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1章

10話 仲間

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 朝日が上る時間とともに目を覚ました私は、彼女を起こさないように座ったままでできるストレッチをする。

「もう、あさですか……?」

 最小限の動きだったのだが、それで起こしてしまったらしい。

「明け方だが、まだ寝ているといい」
「おきますぅ」

 ゆっくりとした動作で離れ、あくびをしながら真上に腕を伸ばしている。

「おはようございます。アーロさん」
「眠れたか?」
「はい」
「ならいい」

 この前のような髪型に、今日はならなかったようだ。あれは横になるとなるのか? わからん。

「朝食は君だけ食べるといい」
「食べないんですか?」
「金欠でな」

 お金は何をするにしても必要なものだ。早く手に入れなくては。
 ギルドが開くと同時に、食堂も開く。そこでアレシアが朝食を食べ終えたら、さっそく向かうとしよう。

「そういえば、君のクラスはどれくらいだ」

 これは重要な問題だ。もし、私のブロンズクラスでクエストを行うとなった時、受けられないじゃどうにもならないからな。

「カッパーです」
「なら、しばらくはカッパークラスの依頼をこなして行く」

 同クラスならば手こずることはないかもしれんが、手助けをすると誓ったばかりだ。自分の言葉くらい責任を持たなければ。

「すみません、アーロさん。私のクラスが低いばかりに」
「気にするな。これから上げていけばいい。死なない限り、時間はたっぷりとある」

 食事する手を止め、謝ってくる。まずは、自信をつけてもらわねば。しっかりと食べて満足したのか、昨日より少しだけ元気そうに見えた。さて、依頼をこなして、金を集めるとしよう。

「おはようございます、アーロさん。今日はお一人ではないんですね」
「ああ。昨晩彼女と話し合ってな。変わった形でだが、パ―ティーを組むことになった」

 そのことをいうと、嬉しそうに笑った。心配してくれていたのだろうか?

「それは何よりです! それで今日はどの依頼を?」
「カッパークラスの依頼を2件こなす。薬草採取とワイバーン討伐だ」
「彼女のためですか?」
「ああ」
「わかりました。いくら一個下のクラスだとしても気を付けてくださいね」
「そうしよう」

 彼女は冒険者ではない。それでも、こうやって言ってくれるのは、どれだけ危険かわかっているからだ。こういう人が一人でもいると、安心する。

 受付嬢が許可印を押して、記録する。いつもの光景だがひどく安心する。何故かはわからない。

「なんでお前の方が先に戻ってんだよ」

 受付嬢に見送られ、心地いい感覚のまま依頼をこなそうとドアに近づいたとき、誰かが声を発した。誰に向けて言ったのかはすぐわかった。アレシアが私の服を掴み、顔を伏せていたからだ。

「あいつらか? 君を置いていったというやつらは」
「はい……」

 私の背中側に周り、背に顔を押し付けて見ないようにしている。体を押し当てているせいか、震えが伝わってくる。そうしている間にも、アレシアの元パーティーが何か言っていた。

「俺らが死ぬ思いでやっと戻ってきたってのに」

 あの森から出てきたのか。それほど危険な森ではなかった気がするが。道はそこまで複雑でもなければ、真上を見れば空が見えるほどだ。
 いや、もしかしたら彼らは、森で生活することに慣れていないのではないか?
 昔聞いたことがある。天候などのせいで遭難者が多くなる時があると。その類なのかもしれない。

「すぐ道に迷って困らせるやつだぜ?」
「だからなんだ? 誰を仲間するかは私の自由だ。口出ししないでもらおう」
「そ、そいつ、前衛職だっていうのに逃げてばっかなんだぞ」

 前衛職といっても私が知る中では、タンクと呼ばれる防御力特化の者。アタッカーと呼ばれる剣士。現在の状況を探るための斥候。少ないが、それくらいか。
 アレシアは、前衛職か。

「とにかくそいつを仲間にしてもあんたが疲れるだけだぜ」

 そういって掲示板へと向かっていった。
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