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58.神様との新しいお付き合い方法

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 なぜ、そんなに欲しいものを求めるのか? それはとても光栄なことなのだけど、いいのかな?って、思ってしまう。 頼るように王様を見れば、微笑みながら頷いてくれた。

「いいの?」

「まぁ、前例はないが敵意がないから、問題はないだろう。 ただ、人と神の感覚は大きく違う、色々と曲解されると面倒になるから願いごとは注意しろよ」

『それは、我々に失礼と言うものではないか?』

 火の神がボーボーと燃え上がり、水の神が諫める。

「う~ん、質問でもいいですか?」

 そう問えば、何故か神様はショボーンとしたような感じがした。

「いくつかいい?」

『構わんぞ』

 闇の神が応じてくれた。

 状況によっては話し合いが長くなりそうなので、ゼルに椅子を準備してもらい座る事にした。 最も神に近しいゼルはと言えば、話し合いと言う時点で退屈だとばかりに、私の髪をほどいては結びと遊びだす。 そして私はソレを華麗にスルーする。

「空白期を前にすると神様は活性化するものなんですか?」

『活性化しているとあれば、それは神側が目的を持って行動しているからであり、空白期が原因と言う訳ではないな』

「今、闇の神様が遊んでくれているのは、目的があってですか?」

『……別に遊んでいる訳では……というか、オマエが、食べ物を持ってきたんだろうが!!』

 怒られた……。

 闇神様は少し王様と似ていて、親しみが持てる。

「そ、でした。 でも、寂しいものですね」

『何がだ?』

「空白期になると、国の神様がいなくなる。 ということは、ご縁が途切れると言うことでしょうから」

 神様達がシュンっと小さくなった。

「ですよね?」

 私の言葉に、神々の反応に笑いそうになっていた王様が頷いた。

『だ、だが、国家的に加護を与えることはなくとも、個人的に祈る分には勝手だと思うんだが……』

「う~ん、でも、私って無神論者の国の人ですし、自分が力を貸してもらえない神様、それもスッゴい多くの神様相手に、お祈りするほど暇ではないんですよね。 やっぱり感謝させてもらえる何かが無いと心も篭りませんし?」

 ますます神様が小さくなっていけば、王様が苦笑した。

 神は人が存在していて初めてその存在を確定させる。 神は絶対的に強い存在と言う訳ではないのだ。

「そこで、相談なのですが……、そこにいる儚い神々を、大神様達の眷属にすることはできませんか?」

『考えた事もないが、ようするに神力を分け与え、縛りを与えろということか?』

「ですねぇ、それも神様寄りと言うよりも、依り代を得て人間よりに世界に介入する的な?」



 リエルは、前世における神使の存在を説明した。
 神の身の回りの世話をし、時に人の願いを聞き、人と神の仲介を行う存在。 有名どころはお稲荷さんですよね。 まぁ、細かな説明は省いて神様に伝えてみました。

「例えば水の大神様が、小さいが神力を使える眷属を持ち私の元に送り出すとしましょう?」

『あらあらまぁまぁ』

 なぜか嬉しそう。

「例えば、アイスクリームを作りたいので氷をくださいと伝え、神力で氷を作ってもらうとするじゃないですか。 そうなると私は当然、アイスクリームをお礼に備えたくなる訳ですよ。 でも、大神様は偉大なので直に私の元に来ることはできません。 そんな時、アイスクリームを運ぶのが神様の眷属である神使の仕事になるんです。 お使いであれば、お礼を運んでもルール違反にならないのではないのかな?と」

『それは検討の余地ありですわ。 あと、そのアイスクリームも食べてみたいものです』

「もし、機会があったならお供えしますね」

『なるほど……それはなかなか面白い考えだ。 神のルールに違反しないか、調べて前向きに検討させて頂こう』

「そろそろ、上に戻るぞ」

 王様が声をかけた。 結局神様はリエルのお願いごとを聞きだす事はできず、それゆえに次のお供えも無期延期と言うこととなる。

「は~い、あ、その前に……」

 リエルは小さな鞄から、木の皮を編んで作った箱を出した。 中は、梅おにぎり、インゲンの胡麻和え、塩こうじポテサラ、西京焼き、ホウレンソウのおかかあえ、卵焼きの入ったお弁当、たくあん。 卵焼きはともかく、全体的に発酵食品が使われている。

「腐敗の神様には、ゼルを通じて面倒を頼むことも多くなるので、これをお受け取りください」

 そうして私たちは神殿を去った。

 帰り際ズルイとかどうとか色々聞こえたが、きにしな~い。



 執務室に戻った王様は、彼の椅子に深く腰掛け大きく息を吐いた。

「疲れた……」

「大丈夫ですか?」

「というか、あんだけの神々相手によく平気だな」

「神様に対する認識が正しくできていないだけだと思いますよ」

「だが、さっきの会話が現実になるなら、空白期を乗り越えるための材料が増えることになる」

「う~ん、それですが、実は問題になりそうなポイントがあるんです」

 リエルが説明するのは、

 たとえば、リエルが神様に食べてもらいたいな。 そう思って何かを作れば、それは信仰として神様の力になる。 だけど、王様が神様に感謝を示すために、料理人に料理をさえて食事を作って備えても神様の力にならないのだ。

「ならないのか?」

「えっと、以前、ゼルに憑依しながら闇神様が、食事をしていましたが、あくまで娯楽として味覚を楽しんでいただけとおっしゃってました。 今回も、白玉を作る際に、主に風の神様、水の神様の力を借りたので、その2柱に感謝を込めてオヤツを作ったのですよ。 それが理由か、同じだけオヤツを食べていても、感謝の気持ちを向けた神様と、そうでない神様では、変化に差があったんです」

「あぁ……なるほど。 なので、もし神使が誕生しても、正しくお礼が出来る者でなければ、奉納を期待して力を貸した神を怒らせてしまう可能性があるということか。 それは、怖いな」

「なので、安易に期待することは出来ないと思いますよ」

「確かに、力ばかりを借りて、信仰も味覚的快楽も満たされないようでは、神を怒らせてしまうだろうなぁ……」

「話は聞かせてもらったよ。 ここはママにお任せだ!!」

 いつから、何処に隠れていたのか分からない、聖女様が現れた。

「なんか面白そうな話をしているね。 ようするに料理関係者は神の力を借りる事が出来ると言う話でいいかな?」

「う~ん、正確ではないけど、間違ってはいないと思います」

「なら、簡単だ。 祈る者が1品だけでもいい得意料理を身に付ければいい。 その1品で信仰を補い、料理人の料理が味覚を補えば問題ない」

「なるほど……と言っても大神様が眷属を持ち、それを人との仲介役にすることが出来なければ始まりませんけどね」



 なんて話をしていた数日後、腐敗の神から呼び出しがかかる事になった。
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