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3章

38話 協力

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 しかし、話すべきなのだろうか? 
 これが複数でやる依頼だったなら、目の前の女性に協力を仰いで、同行するほうがいいかもしれない。

 ヘイリーは土地勘がある。裏道を探している間にも、ここがどういう店で、何をしている場所かを説明してくれている。
 だが、もしこの依頼が1人でするものだったら?……いや、それはないな。
 それなら、一緒に行こうとしていたアレシアに、同行してはいけないなどと言わないはずだ。

 もしかして、知らない土地で知らない相手にどれだけ協力を仰ぎ、どう対処するのかを試されている? それだったなら納得がいく。
 アレシアを同行させなかったが、とくに人数は指定されていなかった。
 注意事項は怪我、もしくは死亡させてはならないとだけだ。

 監督するものがいないが、代わりに誰かが監視役になっているのだとしたら、どこかで見ているのかもしれない。
 だが、それだと不明な点が出てくる。何のためにこんなことをさせているのか、だ。
 ブロンズからアイアンへの昇級試験にしては、荷が重すぎる。

 私なんかよりも、上手く出来るものは必ずいるはずだ。
 確実に成功させたいなら、新人である私よりもその者に任せる方がいい。
 わたしでもそうする。

「ねぇ」
「ん?」
「さっきから呼んでるのに、全然反応しないじゃん」
「すまない。少々考え事をな」
「何考えてたの?」

 少しずつ話して、信用できるかどうかを試すか。一か八かだ。

「人探しに協力してもらおうかどうかを」
「別にいいよ。ただし、私の依頼を手伝ってくれたら協力してあげる」
「一つ上のならなんとか協力は出来る」
「んじゃ決まり」

 裏道へ行こうとしていた私の腕を掴み、どこかへと連れていかれた。
 いったいどこに行くんだ。門とは違う方向に走っている。

「ここで受けるよ」

 付いた先は冒険者ギルドだった。街に冒険者がいることに驚きはしない。ここへ来る途中でも何人か見かけた。

 だが、私が入った場所とは段違いの豪華さだった。
 街の中に門があるのを不思議に思っていたが、こうやって分けられているとは。
 なにか意味があるのだろうか。

「私は、何もしなくていいのか? 証明書だとか」
「必要ないに決まってるんじゃん。なにより、それが証明になる」

 街の中に入る時もバンクルを見せるだけで良かったから、ここでも大丈夫らしい。
 偽造とかを疑わないのだろうか。
 どんな素材で作られているかのを登録した時に説明をされなかったから、もしかしたら私が知らないだけでこの世界の子供たちも知っている常識なのかもしれない。

「こんにちは、ヘイリーさん」
「この依頼、2人で受けてもいい?」

 外観だけでなく、内観まで豪華だった。私が圧倒されている間に彼女が依頼書を取り、受付に渡していた。
 依頼内容を確認しなければ。

「何人でも構いませんが、そちらの方は?」
「アーロだ。東の街の冒険者で、クラスはブロンズ」
「証明するものを」

 腕につけているものを見せ、承認された。

 依頼内容は、アイスベアーを討伐することだった。
 名前からだいたいの想像はできるが、冬季戦となると少し厄介だ。
 どこででも戦闘は出来るようにはしているが、手がかじかむ可能性もなくはない。

「んじゃ、行こうか」
「待て。何も着て行かないのか? 雪が降っている可能性もあるんだぞ。それに、食料も買わずに行くのか?」

 身軽な格好をしているとはいっても、素肌が見えている防具のままでいけば凍傷になる可能性だってある。
 それとも、なんだ。防寒できる術でも持っているのか?

「現地調達するよ。それとも、買ってくれるの?」
「そこまで買う金は持っていない」
「んじゃ、現地調達だね」
「……食料は仕方ないとしても、防寒具を着なければ」
「これがあるから大丈夫」

 鎧の下に手を入れて、何かを探している。
 鎧が動く音が何秒かして、取り出したのは石が付いたネックレスだった。
 ただの石ではないのは確かなようだが、どうも区別は付きづらい。

 聞くと、それは寒さを軽減する魔石とのことだった。どこ買えるのかと聞けば魔石店で買えるよ、と。

 あの街にもあったのだろうか? いや、あったのだろう。私が興味なく、素通りしていただけだ。
 今後のために頭の片隅にでも置いておこう。いつしか役に立つときもあるだろうからな。

「それだけだとしても、寒いことに変わりはないのでは」
「大丈夫! そこまで寒いところにはいかないし、いないから」

 その言葉を聞いて不安に駆られるのは気のせいだろうか。
 もし、予想以上に寒ければ、念のためと常に持っている防寒具を1つ貸すしかなさそうだ。
 
 今のうちに貸しておいた方がいいのか?
 安物で申し訳ないが、なけなしの金で防寒着を買おう。
 凍傷になっても治療する道具は持っていない。

「少しでもいつもと違うと感じたら、何か言ってくれ。1つだけで申し訳ないが、防寒するものを貸す」
「心配性だな、アーロは」

 笑ってはいるが、最悪の場合、指を切らないといけなくなる。
 本当に何事もなく終わればそれで万々歳なのだが、私がこうやって不安になる時は、何かしらがいつも起きている。

 本当に何も起きないでくれ。
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