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07.最強と言われる理由 02
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シアが来るまで、国は無く、街も無く、家も無かった。 彼等は森にすむ獣であり、ただ戦利品を貪る日々を送っていた。 1枚布を紐でくくる程度の衣服。 子供であれば服すら身に着けてなかった。
彼等に文化を持ち込んだシア。
なぜ、それほどの事が可能だったか?
シアは、ギルモアに訪れるまでの2年の間、他国の王族へと士官した賢者仲間を巡った。 彼女達の多くは勉強不足で、不足している知識を与えて恩を売り。
そして脅した。
「ギルモアの民の侵略を防ぎたいなら、私に十分な支援をなさい」
賢者仲間が仕える王を脅し、賢者仲間との共有空間魔法を展開し、必要なときに必要な支援を約束させた。 といっても、ギルモアの民に人としての生活をさせてみれば、意外にも彼等は器用だったし何よりも体力がある。 自然の中には様々な材料があり、それほど支援を必要とすることはなかった。
足りない部分はシアの魔法で大体が事足りた。
そうして、今のギルモア国が誕生したのだ。
現在のギルモアは、以前のように人獣の全てが戦闘に明け暮れることはない。 戦闘を行っているのは、戦闘特化の王族・貴族達の国軍のみ。
ギルモア国と隣接する他の人獣族との戦もあるが、戦闘の多くは、賢者仲間を通じて同盟を結ばせた国からの『魔喰退治』や『他の人獣族対策』などの傭兵稼業。
戦闘が本能に刻まれている彼等に対して、他国は未だ恐怖しているが……実のところソレは私も同様である。 それでも、感謝を向けられ、楽しく飲み食いし、歌って踊れば、受け入れられた気分になってしまう。
「姫様、うちの子に名前をつけておくれ。
姫様のように賢く、優しい子に育つように」
かけられる声。
向けられる微笑み。
必要とされる存在価値。
それらすべてが嬉しいが、元が第二王子を得たいがための下心と思えば、心苦しくもある。 そして……その、下心と縁を切りに来た事を思い出した。
「ドーラ、私……行ってくる!」
そう告げれば、ドーラは驚いた顔をした。
「これほどまで、愛されているのにですか?」
その声は、どこか悲痛な響きが込められているように聞こえた。
「だからこそ、婚姻が成立していないのに、こんなにも慕ってくれる彼等を騙しているようで心苦しいの」
人獣の民は、シアとランディ王子の婚姻の事を語らない。
祝いの言葉も無かった。
だから、シアは人獣の民が婚姻の事実を知らないと思っていたのだ。
だけど本当は、語らないだけ。
知っているが言葉にできない。
知っているから言葉にできない。
シアとランディ王子の婚姻の話をすれば、ドロテアを語らない訳にはいかない。
ランディと王族末端でありながら姫将軍になりあがったドロテアは、いずれも人獣の力と血を濃くその身に宿し、強すぎるが故に他者との交流が制限されていた人物。 2人は自分達の存在を『運命』と語る。
人獣達は、ランディとドロテアの絆をシアに知られれば、シアはランディから、そしてギルモア国から興味を失ってしまうのでは? という恐怖を抱いていた。
そんな民の不安を知るはずもないシアは、王の元へと向かう決意を決めた。
自らにつけた鎖を外すために……。
彼等に文化を持ち込んだシア。
なぜ、それほどの事が可能だったか?
シアは、ギルモアに訪れるまでの2年の間、他国の王族へと士官した賢者仲間を巡った。 彼女達の多くは勉強不足で、不足している知識を与えて恩を売り。
そして脅した。
「ギルモアの民の侵略を防ぎたいなら、私に十分な支援をなさい」
賢者仲間が仕える王を脅し、賢者仲間との共有空間魔法を展開し、必要なときに必要な支援を約束させた。 といっても、ギルモアの民に人としての生活をさせてみれば、意外にも彼等は器用だったし何よりも体力がある。 自然の中には様々な材料があり、それほど支援を必要とすることはなかった。
足りない部分はシアの魔法で大体が事足りた。
そうして、今のギルモア国が誕生したのだ。
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ギルモア国と隣接する他の人獣族との戦もあるが、戦闘の多くは、賢者仲間を通じて同盟を結ばせた国からの『魔喰退治』や『他の人獣族対策』などの傭兵稼業。
戦闘が本能に刻まれている彼等に対して、他国は未だ恐怖しているが……実のところソレは私も同様である。 それでも、感謝を向けられ、楽しく飲み食いし、歌って踊れば、受け入れられた気分になってしまう。
「姫様、うちの子に名前をつけておくれ。
姫様のように賢く、優しい子に育つように」
かけられる声。
向けられる微笑み。
必要とされる存在価値。
それらすべてが嬉しいが、元が第二王子を得たいがための下心と思えば、心苦しくもある。 そして……その、下心と縁を切りに来た事を思い出した。
「ドーラ、私……行ってくる!」
そう告げれば、ドーラは驚いた顔をした。
「これほどまで、愛されているのにですか?」
その声は、どこか悲痛な響きが込められているように聞こえた。
「だからこそ、婚姻が成立していないのに、こんなにも慕ってくれる彼等を騙しているようで心苦しいの」
人獣の民は、シアとランディ王子の婚姻の事を語らない。
祝いの言葉も無かった。
だから、シアは人獣の民が婚姻の事実を知らないと思っていたのだ。
だけど本当は、語らないだけ。
知っているが言葉にできない。
知っているから言葉にできない。
シアとランディ王子の婚姻の話をすれば、ドロテアを語らない訳にはいかない。
ランディと王族末端でありながら姫将軍になりあがったドロテアは、いずれも人獣の力と血を濃くその身に宿し、強すぎるが故に他者との交流が制限されていた人物。 2人は自分達の存在を『運命』と語る。
人獣達は、ランディとドロテアの絆をシアに知られれば、シアはランディから、そしてギルモア国から興味を失ってしまうのでは? という恐怖を抱いていた。
そんな民の不安を知るはずもないシアは、王の元へと向かう決意を決めた。
自らにつけた鎖を外すために……。
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