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2章 7年後

23.相変わらず

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 この場で、何を選んで、何を切り捨てるか。

 ランメルトが悩む事は無かった。

 今まで、何も決断できなかったのは、選ぶべきものが存在していなかっただけ。 特に今回の選択は容易だった。

「そういえば、1つお伺いしたいのですが?」

「はい?」

「王家に子が生まれない。 それも王の従兄弟まで遡り、ここ10年ほど子がいません。 何が原因と思いますか?」

「皇子のお相手は?」

 この場合の皇子は、フェリクスを言っているのだろうとランメルトは返事をする。

「ルシェさん以外は、誰も」

「何人?」

「それは……本人が望まないものが殆どなため、伏せさせてください」

 そういえば、数は多い事を勝手に想像してくれるだろうと、ランメルトは視線を伏せる。

「魔術的攻撃を受けているとお考えで?」

「相変わらず勘の良い」

「現国王にお子がある事、リックが生まれている事を考えれば、身体的と考えるより、なんらかの魔術攻撃と考えるのもわかりますが、魔術師が意図的に身体に影響を与えれば痕跡が残るはずです」

 バウスコール王国の穀物の大概輸出量は多い。

 バウスコール王国から直接購入できたなら、自国で作らせるよりも安価で安定供給が出来る。 大量確保し、転売に回せば利益となり、穀物の生産を抑えた分、別の産業に力を向ける事が出来る。

 だから、年々バウスコール王国の穀物販売量は増加し続けた。

 作物の収穫量など、良い年もあれば悪い年もある。 悪い年に他国を優先し輸出に回せば、自国は当然飢えに苦しむ事となる。

 国の政策に不満を持ち、自領の事を第一に考え、適当に収穫量を誤魔化し、万が一に備える事が出来る領主ならいい。 だが、大半は違う。

 そもそも国が要求する穀物量が年々増え続けるなんて、誰が考えるだろうか?

 日々の中、領主の悩みも尽きない事だろう。
 そんな領主が何を選ぶか?

 国を敵にし、民を守る。
 国に従い、民の敵となる。
 国に従い、民も守る。
 国も民も敵にし、富を得る。

 いろいろあるが……、全てに共通するのは民にとって国、王家が敵であること。

「王家は、途絶えてしまえ。 そんな民の呪いかもしれませんね。 王家の存続を望まぬ民の呪いなら、その呪いは呪術的なモノと考えるより、自然現象に近くなるのではないでしょうか?」

「だが、王家が無くなれば……穀物の流通は停止し、戦争が始まるのでは?」

「王家があろうとなかろうと、バウスコール王国から物流が途絶えれば戦争にりますよ?」

「では、戦力を殆ど保有していないバウスコールには未来がないと?」

「まさか、善も悪も、損も得も全部がバランスです。 ただ、駒を動かす人間の才能は必要となるでしょうけどね」

 善悪を抜きにした合理的とも言える考え、どれほど皇子がフェリクス様が助けられていた……。 ランメルトは考える。

「アナタは、相変わらずですね」

 ランメルトは呆れながらも笑えば、ルシェは肩を竦めた。

「先輩も相変わらずですよね」
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