力消費量はそこまで多くない。せいぜい中級程度だ。
なので、魔法技術を磨いている。先程も言った通り、『くだらない魔法』は魔力量よりも魔法技術に依存するのだ。
ただ、それはそうと、ライゼはレーラーとも旅をしているし、たぶん一生旅をするのだろう。俺がそうして欲しいと思っている部分もある。
また、『くだらない魔法』が記してある魔導書は、辺境やダンジョンなどといった魔物が多い場所にある事も多く、魔物と戦う術を持つ必要がある。
だから、ライゼは上位の魔物との彼我を逆転させる道具がないか、俺に訊ねてきたのだ。卑怯と言うなかれ、当たり前の考えだ。ライゼは別に戦う事に誇りも持っていない。使える手はなんでも使おうとする主義だ。
まぁ、対人戦においての魔法勝負は少しだけ別だが。
という事で俺は二つ返事で受け入れた。
まぁ、そもそも俺はそのために魔道具の勉学に励んでいたので、こっちから提案しようかと思ったくらいだ。
そしてレーラーから借りた魔導書で知った〝魔法を宝石にする魔法〟とその関連魔法を組み込んで、短刀ほどの長さの銃らしきものを作ったのだ。
何故、銃らしきものなのか。
それは俺が銃について詳しく知らず、知っていても大部分が忘れている。ぶっちゃけ、加速やら何やらは魔法でどうにかしている部分も大きい。
それに、ライゼの戦闘を補助するために銃以外の機能も色々付けている。
そして、俺がライゼに贈った銃らしきものは二本。
名前は“森顎”と“森彩”だ。
ただし、どちらとも形や性能、機能が違う。
ライゼはそう呟いた。
瞬間。
「ッ」
ライゼを中心に楕円を描いていた宝石たちが、一斉にまばゆい光を放ち、輝きだす。そして、魔力を放ち、更に高めていく。
そして、空中に多種多様な魔弾が、彩色弾が現れる。
火の弾、水の弾、土の弾、風の弾、雷の弾、氷の弾などなど、あらゆる魔法弾がライゼに殺意の嵐を向け、襲いだした。
ライゼが槍衾の牢獄に閉じ込められる。
しかし。
「ハッ」
それらの魔法弾はライゼに掠りはすれど、当たりはしない。全てがギリギリとところでライゼを避けていく。
さらに、ライゼの両手に持つ二本の棒が、筒が、銃身が、刃を形成し、逸らしていく。
ライゼは僅かな身体の動きによって全ての魔法弾を回避した。
Φ
『お疲れさん、調整はどうだ?』
『うん、とてもいいよ』
魔法の回避訓練を終えたライゼは、短刀ほどの長さの二本の筒を俺の前において、水筒の薄めたポーションを飲んでいる。
俺はおかれた二本の筒をじっくりと念入りに見る。
この二本の筒はライゼに贈った誕生日プレゼントである。武器を贈ったのだ。
そして、その武器とは銃らしきものである。
元々、ライゼがヴァンズン山脈でレッドドラゴンと戦った時から、いつかこれを、銃らしきものを贈ろうと思った。
というのも、ライゼからの相談もあり、魔物相手にライゼの魔法は通用しないことがハッキリと分かった。
魔力量の問題だ。
いくら、“魔倉の腕輪”に魔力を蓄えようと、ライゼは上級魔法は放てない。もし、放てたとしても一回こっきりだ。
それに、魔法を使うには本人の魔力を消費する必要がある。俺やレーラーが“魔倉の腕輪”に魔力を注ごうとも、ライゼはその魔力を消費して魔法を使う事はできない。ライゼは上級魔法を連続で放てないのだ。
そして、上位の魔物に対しては最低でも上級魔法でないと攻撃が通用しない。いくら、中級魔法を一点集中して放とうと、全く意味がないのだ。
魔物は身体を魔素で構成されているが、魔石によって魔法として構成されている部分も大きい。そのため、魔法耐性が途轍もなく高く、物理耐性も高い。
そのため、上級魔法以上の攻撃力を一度にぶつけないと攻撃が通らないのだ。
なので、中級魔法でその魔法耐性を突破しようとするなら、上級魔法と同威力になるまで、中級魔法を同時展開し、それを一点集中で放つ必要がある。
そんな事をするよりは、上級魔法を一発展開した方が魔力コストが少ない。
つまり、必然的にライゼは上位の魔物に対しては魔法攻撃があまり意味がなくなるのだ。
もちろん、身体強化などといった魔力量よりも魔力操作技術や魔法技術に大きく依存している魔法もあるため、魔力消費が中級、もしくは下級程度でも上級魔法並みの効果を出せる場合がある。
が、そういう魔法は『くだらない魔法』に分類されるものが多く、また、戦闘向きであっても大抵は物質変換系の魔法や強化系の魔法、後は特定の生物だけに効果がある魔法くらいだ。
そして、それらは既にライゼが行ってきた事だし、これからも技術を上げたりして戦えばいい。
だが、それでも上位の魔物には通用しなくなってきているのだ。
そもそもの話、ライゼは強くなりたいわけではない。正確には、多くの『くだらない魔法』を使えるようになりたいのだ。
幸いというべきか、何故か世界に対しての影響がでかいのに『くだらない魔法』の魔力消費量はそこまで多くない。せいぜい中級程度だ。
なので、魔法技術を磨いている。先程も言った通り、『くだらない魔法』は魔力量よりも魔法技術に依存するのだ。
ただ、それはそうと、ライゼはレーラーとも旅をしているし、たぶん一生旅をするのだろう。俺がそうして欲しいと思っている部分もある。
また、『くだらない魔法』が記してある魔導書は、辺境やダンジョンなどといった魔物が多い場所にある事も多く、魔物と戦う術を持つ必要がある。
だから、ライゼは上位の魔物との彼我を逆転させる道具がないか、俺に訊ねてきたのだ。卑怯と言うなかれ、当たり前の考えだ。ライゼは別に戦う事に誇りも持っていない。使える手はなんでも使おうとする主義だ。
まぁ、対人戦においての魔法勝負は少しだけ別だが。
という事で俺は二つ返事で受け入れた。
まぁ、そもそも俺はそのために魔道具の勉学に励んでいたので、こっちから提案しようかと思ったくらいだ。
そしてレーラーから借りた魔導書で知った〝魔法を宝石にする魔法〟とその関連魔法を組み込んで、短刀ほどの長さの銃らしきものを作ったのだ。
何故、銃らしきものなのか。
それは俺が銃について詳しく知らず、知っていても大部分が忘れている。ぶっちゃけ、加速やら何やらは魔法でどうにかしている部分も大きい。
それに、ライゼの戦闘を補助するために銃以外の機能も色々付けている。
そして、俺がライゼに贈った銃らしきものは二本。
名前は“森顎”と“森彩”だ。
ただし、どちらとも形や性能、機能が違う。
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