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25.獣性 02
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昨日と明日が混ざる時。
王様に抱っこされた私と……イヤだと暴れるランディを担ぎ連れたジル、私が王様に抱っこされている事が気に入らないらしいラース、そしてヴィズとセグと共に城内に隠された洞窟を降りていた。
ソレは、ココに国を作る前から存在し、
ココに国を作った理由だと言われている。
暗い洞窟だが、獣である彼等には余り影響はないようで、ずんずんと降りていく。
「熱いね……」
岩が熱せられていて、ジワリと汗がにじみ出ていた。
「我々は、暑さは得意ですから」
王様は私の額に流れる汗を拭った。
やがて私達は、洞窟の奥に赤い明かりを見つけた。
そして、まだ奥へと向かって行く。
大地が熱を発して湯気を放ちだし、そしてまだまだ奥へと向かう。
最奥にたどり着けば奥に見えていた赤い明かりが、広い溶岩の池だったとわかる。
そこが目的の場所だと言うのは見れば分かった。
溶岩の手前には、6つの魔宝珠を使い△▽を2つ重ねた方陣。
方陣の真ん中には祭壇と言うには無骨な大きな岩の机。
「ここでは、何をするの?」
私は戦も、人の死も、嫌いだ……。
「ラースを祭壇に」
王の言葉にラースが祭壇に進み飛び乗り座る。
「さて、私の天使殿。 足りぬ魔力を注いではもらえないでしょうか?」
「何を、するの?」
「あの6つの宝珠は魔力を持って獣性を取り出す事ができるものです。 生きたままね。 かつて、双子で生まれた私の子は、双方ともが獣の姿をその身に残しておりました。 そして母の腹を突き破るほどの存在でした」
ずっと暴れ続けていたランディが一瞬だが黙った。
王は嫌だ、止めてくれ。 そう言って涙を流しながらも暴れるランディの頭を撫で、次にラースの頭を撫でた。
「獣の因子を持ち合わせても、その獣性にあらぶっても何時かはジルのように、己を律してくれると信じていたのです。 兄の方は早々に理性を収めるに至り5歳になる頃には、人の姿を取り、耳も尻尾も収める事が出来るようになったので、普通の生活をおくらせる事にしました。 ですが、弟の方は何時までも獣のように暴れるだけ、年を重ねるごとに手に負えなくなり途方に暮れていたものです。 まさか、その子を手懐ける少女が現れるなんて、想像もしていませんでした」
「俺は、俺は……獣には戻りたくはない!! あの日々だけは耐えられない、勘弁してくれ!!」
ランディが叫ぶ。
「何、ラースにできた事だ。 きっとおまえにもできるはずだ」
穏やかに王はランディの頭を撫でていた。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。 俺は特別なんだ!!」
「あぁ、特別だから大丈夫……その身の獣性を抑える事ができるだろう」
「違う、そうじゃない。 お願いだ……助けて、助けて……ドロテア……どうして、助けてくれるって言ったのに……」
「私の天使殿、さぁ、宝珠に魔力を満たしてください。 ソレが満ちれば、ラースの獣性を奪いランディに戻す事ができます。 かつて……ランディの獣性をラースに注ぎ込み、完全な獣にしたように……」
王様は私を抱っこしたまま宝珠に近寄って行く。 その間もランディは泣き叫び……ドロテアを呼んでいた。
ボソリと王様が呟いた、哀れな子だと。
「だからと言って、もう一人の努力を惜しまぬ子が犠牲になり続けるのも哀れなものです」
そう言って、王様はラースを撫でようとして拒否され、ペシャリとその手を叩き落とされ王様は静かに、どこまでも静かに笑っていた。
王様に抱っこされた私と……イヤだと暴れるランディを担ぎ連れたジル、私が王様に抱っこされている事が気に入らないらしいラース、そしてヴィズとセグと共に城内に隠された洞窟を降りていた。
ソレは、ココに国を作る前から存在し、
ココに国を作った理由だと言われている。
暗い洞窟だが、獣である彼等には余り影響はないようで、ずんずんと降りていく。
「熱いね……」
岩が熱せられていて、ジワリと汗がにじみ出ていた。
「我々は、暑さは得意ですから」
王様は私の額に流れる汗を拭った。
やがて私達は、洞窟の奥に赤い明かりを見つけた。
そして、まだ奥へと向かって行く。
大地が熱を発して湯気を放ちだし、そしてまだまだ奥へと向かう。
最奥にたどり着けば奥に見えていた赤い明かりが、広い溶岩の池だったとわかる。
そこが目的の場所だと言うのは見れば分かった。
溶岩の手前には、6つの魔宝珠を使い△▽を2つ重ねた方陣。
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「ここでは、何をするの?」
私は戦も、人の死も、嫌いだ……。
「ラースを祭壇に」
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「さて、私の天使殿。 足りぬ魔力を注いではもらえないでしょうか?」
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ずっと暴れ続けていたランディが一瞬だが黙った。
王は嫌だ、止めてくれ。 そう言って涙を流しながらも暴れるランディの頭を撫で、次にラースの頭を撫でた。
「獣の因子を持ち合わせても、その獣性にあらぶっても何時かはジルのように、己を律してくれると信じていたのです。 兄の方は早々に理性を収めるに至り5歳になる頃には、人の姿を取り、耳も尻尾も収める事が出来るようになったので、普通の生活をおくらせる事にしました。 ですが、弟の方は何時までも獣のように暴れるだけ、年を重ねるごとに手に負えなくなり途方に暮れていたものです。 まさか、その子を手懐ける少女が現れるなんて、想像もしていませんでした」
「俺は、俺は……獣には戻りたくはない!! あの日々だけは耐えられない、勘弁してくれ!!」
ランディが叫ぶ。
「何、ラースにできた事だ。 きっとおまえにもできるはずだ」
穏やかに王はランディの頭を撫でていた。
「嫌だ、嫌だ、嫌だ。 俺は特別なんだ!!」
「あぁ、特別だから大丈夫……その身の獣性を抑える事ができるだろう」
「違う、そうじゃない。 お願いだ……助けて、助けて……ドロテア……どうして、助けてくれるって言ったのに……」
「私の天使殿、さぁ、宝珠に魔力を満たしてください。 ソレが満ちれば、ラースの獣性を奪いランディに戻す事ができます。 かつて……ランディの獣性をラースに注ぎ込み、完全な獣にしたように……」
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「だからと言って、もう一人の努力を惜しまぬ子が犠牲になり続けるのも哀れなものです」
そう言って、王様はラースを撫でようとして拒否され、ペシャリとその手を叩き落とされ王様は静かに、どこまでも静かに笑っていた。
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