前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】

迷い人

文字の大きさ
7 / 60

07.最強と言われる理由 02

しおりを挟む
 シアが来るまで、国は無く、街も無く、家も無かった。 彼等は森にすむ獣であり、ただ戦利品を貪る日々を送っていた。 1枚布を紐でくくる程度の衣服。 子供であれば服すら身に着けてなかった。

 彼等に文化を持ち込んだシア。
 なぜ、それほどの事が可能だったか?

 シアは、ギルモアに訪れるまでの2年の間、他国の王族へと士官した賢者仲間を巡った。 彼女達の多くは勉強不足で、不足している知識を与えて恩を売り。

 そして脅した。

「ギルモアの民の侵略を防ぎたいなら、私に十分な支援をなさい」

 賢者仲間が仕える王を脅し、賢者仲間との共有空間魔法を展開し、必要なときに必要な支援を約束させた。 といっても、ギルモアの民に人としての生活をさせてみれば、意外にも彼等は器用だったし何よりも体力がある。 自然の中には様々な材料があり、それほど支援を必要とすることはなかった。

 足りない部分はシアの魔法で大体が事足りた。

 そうして、今のギルモア国が誕生したのだ。



 現在のギルモアは、以前のように人獣の全てが戦闘に明け暮れることはない。 戦闘を行っているのは、戦闘特化の王族・貴族達の国軍のみ。

 ギルモア国と隣接する他の人獣族との戦もあるが、戦闘の多くは、賢者仲間を通じて同盟を結ばせた国からの『魔喰退治』や『他の人獣族対策』などの傭兵稼業。



 戦闘が本能に刻まれている彼等に対して、他国は未だ恐怖しているが……実のところソレは私も同様である。 それでも、感謝を向けられ、楽しく飲み食いし、歌って踊れば、受け入れられた気分になってしまう。

「姫様、うちの子に名前をつけておくれ。
 姫様のように賢く、優しい子に育つように」

 かけられる声。
 向けられる微笑み。
 必要とされる存在価値。

 それらすべてが嬉しいが、元が第二王子を得たいがための下心と思えば、心苦しくもある。 そして……その、下心と縁を切りに来た事を思い出した。

「ドーラ、私……行ってくる!」

 そう告げれば、ドーラは驚いた顔をした。

「これほどまで、愛されているのにですか?」

 その声は、どこか悲痛な響きが込められているように聞こえた。

「だからこそ、婚姻が成立していないのに、こんなにも慕ってくれる彼等を騙しているようで心苦しいの」



 人獣の民は、シアとランディ王子の婚姻の事を語らない。
 祝いの言葉も無かった。
 だから、シアは人獣の民が婚姻の事実を知らないと思っていたのだ。

 だけど本当は、語らないだけ。
 知っているが言葉にできない。
 知っているから言葉にできない。

 シアとランディ王子の婚姻の話をすれば、ドロテアを語らない訳にはいかない。

 ランディと王族末端でありながら姫将軍になりあがったドロテアは、いずれも人獣の力と血を濃くその身に宿し、強すぎるが故に他者との交流が制限されていた人物。 2人は自分達の存在を『運命』と語る。

 人獣達は、ランディとドロテアの絆をシアに知られれば、シアはランディから、そしてギルモア国から興味を失ってしまうのでは? という恐怖を抱いていた。



 そんな民の不安を知るはずもないシアは、王の元へと向かう決意を決めた。
 自らにつけた鎖を外すために……。
しおりを挟む
感想 198

あなたにおすすめの小説

学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子
恋愛
王都カラディナにある国立魔術学園では、満十六歳の生徒たちの社交界デビューを兼ねた盛大なパーティーが開かれていた。 侯爵令嬢タレイア・オルトランは、婚約者である第二王子アスラン・オグセリアの迎えを待つも、結局ひとりで会場へ向かうことになる。 学園では身分の差がないとはいえ、アスランが公然とタレイアを侮辱し続けてきたことで、彼女は生徒たちから冷笑と蔑視の的となっていた。しかしタレイアは、王城で政務を担ってきた聡明さと矜持を失わず、毅然と振る舞う。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。

にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。 父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。 恋に浮かれて、剣を捨た。 コールと結婚をして初夜を迎えた。 リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。 ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。 結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。 混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。 もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと…… お読みいただき、ありがとうございます。 エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。 それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。

私が行方不明の皇女です~生死を彷徨って帰国したら信じていた初恋の従者は婚約していました~

marumi
恋愛
「あら アルヴェイン公爵がドゥーカス令嬢をエスコートされていますわ」 「ご婚約されたと噂を聞きましたが、まさか本当だとは!」 私は五年前までこの国の皇女エリシアだった。 暗殺事件に巻き込まれ、幼なじみで初恋の相手だった従者――アルヴェイン公子と共に命からがら隣国、エルダールへ亡命した。 彼の「必ず迎えに来る」その言葉を信じて、隣国の地で彼を待ち続けた……。 それなのに……。 やっとの思いで帰国した帝国の華やかなパーティー会場で、一際目立っているのは、彼と、社交界の華と言われる令嬢だった――。 ※校正にAIを使用していますが、自身で考案したオリジナル小説です。 ※イメージが伝わればと思い、表紙画像をAI生成してみました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi(がっち)
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【完結】ずっと、ずっとあなたを愛していました 〜後悔も、懺悔も今更いりません〜

高瀬船
恋愛
リスティアナ・メイブルムには二歳年上の婚約者が居る。 婚約者は、国の王太子で穏やかで優しく、婚約は王命ではあったが仲睦まじく関係を築けていた。 それなのに、突然ある日婚約者である王太子からは土下座をされ、婚約を解消して欲しいと願われる。 何故、そんな事に。 優しく微笑むその笑顔を向ける先は確かに自分に向けられていたのに。 婚約者として確かに大切にされていたのに何故こうなってしまったのか。 リスティアナの思いとは裏腹に、ある時期からリスティアナに悪い噂が立ち始める。 悪い噂が立つ事など何もしていないのにも関わらず、リスティアナは次第に学園で、夜会で、孤立していく。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

さようならの定型文~身勝手なあなたへ

宵森みなと
恋愛
「好きな女がいる。君とは“白い結婚”を——」 ――それは、夢にまで見た結婚式の初夜。 額に誓いのキスを受けた“その夜”、彼はそう言った。 涙すら出なかった。 なぜなら私は、その直前に“前世の記憶”を思い出したから。 ……よりによって、元・男の人生を。 夫には白い結婚宣言、恋も砕け、初夜で絶望と救済で、目覚めたのは皮肉にも、“現実”と“前世”の自分だった。 「さようなら」 だって、もう誰かに振り回されるなんて嫌。 慰謝料もらって悠々自適なシングルライフ。 別居、自立して、左団扇の人生送ってみせますわ。 だけど元・夫も、従兄も、世間も――私を放ってはくれないみたい? 「……何それ、私の人生、まだ波乱あるの?」 はい、あります。盛りだくさんで。 元・男、今・女。 “白い結婚からの離縁”から始まる、人生劇場ここに開幕。 -----『白い結婚の行方』シリーズ ----- 『白い結婚の行方』の物語が始まる、前のお話です。

処理中です...